★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [4]【コラム】日食から2週間、今度の「食」は月と金星! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 5月21日の金環日食、ご覧になりましたか。六本木は雲が多くて心配だったので すが、太陽の欠け始めやちょうどリング状に見えるころなど「まさに今!」とい うタイミングでは見事に雲が薄くなり、日食を楽しむことができました。日ごろ の行いが良かったのか、雲が「空気を読んで」くれたのかは、わかりませんが……。 21日は日食、つまり太陽と月が同じ方向にある「新月」でしたが、それからちょ うど2週間後の今日6月4日、月は地球を挟んで太陽の反対側にやってきます。 「満月」ですね。そして今度は、月が地球の影に隠されて欠けたように見える 「月食」が起こります。 今宵の月食は、最大で月の4割ほどが欠ける「部分月食」です。月の出から少し 時間が過ぎた夜7時ごろから欠け始め、一番大きく欠けるのは8時過ぎ、月食が 終わるのは9時ごろです。南東の空の低いところで起こる月食なので、建物など にじゃまされない場所で観察するのがポイント。ひょっとすると「ビルの合間に 欠けた月」なんていう、面白い光景が見えるかもしれません。 さて、日食や月食は(世界中で考えれば)見られる頻度が高く話題にもなりやす い天文現象ですが、明後日の6月6日には「めったに見られない」イベントが起こ ります。地球から見て太陽の前を金星が通り過ぎていく「金星の太陽面通過(日 面経過)」です。今回のチャンスを逃すと、次は世界中どこでも105年後まで見 られません。まさに「一生モノ」のレアな現象です。 金星の見かけの大きさは、太陽のおよそ33分の1しかありません。日食をご覧に なった方は、太陽が意外と小さかったことを覚えているかもしれませんね。金星 はその33分の1ですから、本当に小さな黒い点にしか見えませんが、視力が1.0あ れば見えると言われています。 この小さな点が、6日の朝7時10分ごろから昼の1時50分ごろまで、約6時間半かけ て太陽面上をゆっくりと横切っていきます。たとえば1時間おきに観察すれば、 確かに金星の位置が変わっていることがわかるはずです。 ただし、この現象の観察は太陽を見るのと同じことなので、間違った方法では目 を傷めてしまいます。日食のときに使った日食グラスなどの減光器具を正しく 使って、安全に観察するのがポイントです。また、金星を見つけようとするあま り太陽を注視してしまいがちなので、意識して目を休めるようにしましょう。 わずか半月ほどの間に金環日食、月食、金星の太陽面通過と3つの「食」が見ら れますが(太陽面通過も一種の食現象です)、今年はこの後8月に「金星 食」(金星が月に隠される)、11月にオーストラリアで皆既日食など、とにかく 「食」の多い一年です。食とは、言ってしまえば単に天体が真っ直ぐ並ぶだけの ことですが、そこに美しさを覚え感動したり、あるいは科学的な意味を見出した りと、私たちの心や知識を満たしてくれる現象でもあります。 真っ直ぐに並んだ天体たちの一員として、自分がちょうどここにいることを思っ て、月を、金星を、眺めてみてください。 泉水 朋寛 星のソムリエ(R) / アストロアーツ