★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [6]【コラム】「想像力:目の前に見えている以上のものを見る方法」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 今年もふたご座流星群の時期がやってきました。これから極大の12月14日にかけ て、日に日に多くの流れ星が見られるようになります。仕事帰り、晴れていれば ぜひ星空を見上げてみて下さい。流れ星には出会えなくても、きらびやかな冬の 星たちと出会うことができるでしょう。満天に輝くあの星々の正体はなんである のか、魅せられれば魅せられるほど知りたくなるものです。でも、今日は星の正 体を突き詰める前に、そもそも私たちはみな同じように星を見ているのか、少し 考えてみましょう。 今、私が見ているあの月を、遠く離れたあの人も見ている。そう考えたことがあ る人も、少なからずいることでしょう。では、「あの人」がもしも南半球にいる 人だったら…?同じものを、同じように見ている…そう信じたい気持ちはわかりま すが、悲しいかな「見え方」まで同じではありません。 日本と同時に夜空を見上げられる(同じ経度上の)オーストラリア東海岸にいる 「あの人」に想いを馳せて、星空を見上げてみてください。月面に見える模様、 欠けた月の姿、冬空に輝くオリオン…。遠く離れたオーストラリアにいても、こ れらの天体は一緒に眺めることができます。ネットワーク越しでならいつでも同 じものを見られる時代にあって、ネットワーク抜きでも同じものを見られるのは 素敵ですね。 でも、少し待って。南半球にいる「あの人」と星空の会話をするなら注意が必要 です。なぜなら、見えている星空模様が違うから。オーストラリアでは、見える 星空は全て日本とは逆さまです。日本ではオリオン座の左上でオレンジ色に輝く ベテルギウスも、南半球では右下に輝きます。月の模様も、三日月に光っている 部分も、何もかも逆さま。さらに、オーストラリアの「あの人」には見えている 南十字星も、日本にいる私には見えない。そして、日本にいる私には見えている 北極星は、オーストラリアの「あの人」からは見えないのです…。 いったいなにが起こっているのか、極端な例で考えてみましょう。北極に立って いる私と、南極に立っている「あの人」を想像してみて下さい。そう、星空が逆 さまなのではなく、星空を見ている私たちが逆さまなのです。そして、私から見 える北の空は「あの人」からは地平線の下、「あの人」が見ている南の空は私に は地平線の下なのです。                ↑                ○  D                ↓     ※こんな感じ     [凡例] ◯:地球、↑:人(矢印の向きが頭の方向)、D:月 日々同じ道筋を昇っては沈んでいくように見える星座たちも、見上げる位置が地 球スケールで変われば見え方も変わります。なにを見ているのかという点に加え て、どこから見ているのか、という点にも想いを馳せて星空を見てみて下さい。 きっと新しい発見があるはずです。そして「あの人」が見ている星空が、私の想 像した星空と同じか、いつか確かめに行けたら素敵ですね。たとえ「あの人」が 想像だけの人だってちっとも構いません。それは、あなたが見ている世界を無限 に広げてくれるはずですから。 「想像力は知識よりも重要だ。知識は有限だが、想像力は世界を包み込む。」 --アルベルト・アインシュタイン 中島 静 天文学普及プロジェクト「天プラ」