★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [5]【コラム】「夜空のむこうにどうか届きますように」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 2016年も、気がつけば年の暮れを迎えています。あなたは今年、何回空を見上げ たでしょうか?たくさん見たという方はもちろん、あまり見なかったという方に もお勧めしたい天文現象があります。それは、毎年12月にやってくるふたご座流 星群です。 今年のふたご座流星群は、12月14日の午前9時にその出現のピークが来ると予想 されていました。残念ながら日中で、しかもこのメルマガがお手元に届く頃には 過ぎてしまいました。さらに言えば、今年はひと晩中、満月が夜空を明るく照ら しているために、例年よりも流れ星の数は少なくなってしまうでしょう。それで も、ふたご座流星群は眺める価値があります。満月に背を向けたり、月明かりを 手でさえぎるようにして空全体を眺めていれば、あなたの願いを叶えてくれる流 れ星にきっと出会えることでしょう。 さて、「流れ星」とはいっても実際に星が移動しているわけではありません。 「夜が涙をこぼしている」と歌われたりもしていますが、星が流れていくこの瞬 間、夜空のむこうでは何が起こっているのでしょうか? 流れ星の元となるのは流星体と呼ばれる、宇宙空間に無数に漂っている0.1ミリ メートルから数センチメートル程度の砂粒のような塵です。それが秒速数十キロ メートルという猛スピードで地球大気に突入すると、流れ星になるのです。その メカニズムを、もう少し詳しく紹介しましょう。 地球大気に飛び込んで来た塵は、地球大気の原子や分子とぶつかります。する と、この衝突によって高温となった塵の成分が、表面から気化していきます。こ の塵から気化したガスはさらに温度が上がり、最終的には4000度程度と10000度 以上の、ふたつの温度成分からなる高温のガスとなって塵を包み込みます。これ らの高温のガスが放つ光が、流れ星の正体なのです。 このようなわけですから、流れ星の明るさは、飛び込んで来た塵の周りにできる 高温のガスの量や温度によって決まります。塵の大きさが大きければ大きいほ ど、突入してきたスピードが速ければ速いほど、流れ星は明るく見えるというわ けです。 ふたご座流星群の活動はピークを過ぎると急激に出現数が減ってしまいますが、 あと数日は活動が続きます。なかなか流れ星が現れなくても焦らず、防寒対策を 万全にして気長に待ちましょう。もし流れ星が流れたら、「さっきまで宇宙空間 に浮かんでいたたったひとつの塵が、今の一瞬で消えてしまったんだなぁ」とい うことを思い出してあげてください。どうかたくさんの流れ星に出会えますよう。 土屋 智恵 天文学普及プロジェクト「天プラ」