★☆★☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ [4]【コラム】「銀河鉄道の夜」の星空を眺めて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 宮沢賢治の遺した「銀河鉄道の夜」は、賢治を代表する童話作品のひとつです。 童話の形を取ってはいますが、幻想的な世界観、表現の美しさなどから、子ども から大人まで人気のある作品です。 この「銀河鉄道の夜」には、夏から秋にかけて見える星座や天体が数多く出てき ます。今回は、その中から都会の星空でも探しやすいものをいくつかご紹介しま す。この夏は、銀河鉄道から見えるはずの星座や天体を、本物の星空の中に探し てみてはいかがでしょう? ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「青い琴の星(ベガ)」 主人公のジョバンニが銀河鉄道に乗車する直前に地上から見える「青い琴の星」 として、こと座の0等星であるベガが描かれています。ベガは青白く光って見え るため、賢治も「青い」と表現したのでしょう。ベガは夏の大三角形を構成する 星のひとつでもあり、7月中旬の21時頃には、頭の真上の方に見えています。 「北十字(はくちょう座)」 銀河鉄道から見える星座として、最初に描かれるのが「北十字」、はくちょう座 です。十分に暗いところでは、白鳥が翼を広げて天の川の中を飛ぶ(泳ぐ?)姿 が見られますが、都会でも、十字の形を確認することができます。はくちょう座 のおしりのところにある1等星のデネブは、ベガと同様、夏の大三角形を構成す る星のひとつです。夏の夜には東の高い空に見えており、夏の大三角形の中で最 も北寄りに光っています。 「アルビレオの観測所(アルビレオ)」 はくちょう座のくちばしのところにあるアルビレオは、二重星です。肉眼で見る と1つの星にしか見えませんが、望遠鏡で見てみると、青とオレンジの2つの星 を認めることができます。賢治はその色を「青宝玉(サファイア)と黄玉(ト パーズ)」と表現しており、確かにその姿は宇宙の宝石のように感じられます。 「鷲の停車場(わし座)」 アルビレオの観測所を過ぎると、鷲の停車場、わし座に差し掛かります。わし座 には、夏の大三角形の最後のひとつである1等星のアルタイルが含まれます。こ の星は七夕の彦星としても知られています。最初にご紹介したベガが織姫星であ り、それぞれ天の川を挟んで反対側に位置しています。 「蝎の火(アンタレス)」 さそり座の心臓にあたるとされるアンタレスは、火と表現されるにふさわしい赤 い色の星です。名前もギリシャ語で「火星に対抗する者」という意味の「アン チ・アレス」から取られています。さそり座は、夏の南の空低くにその姿を見る ことができます。都会の夜空で全形を認めるのは難しいですが、アンタレスはそ の色から比較的見つけやすくなっています。また、今年の夏は、はさみの近くに 土星を確認することもできます。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ なお、「銀河鉄道の夜」には、実はいくつかのバージョンがあり、最終的な決定 稿がありません。今回は最終稿と言われる第四稿に出てくるものをご紹介しまし た。「銀河鉄道の夜」は、原作も素晴らしいですが、朗読・演劇・プラネタリウ ム番組など、いろいろな翻案作品が展開されています。本物の星空の次は、視覚 化されたものを見てみるのもオススメです。 参考:青空文庫「銀河鉄道の夜」(新潮文庫版) http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card456.html 瓜生 こずえ 天文学普及プロジェクト「天プラ」