★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [3]【コラム】秋の星空の楽しみ方 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 肌寒い日が続いたかと思えば、また少し暖かい日に戻る。冬の足音が少しずつ聞 こえてきたこの季節、夜空の主役に躍り出たのは秋の星座たちです。 夏や冬のきらびやかな星空とは違い、秋の星空は例えるならば“わび”の味わいが あります。一見してわかるような、明るい星はほとんど見あたりません。知らな ければ見落としてしまうような、かすかな光をはなつ星たちがその主役なのです。 秋の星空に親しむためには、秋の四辺形と呼ばれる形を覚えることから始めま しょう。ギリシャ神話では、天馬ペガススの胴体にあたるこの四辺形は、3つの2 等星とひとつの3等星からなります。ペガスス座と呼ばれる星座の一部で、午後9 時頃に南東の空の高いところに見つけることができます。 四辺形の西よりのふたつの星を結んで南の地平線に向かって下ろしていくと、そ こにはフォーマルハウトと呼ばれる、みなみのうお座の1等星があります。中国 では北落師門と呼ばれるこの星は、和名ではみなみのひとつ星などとも呼ばれ、 秋の夜空にある唯一の1等星として古くから親しまれてきました。 一方、四辺形の東よりのふたつの星を結んで南の地平線に向かって下ろしていく と、そこにはデネブ・カイトスと呼ばれる、くじら座の2等星があります。神の 怒りを鎮めるために生け贄に献げられたアンドロメダ姫を、まさに襲わんとして いる化け鯨の尻尾にあたる星です。 四辺形の左上の星、もっとも北東側にある星は、そのアンドロメダ姫の頭にあた る星です。アルフェラッツと呼ばれるその星から、左上側に向かって星の列が連 なりますが、それがアンドロメダ座です。アンドロメダ座には、有名なアンドロ メダ銀河があります。都心で肉眼で探すのは難しいですが、望遠鏡を使えばその かすかな光を捉えることができるでしょう。 星々の配置に親しんだら、星空の奥行きにも想いを馳せるのも良いでしょう。夜 空に張り付いているように見える星たちも、ひとつひとつの星までの距離はばら ばらです。フォーマルハウトまでの距離は25光年、デネブ・カイトスは約100光 年と、まったく奥行きが違うのです。その極みであるアンドロメダ銀河は、実に 230万光年も彼方にあります。230万年もかけて光が地球にやってきている事を想 像しながら星空を眺める、そんな楽しみ方ができるのも秋の星空ならではです。 スター・クルーズ・プラネタリウムでは、地球を飛び出して、星空の彼方まで 旅することができるようになっています。ふだん見ている夜空の先になにがある のか、ぜひその目で確かめてみて下さい。 高梨 直紘 天文学普及プロジェクト「天プラ」