2009年8月18日

「君が天文学者になる 4 日間 at 姫路」 1 日目 観測

引き続き、1 日目の夜の観測の様子です。

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観測のトップバッターは、真っ先にプロポーザルを提出した A 班。
惑星状星雲の分光観測です。

「君天」で分光器が導入されるのは 2 期以来 9 年ぶり。
そのために、秋澤さんを中心に調整をしてきました。
僕自身、分光観測をしたことはほとんどないので、正直だいぶ緊張です。

まずはこと座のリング星雲 M57 から。
M57 は視直径が大きい分淡く、かなり長時間の露出が必要になります。

また、惑星状星雲のスペクトルは線スペクトル。
それぞれの輝線のフラックス(※1)を求めるのであれば、
もっとも強く出ている輝線に合わせて露出時間を決定しないと、サチってしまいます。
とはいえ、そうすると弱い輝線の S/N 比(※2)が足りないという・・・ジレンマです。
今回、分光器用に用意した冷却 CCD カメラは階調が少なく、38,000 カウント程度で飽和してしまいます。
結構、シビアな観測なのです。

M57 の露出時間は 15 分間。
その間は、光をいっさい出せません(携帯をいじれない)し、観測室内の移動も好ましくありません。
もちろんしゃべるのは OK ですが。
というわけで、高校生たちは(スタッフも?)思い思いに寝転がり、おしゃべりモード。
長い露出時間なので寝てしまう高校生いましたが・・・(笑)

M57 のつぎは、りゅう座のキャッツアイ星雲 NGC6543 です。
積分等級が M57 とほぼ同じにもかかわらず、視直径は M57 の半分以下。
ということは、単位面積あたりのフラックスは M57 よりも多い、ということです。
当然、露出時間は短くなって 5 分間。
無事に撮像することができました。

その後、フラット(※3)やダーク(※4)を撮って終了です。
おつかれさま☆

A 班はその後すぐ寝て、早起きして解析をするそうです。

※1:フラックス
 → 光の量のこと。

※2:S/N 比
 → Signal / Noise Ratioの略。 天体からの信号が、ノイズに対してどれくらい強いかを表わす。

※3:フラット
 → CCD カメラの感度ムラを補正するための画像。

※4:ダーク
 → 熱ノイズを取り除くための画像。シャッターを開けずに撮る。

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続いて観測するのは C 班。
ターゲットは散開星団です。

彼らは分光せず、撮像観測だけということで、
90cm 反射望遠鏡につけていた分光器を取り外し、撮像用の冷却 CCD カメラに付け替えます。

見かけ上、密集して見える散開星団と散らばっている散開星団の性質に違いがあるのかを調べたい、
ということで、まずは密集している散開星団 NGC7510 を三色(B、V、R)で撮像。

つづいて散らばっている散開星団 King 115 を同じく三色で撮像です。
King 115 は、90cm の視野では収まりきれないため、視野を動かしつつ、3 回に分けての撮像です。

その後、測光表準星(※5)も撮像。

やっぱり撮像観測は簡単でいい!(笑)

こちらも無事に観測が終わりました。

※5:測光標準星
 → すでにフラックスと等級の関係がわかっている、明るさの基準となる恒星。

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空は薄明がはじまりつつあり、細い月と金星がならんで輝いているのが印象的でした。
さて、僕はこれから帰宅です。
居眠り運転、注意!!(笑)

投稿者 KEN : 05:40 | 星の子たより | コメント (183) | トラックバック (136)

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