★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [4]【コラム】世紀の金環日食を“安全に”楽しもう ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ いよいよ15日後に迫った金環日食。 前回のコラムでは金環日食とはどの様な現象なのか?という事を書きましたが今 回は直前という事で実際に観測する時の注意点などについて触れていきたいと思 います。 ここ最近、テレビやラジオ、雑誌や新聞などでもこの天文現象の事を取り上げる 回数が増えてきたので、いよいよという雰囲気になってきました。 ただ、「珍しい現象」「都市部でも見れる」など、盛り上がるのは良いのですが それと同じくらい気にかけてほしいのが、「観測時の危険性」についてです。 「太陽を直接見てはいけない」 金環日食の話題の中でこのフレーズを耳にしたことがある人も多いと思います。 では、なぜ「いけない」のでしょうか? 太陽から強い光が出ているのは皆さんご存知だと思いますが、この強い光が目に 入ると、目の奥にある網膜を傷つけてしまいます。いわゆる網膜が火傷をした状 態です。網膜が火傷をしてしまうと視力が低下したり、頭痛やめまい、物が欠け て見えるなどの症状が起き、重症の場合は視力が低下したまま元に戻らなかった り、そのまま失明してしまう場合もあります。だから太陽を直接見ては「いけな い」のです。太陽を直接見るというのはそれほど危険な行為ですので、絶対にや めましょう。 きちんと安全な方法で観測をすればこのような危険を回避する事ができます。そ の方法の1つが日食メガネの様な専用の道具を使った観測です。 最近は、ホームセンターや家電量販店などでも販売しているのを見かけますし、 コンビニでも専用の道具が付録として付いている雑誌も見かけるので、日食メガ ネ自体は簡単に手に入れることができます。ただし、使用上の注意はよく読んで 利用しましょう。例えば、このような専用の道具を使用していても、双眼鏡や望 遠鏡と組み合わせて使用してはいけません。せっかく光をカットしても、レンズ で増幅されてしまい意味がなくなってしまいます。 また、サングラスや黒い下敷きを持っているから、わざわざ買わなくても大丈夫 という人をたまに見かけますが、これらはNGです。もし、皆さんの周りにそうい う人がいたら止めてあげてください。国立天文台のウェブサイトには、安全な観 察方法についての注意が書いてありますので、よく読んでおきましょう。 :国立天文台 2012年5月21日 金環日食 特集ページ http://naojcamp.mtk.nao.ac.jp/phenomena/20120521/ 先ほど太陽からは強い光が出ていると書きましたが光には目に見える「可視光 線」と目には見えない「不可視光線(赤外線や紫外線)」があります。サングラス や黒い下敷きなどで防げるのは可視光線で不可視光線は防ぐことができません。 なので、そのまま太陽を見てしまうと眩しくない「だけ」で網膜を火傷してしま う恐れがあるのです。雲がかかって減光された太陽ならば見ても大丈夫と思って いる人も多いようですが、同じ理由でこれもNGです。絶対にやめましょう。 危険という意味ではどこで見るかということも少なからず関係してきます。金環 日食の時間帯がちょうど通勤、通学の時間帯と重なるので、ついつい太陽を見上 げたまま歩いたり、道の真ん中で立ち止まってしまったりして事故にあうという ことも考えられます。そのような事態を防ぐ為に5月21日は登校時間を早めた り、遅らせたりするという対応をとる学校も数多くあります。 そういった安全への配慮がきちんとできて、初めて金環日食を楽しむ事ができま す。東京では173年ぶり、江戸時代以来となる今回の金環日食を素晴らしい思い 出にする為に、安全への配慮は忘れないでください。 今年の天文現象のハイライトまでもうあと少し。 どうか、当日晴れますように。 一星 昌利 天文学普及プロジェクト「天プラ」