2011年6月5日
六本木ヒルズで講演会
天プラでは六本木ヒルズに協力する形で、2009年6月から『六本木天文クラブ』の運営を手伝ってきました。講演会や森タワー屋上で手の天体観望会など、オリジナリティのある活動をやってきました。立ち上げ時には僕は台湾にいてブログで宣伝するくらいしかお手伝いすることができなかったのですが、帰国もしたことですしこれからはどんどん協力していきます。
というわけで、下記の通り、六本木ヒルズ内のアカデミーヒルズで天文講演会をやります。まだ参加枠には余裕があるようなので、皆様お誘いあわせの上ご参加くださいませ。
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六本木天文クラブ セミナー
『太陽系のルーツを求めて 〜暗黒星雲の先にある未知の宇宙〜』
2011年06月09日 (木) 19:00〜20:30
申込は上記リンクから。
夜空に輝く星々の中に、地球のような惑星を宿す星はあるのでしょうか?
近年、太陽のような星のまわりを回る惑星(太陽系外惑星)の探査や、今まさに生まれつつある星や惑星系の研究が活発に行われています。その結果、太陽系とは似ても似つかない惑星系が多く見つかってきました。私たちの太陽系は、どうして今のような姿をしているのでしょう?
いろいろな星や惑星系の産み分けはどのように行われているのでしょう?今、星たちの生まれる場所、暗黒星雲を詳しく観測してその謎に迫ろうとする試みが進められています。
暗黒星雲とは、宇宙に漂うガスと塵が集まっているところ。およそ-260℃という極低温の宇宙の雲の中で星や惑星が作られていくのですが、その低温のために暗黒星雲は光を出すことができず、宇宙にぽっかり空いた穴のように見えることもあります。その中を見通すことができるのが、電波望遠鏡。
暗黒星雲からやってくる電波をとらえ、詳しく調べることで星や惑星の誕生の様子がわかります。
そしてその歩みを大きく前進させるのが、現在チリに建設中のALMA(アルマ)望遠鏡。国際協力で進むこのALMAプロジェクトによって、「私たちはどこから来たのか」という永年の謎に解決の糸口が見つかるかもしれません。
今回の六本木天文クラブセミナーでは、電波天文学という切り口から、星たちの間に広がる暗黒の夜空に、私たちのルーツを探ります。
スピーカー
平松正顕 (ひらまつ・まさあき)
自然科学研究機構 国立天文台ALMA推進室 助教
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投稿者 平松正顕 : 22:19
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2011年5月29日
ご挨拶:帰国してます。
気付けば今年はまだブログを書いていないという大変なご無沙汰になってしまいました。
2008年4月より台湾・中央研究院天文及天文物理研究所でポスドク研究員として働いていましたが、この度帰国しまして、2011年3月1日より、国立天文台ALMA推進室助教(電波広報担当)として仕事をしています。大学院時代5年間お世話になったALMA推進室に戻ってくることができました。
台湾での3年間はとても良い経験ができたと思います。海外の研究機関・研究者の仕事の進め方に触れることができ、また友人もたくさんできたことは今後いろんなところで活きてくると思います。特に僕が勤めていた中央研究院天文及天文物理研究所(ASIAA)は国際色豊かな研究所で、台湾人研究者の大半は海外の大学院で学位を取った人たちだし、海外出身の研究者もたくさんいます。前者については、天文で学位(博士号)を取れるところが台湾内にあまりなかったということの裏返しではあるのですが、そういう方たちがいるおかげで欧米の研究機関・研究者との活発な交流が実現していたわけです。日本でも海外の研究者にとって魅力的な研究所づくりを、ということがよく言われていますが、working languageが英語であるASIAAは事務の方々もみんな英語できますし、研究連絡も事務連絡も全て英語。家探しや諸々の手続きについてもかなり手厚いサポートが得られるので、とても助かりました。非アルファベット文化圏は特に欧米の方たちにとって言語の障壁が大きいので、このサポートはとても重要だなと感じます。
さて日本に帰ってからの仕事ですが、間もなく科学観測が始まるALMA望遠鏡、および電波天文学の広報が主な任務です。ウェブページの更新、講演会などの企画の実施、取材対応、その他もろもろやってます。これまでtenpla、国立天文台三鷹の天体観望会、科学技術館科学ライブショーユニバースなどで「天文学をたくさんの方と楽しむ」活動を学生時代からいろいろとやってきましたが、それらの経験や人脈を活かしつつ新しいステージでの活動の幅を広げていきたいと思っています。講演会やサイエンスカフェのご依頼、イベントのご相談などありましたら hiramatsu.masaaki あっとまーく nao.ac.jp までお気軽にお寄せください。
これからも面白い話題、面白い企画をどんどんやっていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
投稿者 平松正顕 : 16:23
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2010年12月23日
ALMAを超えるALMA
宇宙をテーマにした音楽というのはそんなに珍しくないですが、望遠鏡そのものずばりの名前を冠した曲はそんなになかったのではないでしょうか。そんなところに、今年9月に『ALMA』という曲をリリースしたACIDMANはすごい。
もう何度もこのブログで紹介していますが、ALMAというのは日本と台湾、北米・欧州の国際協力でチリに建設中の電波望遠鏡です。僕もこの8月から10月まで2ヶ月間望遠鏡の調整のために出張してきました。
で、その出張中、ALMAのコントロールルームにいるときに、現地に赴任されている日本人研究者の方と話をしていていびっくり。「ALMAというタイトルのCDを出すアーティストがいる」と。公開されたCDジャケットには確かにALMAの日本製造担当分のパラボラアンテナがしっかりと写っています。何でも実際ALMAサイトまでやってきてプロモーションビデオを撮っていったとか。発売は9月で、その前後にはテレビにもたくさん出て、番組によってはそのPVのロケ風景なんかも紹介されていたようです。僕も台湾に戻って来てから、NHKワールドプレミアムで一度その放送を見ました。ずらりと並んだALMAのパラボラアンテナの写真が音楽番組に出てるのはとても不思議な感じ。
プロモーションビデオは、EMIのページで見ることができます。冒頭からALMAのアンテナ(三菱電機製)が登場。白い平原はボリビアのウユニ塩湖だそうでこれはALMAの建設エリアとは別の場所ですが、それ以外の部分ではALMAのアンテナが随所に出てきます。パラボラが1台だけ動いているシーンは、標高3000mのOperation Support Facilityと呼ばれるALMAの施設の中の日本のアンテナ組み立てエリアでの撮影のようです。ヨーロッパアンテナ組み立てエリアの写真は9月23日の記事に載せてありますが、日本のエリアはこの写真のすぐ右側です。さらにPVの2分43秒以降には、標高5000mに設置された7台のパラボラアンテナも出てきます。砂埃が待っているのでわかるとおり、このサイトでは強風が吹くことが時々あります。アンテナを倒して低い姿勢にしてるのは、たぶん強風からアンテナを守るためのサバイバルモード。撮影もきっと大変だったことでしょうね。
この曲のタイトルは、EMIのウェブサイトでは次のように紹介されています。
楽曲タイトルの「ALMA」(アルマ)とは、東アジア(日本が主導)・北米・ヨーロッパ・チリの諸国が協力して、チリ北部のアンデス山中標高約5000メートルにあるアタカマ高地に建設中のパラボラアンテナ66台からなる電波望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計:Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)の略称で、チリの公用語であるスペイン語で「こころ」「たましい」を意味します (国立天文台 ALMA望遠鏡 ホームページ参照 http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/)。
「ALMA」のミュージック・クリップは、Vo.&G.オオキノブオが、実際にチリ・アタカマ高地に行き、国立天文台の全面協力を受け、ALMA望遠鏡のもとで撮影を敢行しました。また、ボリビアにある塩の湖・ウユニ塩湖でもロケを行い、楽曲の世界観を見事に表現した壮大で美しい作品が完成しました!!
音楽系のウェブニュースサイトの記事もこの文章をもとにして書かれているようで(例えば、CDJournalの記事)、『ALMA電波望遠鏡』という文字列が相当多くの方の目に触れたんではないかと思います。さらに、シングルCDのみならずアルバムのタイトルも"ALMA"、ツアータイトルも"ALMA"、さらにPVの撮影風景を収めたDVDのタイトルも『scene of “ALMA”〜オオキノブオ チリ&ボリビア紀行〜』。もうALMAだらけ。
僕の友人からは「国立天文台からプロモーションかけたのか?」という質問のメールが来たりしましたが、話によれば(僕は国立天文台の人間ではないので・・・)、むしろACIDMANの側から興味を持ってアプローチしてきたとか。きれいな写真が撮れる光学望遠鏡ではなく電波望遠鏡、しかもまだ建設中のALMAに興味を持ってもらえたのはとてもラッキーで嬉しいことです。
不況や財政難もあって科学の意義や役割が問われることの多い昨今、直接明日の生活を物質的に豊かにするような科学や技術はもちろん大事なんですが、インスパイアされて曲が作られてそれが多くの人に聞かれるとか、そういう方向での科学の果実の還元ももっとあっていいよなと思う、今回のACIDMANの新曲でした。
投稿者 平松正顕 : 22:37
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2010年6月21日
はやぶさ・イカロス 海外での反応
先日のブログエントリに続いて、「はやぶさ」の海外での反応についてまとめようと思います。せっかく日本の外にいますので。
帰還数日後、台湾のテレビ局東森新聞台(ETTV)で、30分以上にわたって「はやぶさ」の帰還と、つい先日金星探査機「あかつき」と一緒に打ち上げられたソーラー電力セイル実証衛星「イカロス」についての番組が放送されていました。たまたまつけたテレビで見つけ、途中から見ていました。中国語が聞き取れなくても中国語字幕はなんとなく意味がつかめるのがよいところ。動画は星コンスタッフブログにまとめられているようです。この番組は一人の司会者が数人の専門家に話を聞く形式だったわけですが、JAXAやNHKのCGを使いながら「はやぶさ」「イカロス」に使われた技術や「はやぶさ」のイトカワ探査の意義(地球接近小惑星への対処)などが取り上げられていました。この番組、実は前にも見たことがあるのですが、怪しい番組だなぁ、という印象しかなかったのです。電波望遠鏡で暗黒物質を観測するとか(たぶん暗黒物質と暗黒星雲を取り違えてる)、暗黒物質が地球と太陽の間に入ってきて地球が寒冷化するとか、そういう怪しいことをしゃべってる「専門家」が出てたので。そんなこと言ってるのは特定の人なんですが、今回はその人はスタジオにいなかったのが良かったのかもしれません(笑)。とにかく、こんなに時間を割いて放送してくれるなんてすばらしいことです。
台湾の新聞もいくつか取り上げていました。例によって漢字から意味を推測するくらいですが。
燃燒火鳳凰「隼號」太空船成功返地球 激發日人熱情
日無人太空船隼鳥號著陸 解宇宙之謎
アメリカ惑星協会も、「はやぶさ」「イカロス」を大きく取り上げています。今日現在惑星協会のトップページには "Welcome Home Hayabusa!" の文字が躍っていますし、協会の代表であるLouis D. Friedman氏も"The Hayabusa Adventure"として称賛の文章を寄せています(6月23日追記:松浦晋也さんのブログにて、日本語訳が公開されています。『松浦晋也のL/D 惑星協会フリードマン博士の文章を翻訳しました』)。「はやぶさ」「イカロス」について多くの記事をブログに書いているエミリーさんもAmigurumi を作ったりなんかして。
また、惑星協会のポッドキャスト、Planetary Radioでも「はやぶさ」「イカロス」が大きく取り上げられています。帰還前の6月6日配信分でも、「はやぶさ」の最終軌道修正が終了したということに言及されています。また「イカロス」の帆の展開を見にJAXAを訪れたFriedman代表の(成田空港のラウンジからの)インタビューもあります。「企業と学生とプロフェッショナルの協力が素晴らしい」「政府機関と産業界の協力が非常にうまくいっている。アメリカでも同様の協力がこれからより盛んになるだろう。」「(惑星協会が構想するソーラーセイル計画に対して)技術的にもお互いに学ぶところがある。」そして「(金星探査機「あかつき」も含め)3つのエキサイティングな惑星間ミッションを400人のJAXAでやってるのがすごい」との称賛ぶりです(JAXAのウェブサイト見ると職員数1600人となってるので、ここは何かの勘違いのようです。これらのミッションを担当している宇宙科学研究所は職員数300人くらいだそうなので、それと混同してるのかもしれません。いずれにしても、それくらいの人数の部署でやってるというのは変わりませんが)。また、新代表に選出されたBill Nye氏は、つい最近民間企業初のロケット打ち上げを成功させたスペースX社のFalcon 9と日本のソーラーセイル実証機「イカロス」の2つが、宇宙に行き宇宙を航行する新たな道を提供するマイルストーンである、と述べています。
また、「はやぶさ」帰還直後6月13日(アメリカ時間)配信分では、帰還成功とNASA DC-8から空撮されたようすを伝え、また日本での盛り上がりの様子も関心を呼んでいるようで、とてもemotional (感情的)で、漫画や動画など uniquely Japanese way(日本独特の方法)で一般に浸透した、と評されています。Bill Nye新代表は「はやぶさ」帰還を"Cool!!"を連発して称えています。
「はやぶさ」もそうなのですが、「イカロス」への惑星協会の注目度が高いのは理由があります。それは彼らもソーラーセイルを実現しようと頑張ってきたから。2006年8月27日、国際天文学連合の総会@プラハで惑星の定義が採択された直後のPlanetary Radioでも、惑星協会の会員募集の中でアポロ11号の飛行士バズ・オルドリン氏が惑星協会のミッションを語るなかで、「世界初のソーラーセイルを作ります。」と言っています。実際これまで試験機を2回打ち上げていますが、いずれもロケットの不具合でソーラーセイルの実験をする前に失敗。そんな中、日本から打ち上げられた実証機が宇宙で帆を広げたというのは、彼らにとっても見逃せないニュースなのでしょう。Bill Nye氏が言っているように、「宇宙開発と言えばNASAの独壇場」という時代ではなく、Space Xのような民間企業や日本をはじめとするアジアの国々も力をつけてきているというのが彼らにも如実に感じられる1週間だったということでしょう。
そして海外だけじゃない、日本のすばらしいまとめ記事 by アスキー。注目が集まっている今だからこそ受け入れられる濃く深い内容かもしれませんが、断片的な情報じゃなくてこれまでとこれからをきちんとまとめられた記事が今絶対に必要ですね。
投稿者 平松正顕 : 22:16
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2010年6月16日
はやぶさ帰還!
小惑星イトカワへの7年にわたる長い旅路を終えて、探査機「はやぶさ」が地球に帰還しましたね。テレビや新聞、ネットでも大きく報道されているようですが、台湾からもネット中継で「その瞬間」を目にすることができました。予想以上に明るく長く輝きながら散っていく「はやぶさ」本体と、そのすぐ前を飛ぶサンプル回収カプセルの映像は、とても素晴らしかったです。カプセルも無事回収され、間もなく日本に移送されるそうで、それも素晴らしいことです。「はやぶさ」は設計より長い時間を宇宙で過ごすことになったわけで、パラシュートが開かず地面に激突したNASAの太陽風サンプルリターンミッション ジェネシスのようになりはしないかとひそかに心配してました。本当に無事でよかった。
ここには、NASAが飛行機から撮影した「はやぶさ」大気圏再突入の映像を転載しておきます。
現地から中継してくださったLIVE! UNIVERSE/和歌山大学の皆さんの動画はこちら。明るく空を照らすはやぶさがきれいに映っています。NHKニュースの映像はNASAのよりも高精細でより素晴らしいです。この映像はそのうち消えてしまうのかもしれませんが・・・。
もういろんなところで報道されたりブログに書かれたりしていますが、幾多の苦難を乗り越えた
「はやぶさ」(とそれを支えたスタッフ)に対して、ちょっと他では見られないくらいの盛り上がりが生まれています。擬人化された漫画や動画が作られ、それがまた次の波を呼び寄せるという形で大きく広がったようです。一方で、こういった盛り上がりは「はやぶさ」ミッションそれだけを考えた場合には付加的な「物語」ではあるわけで、これで盛り上がることに不安や不快感を抱く方も少なくはないようです。僕としては、物語的な付加価値が興味の入口になってもいいとは思います。ただしその付加価値だけが大きく取り上げられると、それこそ本末転倒になってしまいます。今回の件ではやぶさや宇宙探査に興味を持ってくれる人は増えたと思うので、それを今後どう活かしていくかを考えなくてはいけません。まずは、はやぶさの位置づけをきちんと伝えることが重要だと思います。イオンエンジン長時間稼働やイトカワ周辺での自律航行は、次世代の本格的探査機のための実験であって、準備段階に過ぎないのです。「はやぶさ」はMUSES (Mu Space Engineering Spacecraft)というコードネームが示す通りそもそも技術試験機なので、今回起きた様々なトラブルを回避できるような次世代機を作って運用することが重要なわけです。ハレー彗星を接近観測した「さきがけ」・「すいせい」、目的地・火星にたどり着けなかった「のぞみ」、そして今回の「はやぶさ」と、惑星間航行についてはトラブル対応も含め経験が蓄積されています。金星に向かってる「あかつき」と計画中の「はやぶさ2」、その後に続くであろう探査機にこの貴重な経験は活かされなくてはいけません。
それはそれとして、この一連の盛り上がりのプロセス、ぜひ科学技術社会論とか文化論あたりの研究をしている方にはぜひその視点からまとめてみてもらいたいんですよね。どなたか院生の方、修士論文や博士論文のテーマにいかがでしょう。
さて今回の劇的な帰還とそれに伴う盛り上がりが、社会にもいろいろな影響を与えているようです。今日は参議院本会議で「はやぶさ」後継機に関する質疑がなされたそうですし、菅首相をはじめとする政治家のみなさんからの発言も相次いでいます。なんだか今まで予算的な問題で進展の乏しかった「はやぶさ2」も、にわかに予算化の可能性がでてきたようです。もちろん国民の意見を聞いて施策を変えていくというのは悪くはないのですが、取ってつけた感が否めません。自民党の谷垣総裁が「仕分けで「はやぶさ2」の予算が切られた」とtwitterでおっしゃってますが、仕分け以前の自民党政権時代からこれは予算化されてなかったじゃないか、というのは多くの方が突っ込んでいるところでありますし、もう少し深いところから戦略を練っていただきたいところです。
「はやぶさ」は技術試験機としても小惑星探査機としても素晴らしい成果を残しましたし、サンプル回収成功ならもっとすごい成果が得られるわけですから、後継機の開発は進めるべきと思います。が、ここまで目立たずとも着実に成果を上げてきた他の衛星もあるし、もっといえば惑星探査以外の分野の研究プロジェクトもあるわけで、そこをどう手当てするかはきちんとした戦略が必要です。税金が元手の研究なので、成果や状況がわかるようきちんと広報することは大事です。でもだからって、目立ってるプロジェクトだから予算をつける、みたいな風潮じゃ早晩行き詰るでしょう。簡単じゃないのはわかるのですが、もうちょっと広い視野で全体を見渡してほしいです、特に政治家の皆さんには。
この記事の中ほどに書いた、「はやぶさ」の意義について。関連するブログ記事を実は一度書いたことがあります。「はやぶさ」がイトカワに着陸し、その後通信が途絶したのが2005年12月8日。その月の終わり(2005年12月29日)にある報道を受けて書いたのが、『失敗と成功 -はやぶさの場合』。 もう5年も前なのでいま読み返すと自分で突っ込みたくなる部分が無きにしも非ずですが、基本的な考え方は今も変わっていません。今回の「はやぶさ」帰還の成功とカプセル回収成功によって、「失敗と成功」を考える最終段階が近づいてきました。カプセルの中にイトカワの試料が入っているかどうか分かるのに数カ月かかるようですが、入っていても入っていなくてもプロジェクト全体を「成功」「失敗」の一言で片づけてしまうのではなく、何がどうだったのかをきちんと見て判断し次につなげていかなくてはいけないと思います。「失敗したから予算削減」「成功したから予算増額」ではなく、その先どういう方向に行きたいのかを意識しないといけないでしょう。政治家や官僚の皆さんも、研究者などの専門家もメディアも見守る非専門家も。その意味でも、「はやぶさ」についてはまだまだ目が離せません。
投稿者 平松正顕 : 00:28
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2010年5月22日
月と金星
昨日、JAXAの種子島宇宙センターから金星探査機「あかつき」と太陽帆船(ソーラーセイル)実証機「イカロス」、それに大学が作った小型衛星4機が無事打ち上げられましたね。中継を見ていましたが、カウントダウンが進むにつれてこちらまで緊張してきてしまいました。「あかつき」が金星に到着するのは半年後だそうですが、無事にたどり着いてたくさんの画像や観測成果でいろんな驚きを届けてほしいものです。
さて、その金星探査機の打ち上げに合わせるかのように、先週日曜日(5月16日)の夕刻に西の空で、月と金星が近づいて見えていました。日本でもお天気の良いところが多かったようでネット上にもいろんな写真が出ていましたが、こちら台湾でもこの日は晴れていて、住んでいるマンションの屋上でこの接近を楽しむことができました。
右上の写真は、300mmの望遠レンズで撮影した月と金星。月の暗い側には、地球照(地球で反射された太陽光が月面を照らしている)もうっすらと写っていて、月面の模様もわかります。うちのマンションから見ると西側は新竹市の市街地に当たるので空が明るく、これ以上露出を延ばすと空の方も明るくなってしまうのでなかなかバランスが難しいところです。一方で月の輝いている部分は露出オーバーになってますが、光ってる部分と暗い部分の境目のあたりには月面の凹凸とクレーターが見えますね。すぐ近くで光っている金星、台湾からではこれ以上月に近づくことはなかったのですが、東南アジアなどでは金星が月に隠される金星食が観測できたようです。
上の写真は、時間を追うごとに変わっていく月と金星の位置関係を追いかけたものです。月が地球を回っている関係で、金星の方が動きが速く月が置いていかれるように見えます。この写真は、『「昨夜の月と金星」 ツイッターにアップされた素晴らしい写真 12選』にも選んでいただきました。写真自体というよりは、写真撮って即座に4枚並べて合成したことがよかったのかもしれません。twitterで転送してくださった皆さんにも感謝です。高解像度版はこちらにおいてあります。クレジットさえ入れていただければ、ご自由にお使いいただいてかまいません。
僕の写真は時間間隔もバラバラで計画性のない撮影だったことがばれてしまうのですが、キッチリ10分間隔で撮影された写真(@kazufukudaさん撮影)もあります。神戸での撮影だそうですが、僕が撮ったのと比べると、同じ時間(僕のは台湾時間表示なので、日本時間にするには1時間プラス)でも月と金星の位置関係が違うことがわかります。実際の宇宙空間で地球から月と金星までの距離が大きく違うことの反映ですね。まあ当たり前のことなんですけど。
その当たり前も、この写真から再考することができます。この二つを比べることで、おおざっぱに月までの距離を計算してみましょう。まず、金星はとっても遠くにあるので台湾から見ても神戸から見ても位置は変わらないということにします。台湾新竹-神戸間はGoogleMapによると1700kmです。そして台湾で19時34分(日本時間20時34分)に撮った写真と神戸で20時30分に撮られた写真を比べてみると、この2地点から見た月の位置のずれはおよそ月の直径(0.5度)の1/3(=0.17度)。これを図にすると下のようになります。これをもとに非常におおざっぱに月と地球の間の距離を求めてみると、170km / sin(0.17度)=57万km。実際の距離は38万kmですので見積もり結果の方がちょっと大きい値になってしまっていますね。実際には神戸-新竹を結ぶ線と地球-月を結ぶ線が直交しないなど、図のような単純化が極端すぎるのがこの違いの理由ですが、まあだいたい数10万kmというくらいの精度ではあってると言えるでしょう。
天体までの距離を決定するということは、天文学では基本の基本です。太陽から数百光年以内の星までの距離は年周視差測定という方法で測りますが、これも上で月までの距離を測ったのと同じ三角測量です。ただし星までの距離は月までの距離よりずっと大きいので、地球の2点から見上げるのでは測ることができません。地球が太陽のまわりを公転するのを利用して、軌道上で太陽のあっち側とこっち側から星を見込む角度の違いを測定することになります。上の図では神戸・台湾間が1700km離れていますが、年周視差を測る場合はこの距離が地球の公転軌道の直径3億kmになるわけです。
今回の月と金星の接近というのは比較的珍しい現象でしたので、天候に恵まれ見て楽しむことができたのはラッキーでした。そしてこうやって距離を求めてみるなどもう一歩踏み込んでみると、見て楽しむのとはちょっと違う、宇宙の奥行きまで感じることのできる機会でもありました。こういう天文イベントを別の視点で見てみるのも、またひとつの楽しみ方と言えるでしょうね。
投稿者 平松正顕 : 22:43
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2010年4月23日
宇宙から見たALMA、其の二
3月31日のエントリで、宇宙飛行士の野口さんが宇宙ステーションから撮影されたALMAの山麓施設の写真を紹介しましたが、野口さんがまたALMA建設地のあたりの写真を撮ってくださってました。こういうのがネットを通じて簡単に手に入るというのはすごいです。
元の写真をちょっと加工させていただいて、近くの村の名前とこの写真に写っている(はずの)望遠鏡の名前と位置を入れてみました(上の写真をクリックすると多少大きくなります。)。この写真に写っているのは横幅70〜80kmくらいの範囲です。左下に広がる白い地域は、アタカマ塩湖。ウユニ塩湖に次いで世界第二の広さの塩湖だそうです。その他は茶色の不毛の大地が広がってますが、左上の緑がかった部分がオアシスの村、サンペドロ・デ・アタカマ。大学院時代に僕が観測のために出張していたときには、この村に宿泊していました。写真中央下には、もう一つのオアシスの村、トコナオが写っています。岩がごろごろしている砂漠地域に突然植生が現れる、なんとも不思議なオアシスたち。砂漠との境界はとてもシャープで、だんだん緑が減って行って砂漠になるのではなく、ある境界線を境に突然緑が失われます。地下水脈とかどうなってるんでしょうね。
上に挙げた場所は標高2500mくらいのところにありますので、もうすでに十分アンデスの高地なのですが、天文観測施設はもっと標高の高い所にあります。写真中央が、ALMAの山麓施設OSF。標高は3000m弱、アンテナのメンテナンスや望遠鏡の運用をここから行います。このOSFから細く右に延びる道を行くと、ALMAをはじめとする様々な望遠鏡が置かれた地域にたどり着きます。このへんが標高5000m。
ここにある望遠鏡をあげてみると。僕が大学院時代にお世話になった国立天文台+大学の協力で運用されているASTE、名古屋大学のNANTEN。ヨーロッパ南天天文台+ドイツのマックスプランク研究所が運用するAPEX、カリフォルニア工科大学他のCBI、プリンストン大学他のACT、東大のTAO。そしてALMAの66台以上のパラボラアンテナ群は、CBIやAPEXがあるあたりの比較的平らな台地に展開されます。ここに挙げたもののうちTAOは赤外線望遠鏡ですが、それ以外は全部電波望遠鏡です。TAOはチャナントール山の山頂、ACTはトコ山の山頂に置かれていて、標高は5500mを超えます。望遠鏡にたどり着くのも命がけ。これも乾燥して天気が良いという条件を追い求めた結果です。
ALMAは、来年から観測をスタートさせます。そのための望遠鏡や受信機の調整などがこの写真に写っている地域で今も続けられています。僕も今年の夏くらいには現地に出張してそれをお手伝いすることになると思います。
ついでにご報告ですが、この4月から台湾のALMA Regional Center (ARC) Astronomerになりました。ARCはALMAでの観測をスムーズに実行するために、ALMAに参加する北米、ヨーロッパ、東アジアにそれぞれ設置され、各地域の天文学者に対する観測提案作成支援、データ解析の支援、チリに出張しての望遠鏡の運用支援などを行います。身分的には年限付き契約のポスドクであることに変わりはありませんが、よりプロジェクト寄りの仕事もしていくことになりました。これまで「夢の天文台」として語られることの多かったALMAですが、もう少しで動き始めることになります。いい成果が出せるようにしっかり準備しなくちゃ。
投稿者 平松正顕 : 23:16
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2010年3月31日
宇宙から見たALMA
国際宇宙ステーション滞在中の野口聡一宇宙飛行士が、チリに建設中の電波天文台ALMAの山麓施設の写真を撮影して、twitterで報告されていました! 赤茶色の不毛な大地に延びる道と白く見える施設群のコントラストが見事です。よくもまあこんなところ天文観測施設を、とさえ思ってしまいます。
この写真に写っているのは、標高2800mほどのところにある山麓施設、Operation Support Facility (OSF) です。ここでは今まさにALMAのための電波望遠鏡(パラボラアンテナ)の建設がおこなわれています。アンテナの口径は12mと7mで、OSFにはいま日本担当分のアンテナが4台、アメリカ担当分が10台以上、ヨーロッパ担当分が1台(→ヨーロッパ南天天文台のプレスリリース)のアンテナがあるはずなのですが、さすがにアンテナ自体はこの宇宙ステーションからの写真では見えないようですね。
ALMA完成後は、望遠鏡本体や搭載装置のメンテナンス、そして望遠鏡の遠隔操作がこのOSFから行われます。60台を超えるパラボラアンテナ群は、この写真で右に延びている道路をずっと行った先の標高5000m地点に展開されます。標高5000mでは空気も薄いので、望遠鏡を作るのもメンテナンスするのも操作するのも極めて困難。なので、多少は標高の低いOSFで多くの作業を行うわけです。
このOSF、Googleマップだとよりくっきりと見えます。こちらはまだOSFの建物が建設中だったころの写真のようであまり目立った構造物がありませんが、まるい敷地がOSFです。その左下にある長方形のところは、各国メーカーが望遠鏡を組み立てて試験をするエリアだと思います。
タイミングのいいことに、日本の国立天文台のALMA推進室のウェブサイトが今日改訂されたようです。 [マルチメディア]の項目には画像もたくさんアップされています。[アルマについて]-[アルマへの旅]では、日本から40時間ほどの長旅を経てチリ・サンティアゴのオフィスやアタカマ高地のALMA山麓施設・山頂施設にたどり着く様子が紹介されています。そのほかいろいろと新コンテンツもあるようなので、いろいろ見てみると面白そうです。
投稿者 平松正顕 : 23:08
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2010年2月24日
天文・ガンダム・占星術@六本木天文クラブ
昨夏より六本木ヒルズに天プラが協力して開催している六本木天文クラブ、おかげさまで好評を頂いています。アカデミーヒルズでの講演会も、森タワー屋上での天体観望会も多くの方にご参加いただきました。観望会の方はトータルで5000人くらいの方に参加していただいたようで、都会のど真ん中でも宇宙を楽しめる、という思いを持って帰っていただけたものと思います。
引き続き3月にも、六本木天文クラブの活動を行います。今回はこれまでとは少し趣が変わって、ゲストによる対談(+晴れたら屋上で天体観望会)という形式になっています。いずれも参加申込が必要です。下記リンク先(アカデミーヒルズ)からどうぞ。
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2010年03月09日(火) 19:00〜20:30
『ガンダム天文入門 〜サイド7ってどこにあったの?スペースコロニーの可能性は?〜』
・スピーカー:
福江 純 (大阪教育大学教授/天文学者)
富野 由悠季 (アニメーション監督/『機動戦士ガンダム』シリーズなど)
福井 晴敏 (作家/『機動戦士ガンダムUC』『亡国のイージス』など)
・受講料:5,000円※東京シティビュー スカイデッキの入場料(1,800円)を含みます。
・場所:六本木ヒルズ森タワー40階 アカデミーヒルズ(東京都港区六本木6-10-1)
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2010年3月12日(金) 19:00〜20:30
『天文学と占星術の不思議な関係』
・スピーカー:
鏡リュウジ (占星術研究家/翻訳家)
渡部潤一 (天文学者/自然科学研究機構国立天文台天文情報センター長)
・受講料:4,000円※東京シティビュー スカイデッキの入場料(1,800円)を含みます。
・場所:六本木ヒルズ森タワー40階 アカデミーヒルズ(東京都港区六本木6-10-1)
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物理学や化学に立脚した現代天文学が宇宙を知る有力な手段であることは言うまでもありませんが、もっと広い意味で宇宙を知る、楽しむ手段は天文学だけではありません。古来より占星術は宇宙と人間の関係を探る試みを続けてきましたし、小説やアニメなど宇宙を楽しむ方法は現在いくらでもあります。というわけで今回の六本木天文クラブは、普通の天文学講座ではなかなかカバーしきれないそのあたりまでカバーすることになりました。是非ご参加ください。
投稿者 平松正顕 : 18:43
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2010年1月20日
2010年、部分日食
ほぼ一ヵ月間ブログをお休みしていましたが、元気にやっております。
昨年末は、建設が進むALMAのユーザー向け会合が東京で開かれたので、研究打ち合わせも兼ねて出張してきました。年末年始は実家でゆっくりと過ごし、1月4日から台湾に戻ってきています。
昨年は懸案だった論文を書きあげて論文誌に投稿できたこと、ハワイのサブミリ波電波干渉計SMAに提出した観測提案が採択され無事に観測できたことで、最低限のノルマはクリアしたかな、という印象でした。今年は昨年観測したデータをきちんと解析して論文にまで持っていき、たまってしまっている他のデータの処理も片づけて、さらに先を見据えて研究を進めていこうと思っています。
写真は、1月15日に起きた部分日食です。昨年7月の日食は沖縄で食分93%の日食を見ることができましたが、今回は今住んでいる新竹市の海岸近くにいって写真を撮ってきました。ちょうど日没時間帯の日食ということで、大学から10kmくらい自転車で走って西側が開けた海(台湾海峡)まで行ってきました。
日食が始まったころはまだある程度高い位置に太陽があったので、太陽観測用のフィルタをつけて写真を撮ったり、日食グラスを使って目で見ていたりしたのですが、時間が経過して太陽が低くなってくると、大気層のおかげでその光も暗くなり、日没前にはフィルタなしでもちゃんと太陽の形を写真に収めることができるようになりました。肉眼でも全くまぶしさを感じないで太陽を見ることができましたし、日没時の日食というのはやはり前景と欠けた太陽が一緒に見えるので、空高い位置での日食とはまた違った趣があります。僕の他にも写真やビデオを撮っている人がいたり、散歩やサイクリングに来ていた人がこの欠けた太陽を眺めていたりして、ほぼ水平線まで雲がなかったことも幸いして多くの人がこの風景を楽しんでいたようです。
去年の日食以来すっかり日食にハマっているのですが、半年後の南太平洋(イースター島あたり)皆既日食にはさすがに行けません。でもいつか皆既日食は見てみたいなぁ、と思う今回の日食でした。
投稿者 平松正顕 : 22:00
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