★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [2]【コラム】地の「金」、空の「金」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 4年に1度の夏季オリンピック、皆さんはご覧になっていますか。ロンドンとの時 差は8時間で、日本時間の深夜~明け方に決勝を迎える競技が多く、睡眠不足が 続く毎日。体調管理にじゅうぶんお気をつけください。 ところでこの8月は、オリンピックだけでなく天文現象にも大注目。毎年恒例の ペルセウス座流星群や、細い月が金星を隠してしまう金星食など、アスリートた ちの活躍と同じくらいの感動が味わえるはずです。地上と天空、どちらも目いっ ぱい楽しみたいですね。 一番の注目は、14日の明け方に見られる「金星食」でしょう。明けの明星として 眩しく輝いている金星の前を細い月が通り過ぎていきます。日本で条件良く見ら れるのは23年ぶりと、かなり珍しい現象です。 金星は2時44分ごろに月の明るい側(光っている部分)から隠され始め、1分半く らいかけて完全に月の裏に回ります。月の裏側から出てくるのは3時30分ごろ。 今度は月の暗い側から、やはり1分半くらいかけて完全に現れます(時刻はいず れも東京の場合)。14日にはもうオリンピックは終わっていますが、生活リズム を元に戻すのを数日だけ遅らせてみてはいかがでしょう。 天体望遠鏡など特別な道具がなくても、目で見るだけでじゅうぶんに美しさを堪 能できます。金星が隠される/現れるところだけでなく、その前後の時間に細い 月と金星が大接近しているようすも必見です。 5月の「金環日食」、6月の「金星の太陽面通過」に続く、今年3つ目の「金」の 天文現象「金星食」。夜空の金メダルを、どうぞお見逃しなく。 もうひとつの注目は、毎年お盆前後に見ごろとなる「ペルセウス座流星群」。ま とまった数の流れ星が見えると期待される現象です。もっとも数が増えるのは12 日の深夜~13日の明け方(オリンピックの閉会式のころ)と予想されています が、前後数日はチャンスあり。願い事を用意して夜空を見上げてみましょう。 流れ星は空のどの方向に飛ぶかわかりませんので(裏を返せば、どの方向にも飛 びます)、空の広い範囲を見渡しましょう。明かりが目に入ると流れ星が見えに くくなるので、街灯に背を向けるなど工夫するのもポイント。また、5分10分で はなく、なるべく長い時間、空を見上げるのも大切です。 アスリートたちの汗のような、美しい星飛沫が見られますように。 さらにもうひとつ、宵の西の空にも注目してみてください。火星と土星、おとめ 座のスピカという3つの星が集まっている光景が楽しめます。夜更かしや早起き の必要がないので見やすいですね。土星が金(黄白色)、スピカが銀(青白 色)、火星が銅(オレンジっぽい赤)と、メダルの色に見える、かもしれませんよ。 ここまでに紹介した注目の現象だけでなく、日々の夜空にも見どころはいろいろ あります。頭上に大きく広がる夏の大三角や、南の空に赤く光るさそり座のアン タレス、空気が澄んだところなら天の川も見えるでしょう。 メダリストや入賞者だけでなく全選手にエールやメッセージを伝えるのと同じよ うに、目立つ天文現象だけではなく普段の夜空の面白さや美しさにも、目を向け てみてくださいね。 泉水 朋寛 星のソムリエ(R) / アストロアーツ