★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [4]【コラム】この冬、木星の月を楽しむべし ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 1月は、年間を通じてもっとも星空が楽しい季節。都心でも、夜空を見上げてみ れば明るい星をいくつも数えることができるでしょう。他の地方では冬はぐずつ いた天気が続く季節かもしれませんが、関東南部に限っていえば、毎日晴天が続 く素晴らしい季節です。こんな季節に星を見ないのはもったいない!少し元気を 出して、たっぷり厚着をして、外に星を見に行きましょう。 陽が落ちてすぐの頃、空の高いところに明るく目立つ星を見つけることができる でしょう。これは木星です。星座に対しては毎年位置を変えているのですが、今 年はうお座の領域にいます。木星は、じっと眺めていても瞬きません。他の星が 冬の季節風の影響できらきらと瞬いているのに対して、じっと光る木星。ぜひあ たなの目で確かめてみて下さい。 木星を望遠鏡を使って眺めると、ますます興味深いものが見えてきます。木星の 月たちです。イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの、木星を巡る4つの月。こ れらは、発見者のガリレオ・ガリレイにちなんでガリレオ衛星と呼ばれていま す。木星はギリシャ神話のゼウスに見立てられていますので、その周りにゼウス の愛した妖精や人間を配置したのは、なかなか気が利いています。数時間の間に も位置を忙しく変えるこの衛星たち。その動きは、ガリレオに地動説を強く確信 させるきっかけになったとも言われています。 現代天文学においても、ガリレオ衛星は注目を浴び続けています。イオでは活火 山が激しく活動していることが知られていますし、分厚い氷で覆われたエウロパ やカリストの地下には海があると考えられています。水星よりも大きい、太陽系 最大の衛星であるガニメデには、薄い大気があることが知られています。過去に 何度か探査機が送り込まれていますが、私たちが知らない未知の世界が、そこに は広がっているのです。 木星の衛星はこのガリレオ衛星だけではありません。残念ながら六本木天文クラ ブで使っている望遠鏡では見ることができませんが、実はぜんぶで63個もの衛星 が発見されています。ガリレオ衛星に勝るとも劣らない個性ある衛星の世界が、 そこには広がっているのです。そんな木星の世界を想像しながら、ガリレオ衛星 を眺めてみてはいかが?この冬を逃すと、次に木星がよく見えるのはおよそ1年 後。どうぞこの機会にお見逃し無く! 高梨 直紘 天文学普及プロジェクト「天プラ」代表 / 東京大学 特任助教