★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [3]【コラム】天の川門に 波立つなゆめ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 天帝の怒りをかって天の川の両岸に引き離されてしまった、織姫と彦星。年に1 度だけ許される逢瀬では、カササギが橋を渡して二人を引き合わせる…。七夕の 物語は、誰もが知ってる物語のひとつでしょう。 織姫はこと座のベガ、彦星はわし座のアルタイルです。これらの星は、いずれも 明るく、目立つ星です。午後9時頃に、東の高い空を見上げてみて下さい。明る く輝く星がひとつ見えるはずです。それがベガです。 ベガは、天文学では重要な役割を担った星です。近代天文学では、星の明るさの 基準となる星として使われ、その明るさは0等級と定められていました(ベガ等 級と呼ばれ、現在でも広く使われています)。全ての天体の明るさは、ベガの明 るさを0等級とした時に、何等級となるのかというように決められていたのです。 このベガから少し低い、南よりの空に見える明るい星が、相方の星となるアルタ イルです。明るさはベガよりも少しだけ暗いですが、1等星。東京の明るい夜空 の中でも、ベガと同じく、簡単に見つける事ができる星です。 最近の東京の夜空は、以前に比べると暗くなって来ているので、眼を凝らせば周 りのお伴の星も見えるかもしれません。ベガの周囲には織姫の瓜畑と呼ばれる星 たちが、アルタイルの両脇には、アルタイルも含めて河鼓三星(かこさんせい) と呼ばれる星の並びを見つける事ができるでしょう。 もし夏に星がよく見えるところにでかける予定があれば、織姫と彦星の間に流れ る天の川を見つける事ができます。が、逆に星が見えすぎてどれがなんの星だか わからなくなりがちです。適度に間引きされた都心の星空でベガとアルタイルの 探し方を予習して、それから出かけていくと良いかもしれません。 本来の七夕は旧暦の7月7日であり、梅雨が明けた8月頃がその季節なのですが、 残念ながら今の暦では七夕は梅雨の真っ盛り。なかなか晴れ間は覗きませんが、 運良く晴れた晩には、ぜひ夜空を見上げてみましょう。 彦星と 織女と 今夜逢ふ 天の川門に 波立つなゆめ(詠み人知らず) 高梨 直紘 東大EMP / 天プラ