2006年1月22日

ALOS「だいち」の広報  --宇宙と夢

JAXAの陸域観測衛星 ALOS、愛称「だいち」が1月23日に打ち上げ予定です。ウェブページによると、「だいち」の仕事は高分解能の地図を作り、資源探査や災害状況の把握などを行うということだそうです。先日NASAの冥王星探査機 New Horizons が無事打ち上がったばかりですが、「だいち」も無事上がって欲しいものです。2月には私の周囲にも関わっている人の多い赤外線天文衛星 Astro-F の打ち上げも予定されていますから。

さてこの「だいち」、注目すべきはその広報体制です。JAXAのパートナー企業としてかの有名な電通と、Space Films社が参加し、さらに「キャンペーンサポーター」としてFOMAで打ち上げ映像を配信する NTTドコモ、JAXAロゴ入り G-Shock を作ったCASIO、種子島に打ち上げ見学ツアーを検討するJTB、光ファイバコンテンツとして打ち上げ中継をする東京電力、さらに日本ユネスコ協会連盟が加わるとのことです。(→プレスリリース) さらには goo に特設サイト 「ALOS(だいち)ミッションキャンペーン」が動いています。気象予報士の森田さんとか松本零士さんとか宇宙好きらしい m-flo のお二人とかだけでなく、明石家さんま辰巳琢郎CWニコル阿藤快生島ヒロシ、とてもたくさんの人からメッセージを取ってきて掲載しているようです。(→サポーター紹介)そのほかにも、プロモーションムービーがあったりJAXA関連グッズを売っていたり、ミッションチームのインタビューがあったりと相当充実した内容です。

日本でこれほどまでに大規模な広報キャンペーンが張られた宇宙ミッションがあったでしょうか。ひまわり6号の打ち上げ成功は記憶の彼方、なぜか失敗のイメージだけが残っている宇宙開発の現状をなんとか打開するための策なのかもしれませんね。

しかし、やはりこれだけの企業の協力が得られるというのは、実利とともに「間接的ではあれ、宇宙開発に協力した」ということがプラスのイメージにつながる、ということもあるのでしょう。民間宇宙旅行も実現への道を辿っていますが、宇宙はまだやはり「夢」が感じられるところなのだと思います。天文学についても同じような夢を感じられる、そこをうまく引き出して普及活動をしていくのがよいのでしょうね。

宇宙開発は実用的な面がかなりありますが、それでもバイオやナノテクなどに比べればまだまだ基盤研究が大きなウェイトを占めるでしょう。そんな分野に力を入れることは、もちろん将来の宇宙産業を視野に入れることとともに、たくさんの人を「育てる」という意味があるのだと思います。宇宙や生命など、いわゆる「理科」の分野に興味を持つ子どもはとてもたくさんいます。天文学も生命科学も宇宙開発も、その面白さを子どもに伝えることの意味は、その分野の直接的な後継者を育てるだけでなく、政府の言葉を借りれば「科学技術立国」を支えていく人材を育てる、という役割が大きいのでしょう。国立天文台の観望会に来てくれた子が、あるいは「だいち」打ち上げの中継を見た子が、「これスゲー」と思って科学技術に興味を持って大きくなって次世代携帯電話や次世代テレビを開発してみるとか、そういうことだってありうるかもしれないでしょうし、それはそれで観望会もよい役割を果たした、といえるでしょう。そういう意味で、『天文教育では天文学をみっちりと習得させなければならない』とか『トイレットペーパーに星の一生を書いたところで天文教育につながらない』とかという行き過ぎた強迫観念にとらわれる必要は全くないわけです。科学全体の面白さを伝えていくための、ひとつの有効な手段が天文普及である。私はそんなイメージを持っています。

投稿者 平松正顕 : 23:54 | hiramatsu log

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