★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [4]【コラム】「月愛づる秋」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 立秋からあと少しで一か月。最近はだいぶ秋らしくなってきました。皆さんに とって、秋はなんの季節でしょう?運動?読書?それとも食欲でしょうか?秋は 星空を眺めるにもいい季節。とりわけ月を見るのに適した季節と言えそうです。 そう、実は月の“旬”は秋なのです。 日本では、秋の月が最も美しいとされてきました。特に旧暦八月(旧暦では七~ 九月が秋です)十五日の月は、中秋の名月と呼ばれ、古くからお月見の行事が行 われてきました。  「秋はただ 今宵一夜の 名なりけり 同じ雲居に 月はすめども」 これは西行が詠んだ歌ですが、中秋の名月ただ一夜のみが秋の名に値すると彼は 言います。ススキに月見団子をお供えして…月を眺めながらのんびり過ごすのも いいですね。 では、なぜ秋の月は美しいのでしょうか? まずお月見は旧暦八月十五日の月、すなわち満月前後の月を見ることになります (旧暦は月の満ち欠けで日を数え、新月が朔日=一日です)。あまり欠けていな い、円に近い月が美しいというのはわかる気がしますね。満月は、夏は空高くま で昇らず、色も赤みがかってどんよりとしてしまいます。逆に冬は空高く昇り、 色も白っぽく、凍てついたような輝きを放ちます。春と秋が空に昇る高さ的には ちょうどいいのですが、春は天気が不安定で、黄砂などの影響もあって空が霞み 朧月になってしまいがちです。秋は「天高く馬肥ゆる」と言われるようにスッキ リと晴れることが多く、そのために秋の(満月前後の)月が美しいとされたので しょう。 ところが日本には、旧暦九月十三日の月を愛でる風習もあります。「後の月」と も言われますが、十三夜ですからお世辞にも真ん丸とは言えません。十三夜のお 月見を始めたのは宇多天皇とも醍醐天皇とも言われていますが、その心持ちはい かに…?さらに、有名な随筆『枕草子』で筆者の清少納言は「月は、有明の東の 山ぎはに、細くて出づるほど、いとあはれなり。」と書いています。…月を愛で るポイントも人それぞれといったところでしょうか(笑) 今年2017年の中秋の名月は10月4日、後の月は11月1日です。そして今夜は満月。 仕事を終え帰る頃には、頭の上で煌々と月があなたを照らしているはずです。 (晴れれば!)満月を見ながら、自分はどんな形の月が好きかなぁ、なんて考え てみるのもいいかもしれません。そして次の満月まで、欠けては満ちる月の輝き を追いかけてみてください。 塚田 健 平塚市博物館 / 天文学普及プロジェクト「天プラ」