★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [5]【コラム】大彗星の条件とは? -どうなる、アイソン彗星? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆  太陽系の旅人、彗星。2013年は二つの彗星が肉眼で見えると期待されていまし た。その二つとは、3月に見られたパンスターズ彗星と、今まさに明るくなりつ つあるアイソン彗星です。しかしパンスターズ彗星は、大彗星と呼ぶに相応しい 姿になったものの、観測のための条件があまり良くはなく、肉眼ではほとんど見 られませんでした。アイソン彗星も当初の予想よりは暗く、天文ファンをやきも きさせています。ではいったい、大彗星の条件とは何なのでしょうか?過去の彗 星たちを思い出しながら探ってみましょう。  まずは太陽にどれだけ近づくか。彗星の本体は、水などの氷に塵が混ざったも の。氷が太陽の熱で蒸発してガスとなり、塵とともに飛び出して尾になります。 太陽に近づくほど氷が蒸発して明るくなります。2012年に南半球で見られたラブ ジョイ彗星は、太陽の表面からわずか13万キロメートル(地球と月の間の距離の 3分の1)という至近距離を通過したため、大量のガスと塵を放出して大彗星とな りました。40年以上前に日本の明け方の空を飾った池谷・関彗星も、太陽に非常 に近づいた彗星の一つです。ですが、近ければいいわけではありません。近づき すぎると彗星本体が壊れてしまうこともあるのです。“できる限り近づく、でも 壊れない程度”という距離感が大切です。  次に大切なのは彗星本体の大きさです。大きければそれだけ氷や塵の量が増え ますから、明るくなる可能性があります。彗星の本体は直径数キロメートル以下 のものがほとんどですが、1997年に都心でも肉眼で立派な姿を見ることができた ヘール・ボップ彗星は、推定された直径が60キロメートルと巨大でした。太陽に も地球にもあまり近づかなかったヘール・ボップ彗星ですが、その大きさゆえに 大彗星となったのです。  加えて私たちは地球から彗星を見ますから、彗星と地球の位置関係も重要で す。地球に近づけば明るく、遠ければ暗くなります。また、彗星と太陽がどのく らい離れて見えるかで、真夜中でも見えるのか、明け方にしか見えないのかなど が決まります。日本の空に見えることも大切ですね。1996年の百武彗星は、あま り太陽には近づかず、本体も小さかったものの、地球に非常に近いたために長大 な尾を見せました。逆に3月のパンスターズ彗星は、太陽からの見かけの距離が 近かったために夕方の低空にしか見えず、残念ながら肉眼で見ることが難しかっ たですね。2007年のマクノート彗星のように、南半球で雄大な姿が見えたものの 日本ではほとんど見られなかった彗星もあります。  では、アイソン彗星はどうかというと、太陽へは非常に近づきます(太陽表面 から約120万キロメートル)。そして推定される本体の大きさは、中の上くらい の5キロメートル。地球との位置関係も悪くありません。そこで、明るくなり肉 眼でも見えると期待されているわけです。しかし、これまでの3つの条件だけで 彗星の明るさを推し量れるわけではありません。彗星本体の構造など、私たちが 事前に知ることが難しい要素もあるのです。逆に言えば、どう明るくなるかを追 うのが彗星を見る楽しみでもあります。アイソン彗星がどのような姿を見せる か、それはぜひ皆さん自身の目で確かめてください。  六本木天文クラブでは、12月6~8日の明け方にヒルズ屋上にて、アイソン彗星 を観る会を開催します。このイベントに参加できなくとも、12月5日以降、午前5 時頃の東の空を見てみましょう。そこに答えがあるはずです。大彗星となったア イソン彗星の姿が見られることを期待しましょう!(アイソン彗星も低空に見え るので、東が開けている場所で見るようにしましょう。12月10日頃までがまずは 見頃です。) 塚田 健 平塚市博物館 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」