★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [5]【コラム】「春の空に4つの惑星を探す」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 季節はもう5月。春らしさは影を潜め、初夏の陽気を思わせるような日も増えて きました。日もすっかり伸びて、日没は18時半頃に。ちょっと前まではすぐに 真っ暗になっていたことを思うと、時の流れを感じずにはいられません。 さて、日が沈んだあとしばらく経つと、西の空高くに明るい星がひとつあるのに お気づきでしょうか。ぎらぎらと明るく輝くこの星は、金星です。明るさはマイ ナス4等級、1等星の100倍もの明るさがあります。あまりにも明るいので、本当 に星なのかと驚く人も多いようです。強烈な印象を残す金星は、夕方に見えるも のは宵の明星とも呼ばれ、昔から親しまれた星でもありました。「星はすばる。 ひこぼし。ゆふづつ。」と枕草子にありますが、ゆふづつはこの金星を指してい ます(ツツは星の古語)。 金星が見え始めた頃にその足元をよく眺めてみると、もうひとつ明るい星を見つ けることもできるでしょう。水星です。太陽の一番近くを回る惑星である水星 は、太陽に近いがゆえに、日没直後の西の空低くか、日の出前の東の空低くにし か現れません。もし水星を見ようと思うのであれば、水星が見かけ上太陽から大 きく離れた時期を狙うしかないのですが、今年の5月前半がたまたまその時期に あたります。マイナス1等級近い明るさで輝く水星は、地平線近くという条件の 悪さにも関わらず、きっと見つけることができるでしょう。 あたりがすっかり暗くなった頃には、今度は天頂に近い高い空に、やはり明るい 星をひとつ見つけることができるでしょう。これは木星です。明るさは金星には 劣るものの、それでもマイナス2等級もあります。星座を形作る星々に比べれば 圧倒的な明るさです。12年で黄道上を一周する木星は、さまざまな文化で神格化 され、大事に扱われてきた惑星のひとつでもあります。ゆったりと夜空に輝くさ まを、ぜひ眺めてみましょう。 夜も更けてきた頃には、南の空のそう高くない場所に明るい星がひとつ現れま す。少し黄色みがかって見えるこの星は、土星です。明るさはゼロ等級。すぐ下 にはさそり座の1等星であるアンタレスがありますが、そちらは赤い星ですの で、色の対比をヒントに探してみると良いでしょう。肉眼ではさすがに輪は見え ませんが(万が一見えたら教えて下さい)、望遠鏡を使えば簡単にその存在を確 かめることができます。 肉眼で見える惑星は全部で5つあるのですが、そのうちの4つを、今年の5月の晩 には見つけることができます(残りのひとつは火星)。これは珍しいことです。 曜日の呼び方にも惑星の名前が関連づけられているように、惑星や太陽、月の存 在は私たちの祖先にとっては世界を知るための大事な手がかりであると考えられ ていました。せっかくの機会、昔の人々が感じていた人と世界のつながりを想像 しながら、自分の目で惑星を探し、眺めてみてはいかがでしょうか。  参考:ほしぞら情報5月号(国立天文台)  http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2015/05.html 高梨 直紘 天文学普及プロジェクト「天プラ」