★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [5]【コラム】今がチャンス!薄明の空に水星を探そう ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 太陽系の最も内側を回る惑星・水星。惑星たちは太陽に近いほど速いスピードで 公転しています。当然、水星は惑星の中で公転速度ナンバー1。星空の中でも 日々、位置を変えていくのが分かります。その動きの速さから、ギリシャ神話に 登場する俊足で伝令の神ヘルメス(ローマ神話ではメルクリウス=英語読みで マーキュリー)の名が与えられました。 そんな水星ですが、太陽に近いということは、見かけ上、太陽からあまり離れる ことがないため、見にくいということにもなります。実際、水星は太陽が沈んだ 直後の西の空低いところか、太陽が昇ってくる直前の東の空低いところにしか見 ることができません。明るさも0等星~1等星とほかの惑星に比べると暗い上、見 ることが出来る時間帯は周りの空が明るいので、なおさら目にすることが難しい のです。事の真偽はともかく、あの地動説で有名なコペルニクスですら見たこと がなかった、という逸話まで残されているほどなのです。 このように見ることが難しい水星ですが、年に数回、見やすくなる時期がありま す。地球から見て水星が見かけ上、太陽から最も離れる瞬間を最大離角といいま すが、その前後に見やすくなるのです。最大離角は一年間に平均して6回ほどあ りますが、そのほかの条件も重なり合って、毎回見やすさが変わります。今年は 6月13日の最大離角の前後が水星を見る絶好の機会です。 6月の上旬から中旬にかけて水星を見るには、まず西の空が開けたところを探し ましょう。見かけ上、太陽から最も離れるといっても、日没時の水星の高さは20 度弱しかありません。水平から握りこぶし2個分です。近くに高い建物や山があ るとすぐに隠されてしまいます。  見やすくなるのは日没30分後くらいから。6月は日没が遅いですから東京では19 時30分頃でしょう。とはいっても空はまだまだ明るいですので、水星を見つける ためには双眼鏡やオペラグラスがあると便利です(太陽が出ている時間帯に使っ てはいけません!危険です)。今年の6月は水星のすぐ下に金星が輝いています のでこれがいい目印になるでしょう。そういう意味ではここ数年で最も水星が見 つけやすいのが2013年6月かもしれません。 古代から知られていた水・金・火・木・土の五惑星。どれも肉眼で見えますが、 水星を見たことがある、という人はやはり少ないのではないでしょうか。六本木 ヒルズ屋上は、都会でもっとも西の空が開けた視界を持つ場所。西の空に沈みゆ く水星と金星を探すにはもってこいです。ぜひこの絶好の機会に、水星探しに チャレンジしてみてください。 塚田 健 平塚市博物館