★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [2]【コラム】梅雨空に、麦星の楽しみ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 天気がすっきりしない6月は、星空を楽しむにはあまり向いていない季節。曇り 空ばっかりの日々ですが、梅雨の晴れ間には、ぜひ星を探してみましょう。春か ら夏へと衣替えをしている最中の星空を見る事ができるはずです。 この季節、1番星として見えるのはうしかい座のアルクトゥルスです。ちょうど 空が暗くなり始めた19時過ぎ頃に、南の高い空に輝いている星があれば、それが アルクトゥルスです。明るさは1等星よりも明るい0等星!シリウス、カノープス に次いで、全天で3番目に明るい恒星です。ちょうど麦の実る頃、つまりこの季 節に目立つ星なので、日本では古くより「麦星」などと呼ばれていたようです。 少し黄色っぽい色をしており、麦星の名にふさわしい見え味です。 この麦星ですが、名前とは裏腹にその正体はなかなか刺激的です。老境にさしか かった星で、大きく膨らみ始めているのです。星の直径はおよそ太陽の30倍。そ の表面はせわしなく波打っている事が知られています。残された最後のエネル ギーを不安定に放出しながら、なおも膨らもうとしているのです。この姿は、実 は私たちの太陽の将来の姿でもあります。アルクトゥルスと太陽は、その重さが ほとんど同じであり、同じような運命をたどるものと考えられているのです。 アルクトゥルスは東京の夜空でも簡単に見つける事ができます。私たちの太陽の 将来の姿であるアルクトゥルス、そんな事を思い出しながら眺めていただくの も、星空の楽しみ方のひとつではないかと思います。梅雨空に、ぜひ麦星の楽し みを。 高梨 直紘 天文学普及プロジェクト「天プラ」代表 / 東京大学 特任助教