★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [4]【コラム】宇宙からの来訪者 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 2013年1月20日午前2時42分、関東地方の空を切り裂いた閃光が、未明にも関わらず多くの 人に目撃された。金星よりも明るいマイナス5等級以上の流星を《火球(かきゅう)》と呼 ぶが、その明るさはマイナス10等級にも達したというから、相当の大火球である。一瞬の 間、丑三つ時の闇は月夜のように照らされたことだろう。 通常、流星というものは、太陽系の中を漂う小さな塵が、地球の大気に突入した時に見ら れる。秒速数十kmもの高速で突入してくる粒子と衝突した大気分子が、プラズマとなって 光るのだ。およそ上空120kmくらいで発光し、80kmくらいで消滅する。ところが、今回の 大火球は、観測者達の計算によれば高度30km付近まで発光していたという。「ドーン」と いう響きが聞こえたという報告もあるようだから、きっと音速よりも速く空気を突き抜け る火球によって衝撃波が発生し、遠くまで空振が届いたのかも知れない。こうなると、 元々が小さな塵ではなく小惑星の破片のような岩石の塊で、もしかしたら燃え尽きずに地 上まで落下して来たのではないか、という期待が出てくる。つまり、《隕石》かも知れな い、という訳だ。恐らく、隕石になっていたとしても数十g程度の小さなもので、鹿島沖 の太平洋に落ちてしまった可能性が高そうだが、ともかく、ほんの数日前に、身近な所に 宇宙からの来訪者が飛び込んで来たかも知れない、というのは少しワクワクする話だ。 地球が誕生して間もなく、今から40億年ほど前には、無数の隕石、あるいは彗星のような 天体が、地球上に落下して来たと考えられている。その後も、何度かの大きな隕石の落下 が起きていて、例えば6550万年前には恐竜の絶滅を引き起こしたと言われる。今でも、時 折地球の近くを小惑星が通り過ぎていくことがある。例えば、来月16日未明(日本時間) には2013DA14という小惑星が、静止軌道(気象衛星が回っている距離)より内側を通過す る。地球からの距離3万4000?qを小惑星がかすめるというのは、広い宇宙においてはとん でもないニアミスなのだが、衝突の可能性は0と言ってよいほど低く、地球には全く危険 が及ばないので安心して、宇宙でのすれ違いを待ち受けて欲しい。双眼鏡では、夜空を 過っていく小さな光が見られるかも知れない。 大衝突が起きると困ってしまうが、実のところ、流星の小さな塵から隕石まで、夥しい量 の物質が、宇宙から地球に飛び込んで来る。その量は毎年100トンほどにも上ると言われ ている。私達の上には、今夜も宇宙が降り注いでいるのだ。 内藤 誠一郎 天文学普及プロジェクト「天プラ」