「秋の星空は大人の楽しみ」 東京では木枯らしも吹き、いよいよ秋の深まりを感じる季節になってきました。 夏の蒸し暑さの残った9月に比べると、ぐっと湿度も下がり、空が綺麗に晴れ渡 る日も多くなりました。そんな秋の夜空の見どころをふたつご紹介しましょう。 夏や冬の星空に比べると、秋の星空には目立つ星も少なく、特別な印象を持たな い方も多いのではないでしょうか。確かに秋の夜空にある1等星は、みなみのう お座のフォーマルハウトただひとつ。夏の大三角形や冬のダイヤモンドのように きらびやかな星たちがあるわけではありません。しかし、そこが逆に日本的な美 を感じさせてくれるような気がします。秋の星空は、大人の楽しみなのです。 例えば、アンドロメダ座の一角に見える茫としたかすかな光。「アンドロメダの くもは さかなのくちのかたち」と宮沢賢治が歌ったこの天体の正体は、私たち の住む銀河系のすぐ隣にあるアンドロメダ銀河です。その距離250万光年。肉眼 で見える星々の多くが100光年以内の星であることを考えると、圧倒的な距離で す。さりげなく秋の星たちに紛れ込み、ひっそりと輝く様子は味わい深いものです。 有名な“すばる”もまた、秋の星空の住民です。狭い範囲に星が集まり、じっと輝 く様は印象深いものです。清少納言が枕草子の中で「星はすばる…」と書いたよ うに、昔から人々に親しまれてきた天体でもあります。その名前は、「集まる」 を意味する古語の“すまる(統まる)”に由来していると考えられており、西洋か らの名前が多い天体の呼び方の中にあって、凜とした存在感を放っているように 思います。 東京都心でアンドロメダ銀河を肉眼で見つけるのは至難の業ですが、すばるは簡 単に見つけることができます。午後8時頃の東の空を探してみて下さい。それら しい天体を見つけることができるでしょう。11月の六本木天文クラブの星空観望 会でも、すばるを案内する予定です。また、空の状況が良い日にはアンドロメダ 銀河にも挑戦してみたいと考えています。皆さんも、六本木で秋の星空を楽しみ ませんか? 高梨 直紘 天文学普及プロジェクト「天プラ」