★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [3]【コラム】「夜空を貫く一本道」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 最近、日がすっかり沈んであたりが暗くなった頃、南の空高くに明るく輝く星が あることにお気づきでしょうか。あれは木星です。今年はしし座の後ろ足のあた りにあり、周囲の星に比べて圧倒的な明るさで輝いています。 木星のような惑星は、その名の通り、規則正しく動く星座の星々と違って星空の 中を惑うように動いています。とは言っても、当然のことながら自由気ままに動 き回っているわけではありません。そういった惑星の動きを縛るルールのうちの ひとつが、黄道に沿って動くということです。 黄道というのは、空にある太陽の通り道のことです。古来、東洋では天道と呼ん できました。テントウ虫や、お天道様の「天道」ですね。太陽は常にこの黄道か らはずれることなく動いています。この黄道の存在は昔からよく知られており、 この黄道に沿って並ぶ12個の星座は黄道12宮として特別な地位を与えられていま した。 黄道は太陽の通り道ですが、同時に、惑星の通り道でもあります。太陽系の惑星 の軌道は、どれもほぼ同じ平面の中にあります。遊園地のコーヒーカップの遊具 を思い出して見て下さい。もしもコーヒーカップの上から他のコーヒーカップの 動きを見れば、当たり前ですが、常に地面と平行な直線の上を動いているように 見えるでしょう。それと同じで、太陽系の惑星も、常に惑星の公転面の断面であ る黄道の上を動くように見えるのです。 実は月の通り道である白道も、黄道からそう大きくずれることのないところを動 いています。今晩は満月ですが、木星の左下の方に出ているのが見えるでしょ う。この木星と満月を結んだ直線のあたりに、黄道があるのです。ぜひ想像して 眺めて見て下さい。本当にその線が正しいかどうかは、もう少し遅い時間になれ ば確かめられます。夜半近くになると、火星と土星が東の空から昇ってくるので す。もし、あなたの見つけた黄道の上にこの両惑星があるようでしたら、その黄 道は正しく黄道であったと言えるでしょう。 少し冴えない天気の日が続いていますが、晴れた晩にはぜひ夜空を貫く一本道で ある黄道を探してみてはいかがでしょうか。 高梨 直紘 東京大学 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」