★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [3]【コラム】静かな太陽 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 今年の夏、日本列島は記録的な猛暑に見舞われました。うだる暑さに太陽を恨め しく思った方も多いのではないでしょうか。ですが、太陽が今年に限って光線量 を増やしていたわけではありません。それどころか、むしろ最近の太陽活動はこ こ 100年の中で最も低調なのです。 変わることなく輝いて見える太陽ですが、実は 11年の周期で活発になったり静 かになったりしています。ところが、2007年に終わるはずだった静かな時期は 2009年まで続き、現在ようやく勢力を増しつつあるも、11年前と比較すると弱い 状態にあります。少々活動性が低くても問題はないのですが、これが数十年続く と話が変わってきます。 17世紀から 18世紀にかけて、太陽活動が低下していた時代がありました。発見 者の名前を取ってマウンダー極小期と呼ばれる 70年間、作物の不作や飢饉が頻 発するなど、寒冷化を示す記録が残っています。そして、最近の太陽活動とマウ ンダー極小期初期の活動パターンに類似性があるのです。しかしながら、この先 寒冷化するのか、あるいは杞憂に終わるのかは誰にもわかりません。 この広い宇宙には、太陽のような星は文字通り星の数ほどあります。しかし、我 々に一番身近にある太陽ですら、その振る舞いを予想するに至っていません。日 本の「ひので」やアメリカの「ソーラーダイナミクスオブザーバトリー」「ステ レオ」などが宇宙から太陽を常時監視し、様々な謎を解き明かそうとしています。 これから寒い季節がやってきます。夏には恨めしかった太陽も、恋しくなってく るでしょう。今日は、満月とともに奇麗な夕日が見られるといいですね。 岡本丈典 国立天文台/ロッキードマーティン太陽天体物理学研究所 研究員