★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [3]【コラム】「春分を祝福する大十字」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆ ★☆ 陽射しの暖かさに日毎に上着も軽くなる、春がやって来た。3月21日は春分の 日。暦の上でも春半ば、花開く春爛漫ももうすぐだ。 春分日とは、太陽が春分点(天の赤道と太陽の通り道である黄道の交差点)を通 過する日のことを言う。太陽が真東から昇り真西に沈む日であり、また昼夜等分 の日としても知られている。しかし、実際には、昼の方が多少長い。例えば2014 年の春分の日は、東京では昼が9分長くなっている。太陽が地平線から顔を出す までの時間、そして地面の下にすっぽりと隠れるまでの時間だけ、昼が長いの だ。地球の大気が光を屈折させて、太陽が少し浮き上がって見えることも、昼を 長くさせている。 春分は、さまざまな地域で重視されていた。古代ローマのカレンダーは、春分の 月から一年を始めていた。春分に合わせて、祭祀や祝日を設けている文化も多 い。日本の仏教では春分を中日として春の彼岸に祖霊の供養をする。 キリスト教圏では、3月に《復活祭》を迎える。イエスが磔刑に処されてから三日 目に復活したという伝承を記念する祭祀は、「春分の日の後に来る最初の満月の 次の日曜日」と定められている。私達が現在使っているカレンダー≪グレゴリオ 暦≫が採用されたのは、ユリウス・カエサル以来用いられていた暦では春分の日 がずれてしまうのを正すためだった。恐らくは、キリスト教成立以前から伝わる 春分祭が、教義の中に融け込み、最も重要な祝日として継承されてきたのだろう。 冷たく澄んだ冬の夜空に高々と輝いていた「冬の大三角」も、3月にもなるとそ ろそろ南西の空に傾いてきた。出番を終えようとしている冬のシンボルの上に は、ひときわ明るい星がもう一つ輝いている。12年かけて黄道の星座を一周する 木星が、今年の冬はふたご座の中を移動している。3月下旬ごろまでの一時期、 大三角に木星を加えて見れば、復活祭の頃の夜空には、巨大な十字架が浮かび 上がっている。 内藤 誠一郎 国立天文台 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」