★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [2]【コラム】夏の夜空と千億の星 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 夜空に伸びるひとすじの白く淡い光。あなたは天の川を見たことがありますか? それは、1000億にも及ぶ星の大集団の姿です。 夜10時ごろ、空の高い位置にひときわ明るく輝く星が見えます。こと座のベガ、 七夕の織姫星として知られる星です。そしてこのベガからやや南に下がったとこ ろに、もう一つ明るい星が見えます。織姫のパートナーである彦星、わし座のア ルタイルです。もしあなたが夜空の暗いところで空を見上げているなら、この二 つの星を隔てるぼんやりとした光の帯が見えることでしょう。これが天の川で す。もしあなたが都会の中で夜空を見上げているとしたら、天の大河は街明かり にかき消されてその姿を見ることはできないでしょう。天の川とはそんなにもか すかな光なのです。 都会の人工光にも負けずに輝いているベガとアルタイルは、それぞれ面白い特徴 を持った星です。ベガの周りには、太陽系のような惑星系が作られていることが 天文学観測から明らかになっています。一方でアルタイルは非常に高速で自転し ている星で、その自転周期は約9時間。太陽の自転周期が約1か月であることを考 えると、驚くべきスピードです。 七夕のお話でなじみ深い星を二つ見てみても、こんなに違う性質を持っていま す。1000億個の星の集まりである天の川全体を見れば、それはもう豊かな世界が 広がっていることでしょう。夏の夜空はそんな豊かな星の世界を垣間見ることの できる機会を提供してくれます。折しも電気の使い方に注目が集まっている昨 今、少し照明を落として暗くなった夜空に思いをはせてみるのもよいかもしれま せん。 平松正顕 国立天文台ALMA推進室