「天文学とプラネタリウム」〜学生編 「天文学とプラネタリウム(略称天プラ)」(高梨直紘、平松正顕) Abstract  我々は天文学を専攻し、天文学の広報普及に強い興味を持つ学生です。「宇宙の楽しみ方のひとつとしての天文学」を提案し、それを多くの人に楽しんでもらえる場として、興味を持っていただけるプラネタリウムと天文の学生が協力して活動することを目指しています。  ここでは、天文学を学ぶ学生のプラネタリウム観を調査したアンケート結果をお見せします。これによって、プラネタリウムに関わる方々に天文専攻の学生のプラネタリウムに対する意識を知っていただくとともに、今後の協力の契機としたいと思います。 As Post-Graduates of Astronomy, we have always felt the strong need to bring our studies closer to the public. A planetarium is a place that can enable this. By providing a physical space for the people to get to know Astronomy, we believe more people can enjoy this time-old and fascinating study. The following pages show results of a questionnaire on how Astronomy Post/Under-Graduates view planetariums. The views of our fellow students on planetariums will map-out where we stand and help us make the first move on this promising scheme. ##ココから本文  まずは、なにはともあれこの図をご覧ください。これは、2003年度天文天体物理若手の会(天文学を専攻する修士・博士課程の学生の集まり、会員数は約300人)主催の夏の学校にて採ったアンケートの結果です(回収数は73)。約半分の学生が“3年間で1度もプラネタリウムに足を運んだことがない”と答えているのがおわかりになるでしょうか。さらに、このアンケートは、比較的プラネタリウムなどに興味を示すと思われる天文学と社会のつながりに興味をもつ学生が回答してくれていると私たちは考えています(アンケートの実施率は、会員数に対し約30%)。つまり、全学生の50%は下限値にすぎず、実際にはもっと高い割合の学生がプラネタリウムに興味を持っていないということを表していると思われます。  話が前後しましたが、我々の紹介をさせていただきましょう。我々は大学で天文学を専攻する学生で、数ある宇宙の楽しみ方のひとつとして「天文学」という楽しみ方の普及に興味を持っています。天文学を広報普及することは、研究に従事する立場の人間、つまり学生にとって大変有益であると考えています。よって、広報普及活動をどんどん広げ、人々の天文学に対する理解・興味を深めていきたいと考えています。  しかし、学生の多くは「科学を噛み砕いて伝える」ということに不慣れです。そこで、天文学への理解もあり、かつ翻訳能力にも優れている方、すなわちプラネタリウム業界の方と協力することによって、より効率的な広報普及活動ができるのではないかと考えています。また、天文学に興味を持つプラネタリウムにとっても、最新の天文学に常に触れている学生は“使える”のではないかと考えています。  我々のアンケートの結果では、学生は「嫌いではないけど、プラネタリウムは子供向けで科学をやる場ではない」と考えている傾向が見て取れたかと思います。しかし、これは必ずしも実情を反映していないのはプラネタリウムに関わっている皆さんならおわかりでしょう。反映しているのは、我々学生の抱く一般的なプラネタリウムのイメージにすぎないのではないでしょうか。  これら学生の中には、今後天文学の第一線で研究活動に従事する学生も多く含まれているのは間違いないでしょう。この状態は、天文業界にはもちろんのこと、プラネタリウム業界にとって果たして良いことなのでしょうか?プラネタリウムはつまらないと考えている学生が研究者になる。我々は、このような事態は改善すべきであると考えています。広報普及に興味ある学生は宇宙と社会のつながる場所としてのプラネタリウムを知るべきでしょうし、天文学に興味あるプラネタリウムは“天文学を専攻する学生”がプラネタリウムに無関心なまま成長した場合のリスクを感じるべきではないでしょうか。  以上の話を総括すると、我々は次のような目的を挙げることができます。  (1)学生とプラネタリウムがお互いを知り合う機会を作り出す  (2)学生とプラネタリウムがお互いに協力できる場を作り出す  まずは(1)を通じて学生とプラネタリウムをネットワーク化することで活動の下地を築き、次に(2)を経て実際の活動へとつなげていきたいと考えています。具体的には、インターネット上でメーリングリストを立ち上げ、そのメーリングリストを中心としたネットワークの構築に努めています。このメーリングリストの概略を次に示します。  参加資格   ・「天文学」の広報普及に興味があること    (プラネタリウム関係者の場合、個人の立場での参加で構わない)  メーリングリスト上での話題   ・プラネタリウム見学会の企画実行   ・協力事業のアイディアの提供   ・プラネタリウム紹介   ・各地での活動例紹介  2003/12/15現在、MLには学生、プラネタリウム関係者が70名が参加しています。学生に関しては、学生組織や学会などを通じ積極的に参加を呼びかけていく予定です。プラネタリウム関係の方でも、興味をもたれた方はぜひ参加して欲しいと思います。  現在、我々は協力体制を築くための下地を作ることが主な活動となっています。今後は、より具体的な活動を通じ、プラネタリウム業界に積極的に働きかけていくつもりです。我々はこれらの活動を通じ、多様で捉えどころのないわくわくできる宇宙に多くの人が出会える機会を作り出せることを切に希望します。  なお、ここで紹介したアンケートの詳しい内容および結果は以下のURLに掲載してあります。2003年度JPS総会・研究会で採らせていただいたアンケートの結果についても同じサイト内で紹介させていただいています。ご覧下さい。 「天文学とプラネタリウム」WEBサイト http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/~takanashi/tenpla/