★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [3]【コラム】よばひ星、すこしをかし ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからま しかば、まいて。」 清少納言が記した枕草子の第236段にある一節ですが、ここで言う「よばひ星」 とは流れ星の事。尾を引いて流れる星の姿に、愛しい女性の許に忍び行く男性の 姿を想像した平安人の遊び心が伝わってきます。そんな「よばひ星」をたくさん 見られる時期のひとつが、まさに今なのです。 流れ星は年中流れてはいるのですが、その中でも特に流れやすい時期がありま す。夏はそういった季節のひとつ。特に、毎年8月13日前後にまとまって流れる 流れ星たちを、ペルセウス座流星群と呼んでいます。ペルセウス座という星座名 を冠しているのは、ペルセウス座の方角から流れ出すように見えるから。なぜそ のように見えるのか、それを知るには流れ星のメカニズムを理解する必要があり ます。 流れ星という現象を引き起こすのは、宇宙空間を漂う砂粒のようなものです。そ こに太陽の回りを公転運動している地球が秒速30キロメートルという猛烈な速度 でぶつかり、地球大気が摩擦熱で光を放つ現象が、流れ星なのです。 この砂粒たちは、宇宙空間の中に一様に広がっているわけではありません。とこ ろどころ、砂粒が集まって川のように流れている場所があるのです。そのような ところに地球が飛び込むと、まとまった数の流れ星となって見え、これを流星群 と呼ぶのです。雨の中で走ると正面から雨がやってくるように見えるように、砂 粒の流れの中に地球が飛び込むと、地球の進行方向側から流れ星が湧き出すよう に見えるのです。 ペルセウス座流星群の頃、ちょうど地球はペルセウス座の方角に向かって宇宙空 間を動いています。宇宙の中での地球の動きを想像しながら流れ星を待つのも、 また一興。清少納言がよばひ星に想いを広げたように、私たちも東京の夜空に地 球の動きを感じてみませんか。 高梨 直紘 天文学普及プロジェクト「天プラ」代表 / 東京大学 特任助教