★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ 【コラム】春の夜に惑星と遊ぶ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 三寒四温の言葉の通り、寒い日と暖かい日が交互に訪れるこの季節。冬至の頃に 比べれば、最近では日も伸び、確かに春に近づいている事を感じさせます。季節 の移ろいと共に、星空も冬の絢爛たる装いから、春の柔らかな星々へと主役が交 代しつつあります。そんな春の星空の中に、いくつかの明るい星、惑星たちが混 ざっている事にお気づきでしょうか。 日没直後、まだ橙色が残る西の空に、明るく輝くふたつの星を見つけられるはず です。金星と木星です。より明るい方が、宵の明星としても有名な金星です。そ の明るさは、マイナス4等級。1等星よりも5等級、明るさの比にして100倍もの明 るさを誇ります。一番星として簡単に見つけることができますので、ぜひ探して みましょう。 金星のすぐ近くに、明るく輝くもうひとつの星が、木星です。明るさはマイナス 2等級。金星よりは控えめですが、星座を形作る星々に比べれば、やはり圧倒的 な明るさといえるでしょう。もし簡単な双眼鏡があれば、ぜひ覗いてみて下さ い。木星と、その周りを巡る4つのお月さま、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリ ストを見つけることが出来るでしょう。いずれもJupiter(ユピテル)、すなわち ギリシャ神話での大神ゼウスの愛した美男、美女の名前をもらっており、配役の 妙を感じさせます。 東の空に目を転じれば、そこには火星を見つけることが出来ます。明るさはマイ ナス1等級。星座としてはしし座にあたる領域にあります。3月には、ちょうど太 陽、地球、火星がほぼ一直線に並び、地球と火星の距離が近づきます。古来より 火星の赤い色は戦火を連想させ、不吉の象徴として扱われてきましたが、その正 体は火星の砂の色であることがわかっています。望遠鏡を覗く機会があれば、火 星の赤い色をその目で確かめて見て下さい。 火星に遅れること数時間、東の空からは土星も現れます。明るさは0等級。真珠 星とも呼ばれるおとめ座の1等星、スピカと並んで柔らかい光を放ちます。有名 な土星の輪は、毎年少しずつ見える角度が変わるため、年によってはほとんど線 にしか見えません。しかし、今年の土星ならば、ちゃんと輪があることがわかり ます。夏頃までは楽しむことが出来ますので、ぜひ機会を見つけて望遠鏡で覗い てみましょう。 この季節に見られる惑星を紹介してきましたが、星々の中に惑星を見分ける事は 難しくありません。まずは明るさ。惑星はいずれも、一般的な星に比べて明るく 見えます。周囲の星々に比べて明るい星があれば、惑星の可能性が高いと思って 良いでしょう。瞬かない、というのも惑星の特徴です。ふつうの星はきらきらと 瞬きますが、惑星はじっと光を放ちます。惑星かな?と思う星を見つけたら、し ばらく眺めて瞬くかどうかを確かめてみましょう。惑星は、夜空で一直線上に並 んで見える、というのも特徴です。金星、木星、火星、土星を結ぶと、大雑把に 一本の線の上に乗るはずです。これは、太陽の通り道である黄道と呼ばれるもの で、惑星はこの黄道から大きく外れることはありません。 そんな事を思い出しながら、ぜひ今年の春は夜空に惑星を探してみましょう。夜 空を眺める楽しみが、ひとつ加わる事を期待します。 高梨 直紘 天文学普及プロジェクト「天プラ」代表 / 東京大学 特任助教