★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [3]【コラム】流星と宇宙を旅する想像力 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆  早々と暮れる夜空の暗さをひとしお感じる冬が来た。もうすぐ、宇宙を旅する 星のかけらが私たちを訪れる。12月中旬頃に活動する、ふたご座流星群。小惑星 ファエトンを起源とする塵粒の群れが地球大気に飛び込んで来る。今年は月明か りも無い絶好の条件。温かい格好をして、暗い夜空に宇宙からの訪問者を迎えな がら、宇宙を旅する人の夢を考えて みよう。  例えば、ロウの翼で太陽に近づいたイカロスの神話があるように、青空を羽ば たく鳥を見上げて、人は自分もまた高く飛び上がることをきっと古くから空想し たのだろう。では、その空の高くにある月や星、天体の世界まで飛んで行くこと を 夢見るようになったのは、いつ頃からなのだろうか。  古代ギリシアの賢人たちは既に月や太陽の遠さを推し量っていた。中世の宗教 において天上界は人の望み得ざる世界であっただろうが、やがて花開く科学に よって天体の姿を少しずつ目の当たりにしはじめた人々は、そこへと想像力を羽 ばたかせる。17世紀に著された日月両世界を旅する空想譚は、全く荒唐無稽でこ そあれ、その欲求の嚆矢であるかも知れない。19世紀の空想旅行記ともなれば、 誠にリアリスティックな科学的想像で月への旅路を描き出す。いよいよSFの時代 の幕開けと言えよう。  今や、私たちが手にしている小説、映画、コミック、アニメーションは、当た り前のように宇宙に飛び出していく。スペースコロニーに暮らし、月に基地を建 設し、火星や木星を往来する。想像は太陽系に留まらず、星の海を遥かに渡って 移民船団が船出し、銀河系の外へ希望を掴みにいこうとまでする。  実際の人類は、どこまで飛ぶことが出来たのだろう。19世紀の小説『月世界旅 行』から100年後のアポロ計画で、人は本当に月に降り立った。それから40年 後、国際宇宙ステーションには数人が常駐している。火星への有人探査計画は、 今世紀に実現するだろうか。人間がその身で辿り着けるのはまだ地球の周りだが、 幾つもの惑星に数多くの探査機が訪れ、パイオニアやボイジャーは30年もの旅を 続けて太陽系を通り抜ける旅路にある。  その先に広がる恒星まで届く程、人の手はまだ長くは無いが、この冬六本木に 登場した箱庭を歩きながら、想像力は今でも飛んで行くことができる。 内藤 誠一郎 天文学普及プロジェクト「天プラ」