★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [5]【コラム】「赤色に染まる月」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ みなさんは子どもの頃、このような会話をしたことがありませんか? 「あ!ママ見て、お月様が赤いよ!!なんで、なんで??」 「お月様が赤くなると、こわーいことが起きるんだよ~」 「え!!何が起こるの??」 「明日、地球がなくなっちゃうかもよ~」 このように月が赤く染まる現象が、今晩起きます。さっきまで明るく輝いていた はずの満月が、深い赤色に染まってしまう。そう、「皆既月食」と呼ばれる現象 です。太陽・地球・月が一直線に並び、地球の影に月が覆われてしまうのです。 でも、なぜ月は赤く見えるのでしょうか。その理屈は、実は夕陽が赤いのと同じ です。太陽からの光には、いろいろな色が含まれています。虹は七色に分かれて 見えますが、裏を返せば、太陽の光にはいろいろな色が含まれていることの証拠 でもあります。 これらの光のうち、青色など波長の短い光は大気に含まれる分子によって散乱さ れやすいため、長い距離を進むことができません。夕陽のように地平線近くに太 陽があると、大気中の長い距離を光が通ってくることになるため、結果として赤 い光だけが残るのです。 皆既月食の最中、月は地球の影に隠れています。しかし、その影の中は真っ暗と いうわけではありません。地球の大気を透過してきた赤い光が、わずかながら漏 れているのです。この赤い光が月に当たることで、月が赤く見えるのです。 皆既中の月の色は、時に血のように赤いこともあります。その見た目の不気味さ から、古来さまざまな言い伝えが残されています。その中のひとつは、「赤い月 は地震や災害の前兆である」というものです。確かに「赤」は不吉なものを想像 させる色ですので、この現象の理屈が分からなかった時代には、ごく自然な見方 とも言えるでしょう。 さて、本日4月4日はこの皆既月食が起こる日です。19時15分頃から、まん丸いお 月様が少しずつ欠け始めます。月食が進行するにつれて月の色がくすんでいき、 20時54分に皆既月食が始まると、赤黒く光る月を拝めるでしょう。今回の皆既月 食は比較的短く、12分後には終わり、再び月は明るく輝きはじめます。その後、 地球の影が月を通り抜け、22時45分には元の満月に戻ります。 皆既月食にまつわる言い伝えの中には、流れ星のように願い事を言うと叶うとい うものもあるようです。どの言い伝えを信じるかはあなた次第。個人的には。赤 い月がルビーにも見えるので、願い事を言うと叶う、という方を信じたいです。 ルビーの指輪を身につけると女性は幸せになれるといいますし、そっちの方が、 夢があっていいでしょう?(笑) 皆既月食を見るためには、特別な準備はいりません。ご自宅やオフィスから、普 段と同じように月を肉眼で見れば良いだけです。皆既月食中は月の輝きが失われ るため、星々が見やすくなります。赤く染まった月と春の星座たちの共演はとて も神秘的な光景で、見どころのひとつでもあります。また、幸いなことにちょう ど桜が満開を迎えています。夜桜と星々を見上げ、今年度の活躍を願っての一杯 も、最高ですね。しかも今日は土曜日。人里離れた郊外へ足を運んで、家族や恋 人と素敵な夜を過ごしてみても良いでしょう。ぜひ良い皆既月食を。 千田 華 東海大学 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」