★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [7]【コラム】ハワイ、すばる望遠鏡で超広視野カメラが始動。それが初めて見たものは…? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 今年の夏は記録的な猛暑です。みなさん、体調を崩されていませんでしょうか。 まだまだ暑い日が続いていますが、暦から言えば立秋をすぎ、日の入りの時刻は もっとも遅い6月下旬に比べ30分以上早くなりました。夜の8時頃には南の空高く には夏の大三角が輝いていますが、東の空に目を向けると、秋の星座の代表であ るペガスス座の四辺形が上ってきているのを見ることができます。この上りくる 四辺形の左下の星はアルフェラッツといい、星座絵ではアンドロメダ座とペガス ス座が共有する星となっています。アンドロメダ座も秋の星座のひとつでアンド ロメダ銀河(M31)があることで有名です。アンドロメダ銀河は、我々が住む太陽 系が含まれる天の川銀河のお隣さんで、その距離およそ250万光年のところにあ る渦巻銀河です。夜空の暗いところでは、肉眼でもぼんやりとその姿を見ること ができます。肉眼で観察可能な最も遠い天体で、日本から見える最大の銀河です。 実は、先月末、このアンドロメダ銀河を最新の観測装置で撮影した様子が国立天 文台から発表されました。この観測装置はハワイのすばる望遠鏡に新たに設置さ れたHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム,HSC)。受光部は赤外 波長域の感度を大幅にアップした 3cm×6cm のCCD素子116枚を並べ、直径60cm の 円形の焦点面をカバーしています。計8億7000万画素を持つまさに巨大なデジタ ルカメラです。現在の一般用の最高級一眼レフに使われるCCD素子が36mm×24mm で3000万画素程度であることを考えると、HSCの受光部がどれだけ大きなものか がわかります。これにやはり新しく開発した補正レンズを組み合わせることよ り、以前に比べて7倍の範囲、満月であれば9個も並べたほどの広い領域を一度に 観測できるようになりました。これで初めて、アンドロメダ銀河のような大きな 天体も一視野で全体を捉えることが可能になったのです。 今後はこのHSCの広い視野とシャープな星像を生かし、国内外の研究機関が協力 して、重力レンズ効果を用いてダークマター分布を直接探査し、ダークエネル ギーの性質にせまるという、今一番ホットな宇宙の謎を解き明かしていくことに なります。 六本木の明るい夜空ではアンドロメダ銀河の肉眼観測は難しいですが、今後、秋 から冬にかけて、空の透明度がよい時には、集光力のある大型双眼鏡での観望に 挑戦してみたいと思います。第4金曜日の六本木天文クラブの星空観察会にどう ぞお集まりください。 参考URL: 国立天文台 すばる望遠鏡 トピックス 2013年7月30日 新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開 http://www.subarutelescope.org/Topics/2013/07/30/j_index.html 伊藤 哲也 国立天文台先端技術センター / 天文学普及プロジェクト「天プラ」