★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [3]【コラム】「地上と宇宙で見る日食」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ だんだんと春が近づき、日中は太陽が出ていると暖かく感じられる日も増えてき ましたね。そんな寒い季節にはありがたい太陽ですが、もうすぐ月によって太陽 が隠されてしまいます。というのも、3月9日に全国で部分日食が見られるので す。今回の部分日食はインドネシア方面で見られる皆既日食に伴うもので、食分 こそ大きくはありませんが、日本全国でも最初から最後まで部分日食の全経過を 見ることができます。東京の場合、10時12分から欠け始めます。それから約1時 間後、11時8分にはもっとも大きく欠けた状態になり、太陽の約15パーセントが 月によって隠されます。これ以降、太陽は少しずつ元の姿に戻っていき、12時5 分には欠け終わります。前回日本で見られた日食は、記憶にもまだ新しい2012年 の5月の金環日食でしたが、それから約4年ぶりの日本で見られる日食となります。 さて、太陽を見ているのは地球上からだけではありません。ひので衛星という太 陽観測用衛星はご存知でしょうか。ひのでは2006年に打ち上げられ、3つの最先 端望遠鏡を使って今も太陽を観測しています。このひのでは1周約90分で地球の 周りを周回しているため、日食が起きている時には月の影の中を複数回横切るこ とができます。その際に、宇宙空間から日食の様子を観測することができるので す。実際、ひのでは今回の日食では3回月の影の中を通過し、そのうちの1回では 太陽の98パーセントが隠れる深い食を観測することになります。 ひのでは、太陽が月に隠れる様をただ見ているだけではありません。2007年の日 食の時は、太陽全面を観測できるX線望遠鏡(XRT)を使って光学系での散乱光の影 響を解析し、観測精度の向上に役立てました。また、空間分解能の良い、つまり すごく鮮明に見える可視光・磁場望遠鏡(SOT)では、月の縁に見える地形のでこ ぼこを観測することで、その高さを精密に測定することができました。 このように、日食の観測データは科学的にも貴重な意味合いを持っています。ま た、一般の方々の関心も高いのため、観測されたデータは一般にも公開されてい ます(http://hinode.nao.ac.jp/)。今回の日食で観測されるのかはまだわかり ませんが、公開された際には、宇宙から見た日食もご覧いただけると、さらに楽 しめると思います。 年度末の多忙な時期かと思われますが、時間の合間にぜひ部分日食を見られては いかがでしょうか。もしも日食を肉眼で観察するというのであれば、日食専用の グラスや遮光板を用いて、安全への配慮を忘れずに楽しんで下さいね。 国立天文台:日食を観察する方法 http://www.nao.ac.jp/phenomena/20090722/obs.html 鷲田 英舞 茨城大学 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」