★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [3]【コラム】「今日は近地点付近での満月」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 今日は満月。皆さんがお住まいのところでは、月は見えているでしょうか。 今日の満月は、特別な満月でもあります。ふだんの満月よりも、少し大きく見え るのです。最近では「スーパームーン」などとも呼ばれていますが、これは科学 用語ではなく、占星術に起源を持つ用語だそうです。なんとなくキャッチーなの でよく見かけますが、天文学の文脈では積極的に使われることのない言い方でも あるので、天文学者を見かけたときに「今日はスーパームーンですよね?」と聞 かないようにしてあげて下さい。「今日は近地点付近での満月で、天文学的に特 別な意味はないですよね?」が、正しい声のかけ方です。ややこしい人種ですい ません。 さて、大事なのはなぜ月が大きく見える時があるのか、ということです。でも、 その理由は単純。月の公転軌道が楕円形をしているからです。地球の周りをお月 様は回っているわけですが、その軌道を真円、つまりまん丸の形で書いてある図 をよく見かけますが、あれは正確な図ではありません。正確には、楕円の形をし ているのです。 楕円のはふたつの焦点があるのですが(→ぐぐってみましょう)、その焦点のひ とつに常に地球がいます。太陽、地球、月が一直線に並ぶ時に満月となるわけで すが、その満月のタイミングの時に公転軌道上のどこに月があるのかによって、 比較的地球に近い満月、比較的地球から遠い満月、が存在することになるのです (なお、公転軌道上の地球に最も近い点を「近地点」と言います、逆は「遠地 点」)。 月までの平均距離はおよそ38万キロメートル。それに対して、今日の満月は36万 キロメートルの位置にありますので、その分だけ月が大きく見えるというわけで す。具体的には、38万÷36万なので、大雑把に5%程度ほど。実感するにはちょっ と微妙な違いかもしれません。というか、ふつうはわからないと思います。スー パーなのに。 いずれにせよ、月は月。多少の雲があっても、それは味わいというもの。刻々と 色味を変えながら東京の街の上に昇っていく月を愛で、秋の風情を楽しんでみて はいかがでしょうか。 高梨 直紘 東京大学/天文学普及プロジェクト「天プラ」