★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [5]【コラム】「寒くても大丈夫、室内でも楽しめる冬の大三角」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 明けましておめでとうございます。 今年の冬は暖かいなと思っていたら、電車が止まってしまうほどの雪が降った り、体が凍り付いてしまうような強風が吹くなど、急激に寒くなりましたね。冬 は多くの1等星や“すばる”の名前で有名なプレアデス星団など、とても見ごたえ のある星空なのですが、あまりに寒すぎると外で長時間星を見ているのはとても 大変です。そこで今回は、室内外を問わずどこででも楽しめる冬の大三角を紹介 したいと思います。 室内で楽しめるのは、星たちの物語です。冬の大三角は、オリオン座のベテルギ ウス・こいぬ座のプロキオン・おおいぬ座のシリウスという1等星三つを頂点に しているため、三つの星座が関わっています。オリオン座の英雄オリオンについ ては、多くの人がご存じなのではないでしょうか。オリオンがサソリに刺されて 死んだために、星座になった今でも、夏の星座であるさそり座が西の地平に沈ま ない限り冬の星座であるオリオン座が東の地平から現れないというのは、とても 有名な話です。 では、こいぬ座とおおいぬ座にはどんな話があるのでしょうか。実はこのふたつ の星座はオリオンと関係があるとされています。おおいぬ座はオリオンの猟犬で あると言われています。オリオン座の足元にはうさぎ座がありますが、うさぎは オリオンに狙われる獲物のひとつであり、おおいぬ座は常にうさぎ座を睨んで 狙っているそうです。こいぬ座はおおいぬ座と同じくオリオンの猟犬とも、オリ オンの恋人の月の女神アルテミスと関わりのある犬だとも言われています。こう して神話をみてみると、三つの星座は実はとてもとても古い付き合いがあるのだ と思えてきますね。 寒くてもやっぱり外で星を見たい、そんな人もいるでしょう。今日の20時頃、冬 の大三角は南東の空で見ることができます。まずはオリオン座を探してみてくだ さい。少し左に傾いた砂時計を見つければ正解です。砂時計の左上、赤っぽく 光っている星がベテルギウスです。オリオン座の下には、オリオン座のどの星よ りも輝いている星があります。それが、おおいぬ座のシリウスになります。冬の 大三角は正三角形に近い形をしています。それを頼りに、ベテルギウスとシリウ スを結んだ線の左側で、正三角形をつくれる場所にある星がプロキオンとなりま す。それら三つの星をつなげれば冬の大三角の完成です。 三つの星の中で唯一赤っぽい色をしているベテルギウスは、超新星爆発をおこす かもしれない、と話題になっている星ですね。超新星爆発は重い星の最期に起き る現象です。ベテルギウスは、実は年老いた星なのです。その寿命はおおよそ数 百万から1千万年程度で、もうその終わりの段階に差し掛かっていると考えられ ているのです。星は、元々青や白っぽい色をしていても、歳を取ると赤い色へと 変わります。ベテルギウスが赤いのは、そのためです。逆に、冬の大三角の残り 二つの白い星、プロキオンとシリウスはまだまだ若い段階にある星となります ね。このふたつの星は見た目の色が似ていますが、肉眼でもわかるほどに明るさ が違います。プロキオンはベテルギウスとほぼ同じの0.4等星ですが、シリウス はなんと-1.5等星という明るさになります。明るさを表すのにマイナスが付くと なんだか暗いようなイメージを持ちますが、実際はその逆で、とても明るい星で す。シリウスは全天で一番明るい恒星で、シリウス以上の明るさの天体は惑星や 月、太陽しかありません。シリウスという名の由来も「焼き焦がすもの」「光り 輝くもの」であり、大昔の人々も強烈な印象を受けていたことが想像できますね。 天体望遠鏡や双眼鏡、肉眼で星を見ることはとても楽しいことです。ですが、 「見る」だけが楽しみのすべてではなく、今このコラムを読むように「知る」と いう楽しみ方もあります。神話にはひとつの星座に全く別の物語があることもあ ります。科学・技術の向上や新発見によって定説が覆ることもあります。それら を知ることで、次に星を見るときには違った視点で楽しむことができるでしょ う。また、知ったことを家族やこども、恋人に「話す」ことも星の楽しみ方のひ とつだと思います。 2016年は、3月9日の部分日食や5月31日の火星接近といった天体現象がありま す。ぜひ、色々な楽しみ方で楽しんでみてください。きっと、新たな楽しみとの 出会いが、あなたの世界を大きく広げてくれることでしょう。 北澤 竜弥 東京未来大学 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」