★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [2]【コラム】金星 ~愛と美の女神の名をもつ惑星 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 夕焼けが残る西空にひとつ、ひときわ明るく輝く一番星が気になっている人 も多いのではないでしょうか。この星の正体は、「宵の明星」とも言われる金星。 太陽と月を除けば、夜空で最も明るく見える天体です。 美しい輝きのためか、欧米ではローマ神話の愛と美の女神ヴィーナスの名で呼ばれます。 金星の惑星記号「♀」は、女性を意味する記号としても使われていることからも、金星は 女性的な魅力の象徴とされてきたようです。また、平安時代の清少納言は、枕草子の 中で「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。…」と書いています。「ゆふづつ」とは、 宵の明星、金星のことであり、日本でも昔から愛でられてきたことがわかります。 この金星がこの春から夏にかけて、見頃を迎えています。夕暮れ時、日の入りから30分 ほど過ぎた頃から数時間、西の少し低い空に見つけることができるでしょう。 日によっては、細く欠けた月や、火星・土星といった明るい惑星と近づく天文ショー も楽しめます。帰宅時や夕食後の楽しみのひとつとして、晴れた日には空を眺めてみて はいかがでしょうか。 天体望遠鏡で金星を見ると、さらに楽しむことができます。金星は月のように満ち欠け しているのです。しかも、その欠け方(形)は日に日に変化していく様子がわかります。 スカイデッキ観望会で使用する望遠鏡でも十分判別できますので、時期をおいて 2回以上ご覧いただくのがオススメです。 今年はもうひとつ、金星について注目して欲しいことがあります。 5月21日に打ち上げられた金星探査機「あかつき」の活躍です。 金星は地球と大きさや重さが似ているため、地球の姉妹星ともいえる星ですが、その環境 は地球と大きく異なります。特に、大気の主成分が二酸化炭素であるため、 温室効果により表面付近の気温は約460℃という灼熱の世界になっていることや、 自転の速さよりもはるかに速い風が吹き荒れていることなど、地球では想像も つかない厳しい環境になっています。 ところが、なぜこのように地球と全く異なる環境になっているかは、 いまだ謎に包まれています。その謎に挑むために、「あかつき」は打ち上げられ、 現在金星に向けて順調に飛行を続けています。年末頃に到着した後、 金星の周りを回りながら5台のカメラで詳しく観測する計画です。 その頃には美しい金星の写真が届くことでしょう。 今年の夏は、宵の明星を眺めながら、ヴィーナスに魅せられた「あかつき」の旅路に 思いを馳せてみませんか。 亀谷 和久 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究員