★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [4]【コラム】「天体観望と望遠鏡」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 少しずつ暖かくなってきた3月、星空の主役もオリオン座、おうし座に代表され る冬の星座から、おおぐま座、おとめ座に代表される春の星座へと替わりつつあ ります。そんな春の星空を目で眺めて楽しむのも良いですが、望遠鏡や双眼鏡を 使えばより遠くの宇宙を眺めることができ、そこにはまた違った楽しみがありま す。今回のコラムでは、いつもと少々趣を変えて、望遠鏡による天体観望につい てご紹介します。 六本木天文クラブの星空観望会で使用している望遠鏡は筒が細くて長い、いわゆ る「望遠鏡」と呼ばれるタイプ。対物レンズ、接眼レンズという2枚のレンズを 組み合わせて使う、屈折式望遠鏡と呼ばれるタイプの望遠鏡です。一方、時々お 目見えする筒が太めで全長の短い望遠鏡は、凹面鏡を使用した反射式望遠鏡と呼 ばれるタイプの望遠鏡です。どちらの望遠鏡でも、接眼レンズを換えることに よって倍率を変えることができます。同じタイプの望遠鏡で覗いたのに、なんだ か拡大率が違うなと思ったら、それは接眼レンズの違いによるものです。 さて天体観望から天体観測に目を移してみると、今日の観測天文学では、望遠鏡 が不可欠な存在となっています。地球から遠く離れた天体を、地上から精度良く 観測するためには、なるべく大きな口径の望遠鏡を必要とします。一般に口径が 1メートルを超えるような大型望遠鏡では、均質で高性能なレンズを作ることが 難しく、また、完成しても重量が重くなるため、屈折式は採用されません(関心 がある方は、国立天文台三鷹キャンパス内にあるアジア最大の65センチ屈折式望 遠鏡を見学されると良いでしょう)。特殊な用途の望遠鏡を除き、プロが使う最 新の天体望遠鏡はすべて反射式望遠鏡です。 日本の天文学研究機関である国立天文台が所有する最大口径の光学望遠鏡は、米 国・ハワイにあるすばる望遠鏡で、鏡の直径が8.2メートルあります。国内で は、兵庫県にある兵庫県立大学付属西はりま天文台の“なゆた”望遠鏡の口径が最 も大きく、直径2メートルの鏡が望遠鏡の中に入っています。大人一人が、すっ ぽりと入ってしまう大きさです。六本木から近い場所では、群馬県立ぐんま天文 台に口径1.5メートルの反射望遠鏡があります。大型の望遠鏡は、天文学の進歩 を支える重要なツールとして、今日も夜空に筒先を向けています。 西はりま天文台やぐんま天文台を始めとする国内の公開天文台では、こういった 大口径の望遠鏡を利用した天体観望会も開催しています。六本木で星空に親しん だら、次は是非口径の大きな望遠鏡で、さらに淡い天体の観望にも参加されてみ てはいかがでしょうか? 柴田 吉輝 埼玉大学 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」