★☆★☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆・‥‥━━━☆★☆ [6]【コラム】「秋の星空の味わい」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★☆★☆ 秋も深まってきました。先日は木枯らしも吹き、いよいよ冬の到来も目前となっ た11月。夏の主役たちがだんだんと西の空へと傾き、冬のきらびやかな星たちが 東の地平から登場するまでのひととき、夜空は秋の星座たちのものとなります。 秋の星空は大人のためのものと言って良いでしょう(自分が大人だから)。目立 つ星も少なく、全体的に地味な印象を拭えません。しかし、だからこそ、あなた の夜空を味わう力が試される季節でもあります。参考になるかは分かりません が、私なりの秋の星空の味わい方を少しご紹介しましょう。 今晩、夜空を見上げてまず目に入るのは満月でしょう。この満月からずっと視線 を上げていって、頭の真上に近いあたり。このあたりが秋の星座たちの領域にな ります。確かに明るく目立つ星はないのですが、それでもよく目を凝らして見れ ば、いくつかの星が見えてくるかもしれません。もし大きな四角形の形に星が並 んでいるのを見つけられたならば、それこそが秋の星座たちの目当てである秋の 四辺形と呼ばれる形です。 天馬ペガススの胴体を成しているこの4つの星は、北西側の星から時計回りに シェアト、マルカブ、アルゲニブ、そしてアルフェラッツと呼ばれています。そ んなこじゃれた名前なんて覚えられない!という人は、馬の「すね」、「背」、 「腹」(諸説あり)、「へそ」と覚えておけば、きっと身近に感じられりこと請 け合いです。カルビ、みたいなものです。 さて、これらの星々はひとつひとつ距離が違います。シェアトは200光年、マル カブは130光年、アルゲニブは400光年、そしてアルフェラッツは100光年先に浮 かぶ星々です。それぞれの距離は、それぞれの星から光が届く時間に相当しま す。つまり、今晩見上げている星の光は、それぞれ200年前、130年前、400年 前、そして100年前に出たものが同時に、空を見上げている私たちに届いている のです。 夜空に輝く星たちの光は、ひとつひとつ違う時代から来ている。頭では理解でき ても、感覚としてはなかなか納得できない感覚です。でも、それぞれが旅してき た時間を思い、改めて夜空を見上げてみれば、きっと感じ方も違うはず。夜空に 見える星たちも、明るく輝く月も、そして東京の街も大きな時間の流れの一瞬に 過ぎない。ため息が出そうです。 スカイデッキから眺める、満月が東京の街の灯りを下に従え、静かに夜空に浮か び上がる様は、当代一の眺め。世界でも東京だけにある眺め、しかもおそらくは 現在だけの眺め(将来は外に灯りを漏らすようなもったいない電気の使われ方は 減っていくと思うので)。この貴重な一瞬を味わいに、皆さんも六本木天文クラ ブに遊びに来ませんか? 高梨 直紘 天文学普及プロジェクト「天プラ」