★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [2]【コラム】―月― 過去と今 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 月。ふと空を見上げるとそこにあり、さまざまな表情で私たちを和ませてくれま す。その模様も特徴的で、たくさんのクレーターからなるその姿は、日本では “うさぎが餅つきをしている”などと言われます。皆さんも一度は月のうさぎを探 したことがあるのではないでしょうか。その月のうさぎ、よく見ると、満月だけ でなく、半月や三日月といった状態でもその一部を見ることができます。理由 は、月が常に地球に同じ面(うさぎが餅つきをしているように見える面)をみせ ているからです。なぜ月は同じ面を私たちに見せ続けるのでしょう。今回はそこ から話を進めていくことにしましょう。 月が同じ面を私たちに見せ続けている理由は簡単です。月の自転と公転の周期が 同じだからです。私たちの地球は、それ自身が1日で1回転(自転)しながら、太 陽のまわりを1年間で1回まわっています(公転)。月も地球の周りを自転しなが ら公転しているのですが、その周期がどちらも約27日で一致しているのです。 自転と公転の周期が一致するとはどういうことか、少し例を挙げて考えてみま しょう。友人に手を伸ばしてボールを持ってもらい、その場で一回転する姿を、 少し離れたところから眺めてみます。この時、友人は地球で、ボールは月です。 すると、ボールが友人のまわりを一回転する間に、ボールも一回転しているのが わかるでしょう。これが自転と公転の周期が一致するということです。月も同じ です。 この月ですが、以前からずっと同じような動きをしていたわけではありません。 月が誕生した頃は、今よりも速く自転しながら、今よりも地球のずっと傍をま わっていました。地球もまた、今よりも速く自転していました。しかし、地球と 月の間に働く潮汐力によって、地球と月の自転は徐々に遅まっていきました。地 球の自転が遅くなると、地球が月をとらえようとする力が弱まり、月は地球から 少しずつ離れていきました。月の自転は、ある一定の速さまで遅くなると、地球 にとらわれる力によって安定し、月の公転周期と同じ周期で自転し続けるように なりました。こうして、今の月と地球の姿になったわけです。 現在、地球から見た月は、地球から見た太陽の大きさとほぼ同じ大きさに見えま す。ですが、先ほど説明したように、今でも月は少しずつ地球から遠ざかってい ます。だんだん月が遠くなれば、夜空に見える月のサイズも少しずつ小さくなっ ていくでしょう。地球から皆既日食や皆既月食が楽しめるのも、今の時代ならで はだと言えるのです。 古来から人々が楽しんできたように、秋の夜は月をゆっくりと眺めてみては? 野沢 由依 天文学普及プロジェクト「天プラ」