★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [5]【コラム】「見えざるものを見る」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 先日のゴールデンウィークは晴天が続き、全国的に過ごしやすい陽気でしたね。 久々に体を動かして全身筋肉痛になってしまった方や、楽しかった日々の反動で 5月病になりかかっている方もいることでしょう。身体と心のリフレッシュも兼 ねて、5月の夜空を見上げてみませんか? 4月に引き続き、南東の空にひときわ明るく輝いているのは木星です。六本木天 文クラブでも人気の高い惑星です。望遠鏡や双眼鏡でよく観察すれば、その周り にはイオ・エウロパ・ガニメデ・カリストの4つの衛星を見ることができます (日によっては木星と重なって少なく見えることもあります)。これらの衛星は 数時間でもその位置を変えるため、毎日観察していると木星の周りを公転してい ることがよく分かります。約400年前、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイ が自作の望遠鏡を用いて発見したために、ガリレオ衛星と呼ばれています。簡単 な望遠鏡では見ることはできませんが、木星の周りにはガリレオ衛星以外にも60 個を超える衛星があることが、現在では分かっています。 木星のすぐ近くには、おとめ座の1等星スピカも輝いています。スピカのような 恒星をよく観察すると、木星のような惑星とは違う点があることに気がつきま す。ひとつ目は、惑星は瞬(またた)かず、恒星は瞬くという点です。ふたつ目 は、望遠鏡でのぞいた時に惑星は面積をもった円形(●)に見えますが、恒星は いくら倍率をあげても点光源(・)にしか見えないという点です。これらの違い は、人間スケールでは遠くにあるように思える惑星でも、はるか彼方にある恒星 に比べれば圧倒的に地球に近いために生じます。このように、パッと見ると同じ ような光の点に見えても、よーく観察するとちょっとした違いがあるのですね。 星と星の間にはなにもない空間が広がっているように見えますが、そういったと ころにも、実は銀河や星雲、星団が隠れています。これらの天体のうち、約300 年前にフランスの天文学者シャルル・メシエが発見し、リストにまとめたものを メシエ天体と呼びます。100個を超えるメシエ天体を望遠鏡でひと晩で制覇する メシエマラソンという試みあります。完走するには毎年3月中旬~4月上旬が適し ているのですが、腕に自信のある方はお試しあれ。一晩で夜空の英雄たちに負け ないマッチョになれそうですね。 マッチョと言えば、春の星座たちも強者揃い。うしかい座だけでなく、遅い時間 帯にはヘルクレス座やへびつかい座も昇ってきます。これら星座絵の人物は基本 的に体の前面が描かれていますが、せっかくの肉体美。背面も拝みたいと思う方 も多いことでしょう(編注:えっ?)。そこで便利なのは天球儀です。天球儀と は、ふだん星座が張り付いているように想定している天球を、宇宙空間から見た と想定して作られたものです。精緻なつくりのものはなかなか手に入りません が、博物館などで見つけた方は星座絵の表裏が逆になっているかチェックしてみ てはいかがでしょうか。普段見られない素敵な筋肉が描かれているかもしれませ んよ。 ぜひ5月の星空をお楽しみあれ! 萩原 圭 日本獣医生命科学大学 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」