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2010年11月27日

プラネタリウム×プラネタリウム

研究会「星形成ワークショップ」のために3泊4日で日本に帰国し、きのう台湾に戻ってきました。当然ながら東京は台北より寒かったですが、あのくらいの寒さならむしろ心地よいくらいで、天気が悪くてぬるい台北の冬よりは好きですね。

研究会の前日に東京着、終わった翌日に東京発というあまり余裕のない日程でしたが、表題のとおりプラネタリウムを2件ハシゴしてきました。

ひとつめは、駒場祭に出展された東大地文研天文部のプラネタリウム。僕もこの天文部のOBで、10年前(!!)にプラネタリウムを作ったものです。それまでピンホール式だった恒星投影機からレンズを使った方式に変えるという大きなジャンプに挑んだわけですが、さすがに壁は高く、初年度は満足に投影できないまま(辛うじて1度だけ投影したような記憶)駒場祭が終わってしまいました。その翌年、後輩たちが頑張ってくれて完成し、今年はレンズ式になって(僕らの年を0年目とするならば)10年目。駒場祭3日目は13時半ごろ整理券配布が終了したそうで、僕が羽田から駆け付けた15時ごろには最終上映が始まるころでした。その後、部内向け投影で星空を見せてもらいましたが、安定した星空で円熟の域といってもいいかもしれません。いいものを見せてくれた後輩の皆さん、ありがとう、そしてお疲れさまでした。駒祭後のいわゆる「社会復帰」もしっかりね。

その後研究会に参加し、50分の発表もこなし、有益なコメントと今後の協力の糸口も作れたあと、帰国前に六本木へ。

六本木ヒルズでは、天プラとして以前から「六本木天文クラブ」の運営をお手伝いしていましたが、今回は森アーツセンターで開催されるイベント「スカイプラネタリウム」に協力しています(僕は少しだけの協力ですが、天プラの他のメンバーはかなりガッチリ協力してます。右上のポスターにも「天文学普及プロジェクト 天プラ」の文字がしっかり)。メガスター製作で有名な大平貴之氏が総合プロデュースをされているこの企画。恒星投影機メガスターとデジタル宇宙描画エンジンUNIVIEW、そしてasahi.com読売オンラインでも記事になっている「立体プラネタリウム」から、私たちの宇宙の中での立ち位置を感じ取ることのできる企画です。24日は初日でしたが、平日ということであまり人出はないものかと思ってました。ところがあとからあとから人が流れてきて、思ったより盛況。大平さんによると初日の観覧者は2500人を超えたとか。初日とはいえ平日でこれで、「星」のイメージが街にあふれる冬はこれからで、開催は2月までの長丁場となると総観覧者数も結構大きな数字になりそうです。多くの方に楽しんでいただけるといいなぁと思います。

ネタばれになるとちょっとよくないかもしれないのであまり詳しくレポートは書きませんが(というか、ぜひご自分の目で見ていただきたい)、僕はメガスター部屋が気に入りました。人の流れは途切れないもののそんなに混雑もしてない空間で、メガスターの映し出す素晴らしい星空をゆっくりと存分に堪能できました。「マゼラン雲の隣にあるのは球状星団47 Tuc!」とか「銀河中心方向の黒い筋はパイプ星雲!」とかマニアックな感動をするもよし、びっしりと光の点で埋め尽くされる壁面に思わず近寄って手を伸ばしてしまうもよし、ひととおり星座を探した後でゆっくり動いていく星空をぼーっと眺めるもよし、いろんな楽しみ方で時間を過ごせる空間でした。これまでメガスターは一般向け初公開だった青山、旧五島プラネタリウム、日本科学未来館などで何度か見てきましたが、これほどじっくり堪能できたのは今回が初めてでした。とてもよかった。

思えば10年前、まだメガスターが一般公開されていなかった頃、無謀にもレンズ式恒星投影機の開発に挑んだ僕は、おそれおおくも直接大平さんにメールでいくつか質問を送ったのでした。もう何を聞いたか忘れてしまいましたが、それから時は流れて大平さんプロデュースのスカイプラネタリウムにわずかながら協力でき、それと並行して天文部の後輩たちが頑張って完成させてくれた駒場祭プラネタリウムを見ることもできたのは、巡り巡る縁を感じる日本滞在でした。

最後にもう一度、スカイプラネタリウム、本当におススメです。ぜひ。

投稿者 平松正顕 : 23:19 | 海外出張日記 | コメント (0) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2010_11_27_317.html

2010年10月2日

ALMAの現状を垣間見る

10月になってしまいました。8月21日に台湾を発ってこちらに来てからもう1カ月。早い早い。今はサンチアゴにいますが、来週の金曜日にまた標高3000mのOSFに行って試験観測当番を8日間、それで今回のチリ出張は終わりです。これまでの最長は5週間のチリ出張だったので、2ヶ月の出張なんてどうなるんだろうかと思ってましたが、あっという間です。

日本の国立天文台のALMAウェブサイトには、標高5000mサイトでアンテナが8台になったというニュースが出ています。(山頂のアンテナが8台体制に)。これらは口径12mのパラボラアンテナを持つ電波望遠鏡ですが、このうち1台(右から2番目)が日本が製造を担当したアンテナ、残りはアメリカ製です。日本はこのあともう3台の12mアンテナと12台の7mアンテナを担当していて、12m3台と7m1台は既に3台標高3000m地点で組み上がって性能評価中です。残りの7mアンテナのうち4台は、先日チリに到着したようです。今は山頂には日本のアンテナが少ないですが、まあ早く持って上がればいいってもんでもなくて、組み立て後にきちんと性能を出して問題点をつぶしてから運ぶべきなので、そんなに気にしなくても大丈夫。

こうして次第にモノがそろってきたので、いろいろなところで素晴らしい動画や写真が公開されています。建設前の何もない砂漠もそれはそれで絵になるのですが、現在進行形でデカくて動くモノができてくる様子はまた違った意味でおもしろい。というわけでここでは2つご紹介。

ひとつめは、アメリカ国立電波天文台のALMA Explorer(音が出ます)。ALMAの山麓施設Operation Support Facility、山頂施設 Array Operation Site、それから近くのオアシスの村サンペドロ・デ・アタカマなどが動画にインタビューを交えて紹介されています。英語ですが、映像を見ているだけでも楽しめると思います。数分の動画がたくさんあるのですが、おススメは
・OSFテクニカルビルディング内のコントロールルーム
アンテナを運ぶ巨大なトランスポーター
アンテナ組み立てエリア
ALMAキャンプ(宿舎)
山頂のアンテナ
あたりでしょうか。僕も今はサンチアゴにいますが、山に行くときはこういうところでお仕事をしています。

もうひとつは、チリの新聞社 El Mercurio のサイトにある写真集"El gigantesco observatorio en el norte de Chile"。高解像度のきれいな写真をスライドショー形式で見ることができます。極限環境に立つアンテナ群は壮観です。

12mアンテナが16台そろってその他受信機やデータ処理装置等も準備ができたら初期科学運用が始まります。最初のアンテナが山頂に運ばれたのが2009年12月25日(動画はこちら)。9カ月でアンテナが7台増え、特にここ1カ月ではアンテナ2台が5000mに運ばれるというハイペースになっています。来年中の初期科学運用開始という目標がいよいよ近づいてきています。

投稿者 平松正顕 : 23:10 | 海外出張日記 | コメント (0) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2010_10_2_316.html

2010年9月23日

アンテナとマゼラン雲

先日の天の川に続いて、アタカマで撮影した天体写真をもう一枚ご紹介。前回と同じくALMAのコントロールルームのあるOperation Support Facility(OSF、標高3000m)で撮影した、ヨーロッパ製アンテナと大小マゼラン雲です。ぼんやりと雲のように広がる二つの塊がみえるでしょうか。画面中央、クレーンの上に見えるのが小マゼラン雲、アンテナのすぐ右上に見えるのが大マゼラン雲です。

南天の夜空のハイライトと言えば、南十字とこの大小マゼラン雲でしょうね。この雲のような天体は、マゼランがその世界一周航海の最中に記録したことからその名があります。もちろんこの天体は雲ではなくて、星の大集団=銀河です。その意味では、大小マゼラン銀河と呼んだ方が正確かもしれません。大きさはわれわれの住む銀河系の約1/10、太陽から15万〜20万光年離れたところにある銀河系のお伴の銀河たちです。僕がマゼラン雲を初めて見たのは、2003年に始めてチリに出張して来た時だったと思いますが、その名のとおり雲のようにぼんやりと浮かんでいるのを見つけて感動しました。ホントに雲が浮かんでるように見えるんです。

そしてこの写真。前回と同じく夜シフトのお仕事が始まる前に撮ったので、撮影時刻は現地時間午後9時半くらいだったでしょうか。その時の大マゼラン雲の高度はおよそ10度。こんなに淡い天体がこんなに低い高度でちゃんと写真に写るということが、アタカマの空の素晴らしさを如実に表していると言えます。撮影場所のOSFから見て西の方角には平野にオアシスが点在するため、ところどころに人工の明かりがありますが(と言っても天体写真の邪魔になるほどではまったくないですが)、このマゼラン雲が見える南の方角には人工の明かりがまったくありません。邪魔な明かりもなく、さらに空気が澄んでいるおかげでこの写真が撮れたわけです。

4台見えるアンテナは、上述のとおりヨーロッパの企業連合が製造を担当しているアンテナです。ヨーロッパのアンテナは他の日米のアンテナと異なり、副鏡を支える部分が直線状をしています。例えば以前にブログ記事に日本のアンテナが写っていますが、パラボラの上に突き出している部分が円弧の形をしています。またこのヨーロッパアンテナは熱変形の極めて小さなカーボン素材を多用しています。技術的な困難もあったようですが、それを乗り越えて今は4台がほぼ組み上がった状態になっています。左の塔は、先日も書いたホログラフィータワーのもう1本。タワーの上の明るい星は、エリダヌス座の輝星アケルナルです。オリオン座の隣からずっと南に連なる「エリダヌス川」をかたどった星座の南の端です。もう少し時間がたてば大小マゼラン雲ももう少し高くに上ってくるのですが、いかんせん10時半からの夜シフトの観測当番があったので今回はこれで我慢。我慢というには贅沢な写真かもしれませんけどね。

投稿者 平松正顕 : 12:36 | 海外出張日記 | コメント (2) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2010_9_23_315.html

2010年9月19日

アタカマの天の川

2度目の8日間ALMA OSF滞在を終えて、サンチアゴに戻ってほぼ1週間。書きたいネタはたくさんあるんですが、木曜日はハワイの電波望遠鏡SMAの観測提案締切、今は日本の天文学会の発表準備(チリ出張と重なっていけないので、共同研究者に代理発表をお願いしました)でなかなか(心の)余裕がありませんでした。

先日までのOSF滞在は、夜シフトでした。ALMAの望遠鏡とそれを動かすシステム全体は1日3交代制で休みなくチェックが続けられています。昼シフトは午後3時から午後11時くらいまで、夜シフトは午後10時半から午前6時半くらいまで。この2チームは天文学者からなり、本観測に向けた様々な試験をしています。残りの時間はエンジニアさんたちが技術的問題を解決するための時間です。

で、夕飯食べて夜シフトが始まるまでの時間に撮ったのが、この写真です。撮影機材は、Canon EOS Kiss X3 + Canon EF-S 10-22mmで ISO 3200, 露出60秒。カメラがやってくれるノイズ低減処理だけ行っていて、その後の処理は何もしていません。つまり60秒シャッター開いてるだけでこんな写真が撮れてしまうわけで、最近のデジタル一眼レフカメラはすごい、の一言です。写真撮った後カメラのモニタに表示された画像を見て、そのすごさに暗闇の中一人で笑ってしまいました。

左下、上部が光っている箱のようなものは、アメリカ製のアンテナを組み立てる建屋です。高さは20m以上あるはずです。右側に立っている赤と白の塔は「ホログラフィータワー」とよばれるもの。この先端に電波の発信機が取り付けられていて、組み上がった電波望遠鏡をこの発信機の方向に向けて電波を受信し、鏡面精度を測定します。OSFのはこのためのタワーが2本立っています。天体写真的には邪魔と感じられるかもしれませんが、これもALMAを支える大事な装置。

そして天の川。左下には南十字星と暗黒星雲「石炭袋」。すぐ上にはケンタウルス座のアルファ星とベータ星。写真中央左上の天の川の一番太いところが、天の川銀河の中心です。さそり座といて座も見てとれます。主要な天体の名前と星座線を入れた画像をこちらに用意しました。散開星団や、暗黒星雲「パイプ星雲」まで写っているので自分でもびっくりです。

初回滞在では満月が空にいたので、天の川のような淡い天体の撮影はできなかったのですが、2度目の滞在はちょうど新月近辺だったので、今回のような写真が手軽に撮れました。もう何枚かお見せできる写真があるので、それはまた次の機会に。

投稿者 平松正顕 : 12:16 | 海外出張日記 | コメント (1) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2010_9_19_314.html

2010年9月5日

ALMAサンチアゴオフィス

先日に日記に書いたALMA OSFから下りてきてほぼ一週間になりました。また明日の早朝にサンチアゴを発ってOSFに行き、2度目の滞在8日間が始まります。

ALMAの望遠鏡を実際に動かしての様々な試験は、主にOSFで行われています。天文学者はシフトを組んでOSFに行き、エラーログを見ながらオペレータさんと協力して適切に試験を進めて、データ解析も行います。一方で、OSFシフトでない天文学者はサンチアゴに下りてきて、データ解析の続きや広い視野でみた試験項目の検討、次の試験の準備、そして自分の研究を行います。もちろん休暇も。

ALMAのサンチアゴオフィスはしばらくオフィス街のビルの1フロアを間借りしている状態でしたが、先月(僕がチリに来る直前)新しく恒久的な専用オフィスが完成し、ちょうど引っ越しがおわったところです。このオフィスは、ALMAの欧州パートナーであるヨーロッパ南天天文台(ESO)のサンチアゴオフィスの敷地に内にあります。写真は、正門前から撮った写真。門にはESOのロゴがかかり、その右側にALMAのロゴが掲げられたALMAオフィスがあります。

このESOの敷地はフェンスに囲まれているのですが、写真にも一部写っている通り2m弱四方の天体写真がずらりと並べられています。月や星雲、銀河などさまざま。近寄って見ると、天体名、天体種別、距離、撮影した望遠鏡の名前などが書かれていて教育的。これなら、誰が見ても天文関係の施設だということがわかりますね。

投稿者 平松正顕 : 22:18 | 海外出張日記 | コメント (2) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2010_9_5_313.html

2010年9月1日

チリ出張10日。

先日の記事に書いたように、8月21日に台湾を出発して、香港・ニュージーランドを経由してチリにやってきました。8日間、標高3000mの地点にあるALMA Operation Support Facility(OSF)に滞在して仕事をし、今はサンチアゴに降りてきています。天文学者は8日間のOSF滞在と3週間のサンチアゴ滞在を繰り返すシフトを組んで仕事をし、OSFではまた1日3交代制のシフトが組まれてそれにしたがって仕事をするのです。

僕がこちらでしている望遠鏡の立ち上げ試験(CSV)という仕事に関しては、上記の8月20日の記事をご参照いただければと思いますが、実際に参加してみて、だいぶ現状が把握できました。

標高5000mに運ばれた望遠鏡を標高3000mのOSFにあるコントロールルームから制御して、様々な試験観測がおこなわれています。試験観測と言ってもまだまだ初歩的なもので、例えば低温強風の厳しい環境下でも時間とともに刻々と動いていく天体を電波望遠鏡で高い精度で追尾できるかどうか、あるいはフォーカスのずれは想定通りか(温度によってごくわずかに部品の伸び縮みがあるので、ピント位置が若干ずれる)、天体から放射される電波の強度をきちんと測れているか、実際の観測で行われるような様々なセッティングでの観測を試験してみてトラブルが起きないかどうか、などです。正直言ってまだトラブルはでてきますが、それを早めに出しておいてきちんと対処するというのがこの立ち上げ試験観測の目的でもあるので、コンピュータグループ、アンテナグループなどが粛々と対処を進めています。

立ち上げ試験には様々な項目があるので、それぞれチームを作って担当者を決めて進めていきます。担当が割り振られたら、どのように望遠鏡を操作してその試験項目をチェックするか考えて望遠鏡を動かすプログラムを書き、それをオペレータさんに実行してもらいつつ隣でそれを見守って、ちゃんと期待通りに動いているかどうかチェックします。何かトラブルがあれば原因を探り、ちゃんと試験観測が実行されれば取れたその場で(あるいはサンチアゴに帰ってから)データを解析します。その解析結果から、その試験項目がクリアできているかどうか判断するわけです。そして結果を専用のウェブサイトにまとめ、毎日のOSF-サンチアゴオフィス間のテレビ会議で報告し、その次の試験項目を検討する、という流れになっています。

このテレビ会議が実は曲者。ALMAは東アジア・ヨーロッパ・北米・チリの合同プロジェクトであるため、いろんな国出身の人が集っています。というわけでメンバー(日本人も含めて)が話す英語はそれぞれのお国訛りがあって、もちろん個人的な口調の違いもあって、聞きとりやすい英語と聞きとりにくい英語が入り乱れて一苦労。しかもALMAは専門用語を略語にすることが多くて、これも把握するまでがまた一苦労。頻繁に登場する略語については少しは慣れてきましたが、英語についてはまだまだですね。

写真は、OSFの建物(左)と日本(国立天文台/三菱電機)のアンテナ組み立て評価エリア。どこまでも青い空に、白いアンテナと白い建物がよく映えます。湿度数%の厳しい環境ですが、今まさにALMAが立ちあがっていくという所に参加できるというのは感慨も大きいものです。僕はまた来週月曜日からOSFに8日間滞在して、今度は本格的に仕事をしていくことになっています。

投稿者 平松正顕 : 23:09 | 海外出張日記 | コメント (0) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2010_9_1_312.html

2010年8月20日

チリ出張

またまたごぶさたしてしまいました。
このところ忙しかったのは、表題のとおり、チリ出張に出かけることになっているからです。今週土曜日から2カ月、チリに出張してきます。最後の一週間は、スペイン・カナリア諸島で開催される研究会"The Origin of Stellar Masses"に参加して、ヨーロッパ・アジアを超えて帰ってきます。初の世界一周チケットでの出張です。

2ヶ月もチリに行って何をするか。観測ではありません。このブログでも何度か書いている通り、国際協力のもとで新しい電波天文台ALMAがチリに建設されています。来年の観測開始を目指して建設と調整が急ピッチで進んでいて、その活動に参加するための出張です。

望遠鏡は、工場で作って建設予定地に置けば動く、というものではありません。設計段階から何度も何度も評価試験を繰り返し、そののちにやっと製造。作ったら、ALMAの場合はチリに持っていって再調整。ALMAに使われる口径12mや7mのパラボラアンテナは完成形で持っていくわけにはいかないので、現地でもう一度組み立てる必要があります。製造業者が再組み立てを行い、そこに研究者も加わって評価試験を繰り返し、ALMAの要求する仕様を満たしているかどうかが厳しくチェックされます。このチェックが終わったら、製造業者からALMA観測所に所有権が移動します。この後も、観測所のスタッフがさらに様々なチェックや性能向上のための作業を行い、世界最高性能の電波望遠鏡を実現するための努力が重ねられます。

ALMAは、非常に複雑なシステムです。パラボラアンテナ型の電波望遠鏡、その中に搭載される受信機(デジカメでいえばCCDに相当するようなもの)、たくさんのパラボラアンテナで受信された信号を処理する「相関器」と呼ばれる専用スパコン(再度デジカメで例えるなら画像処理エンジン)、その他もろもろの部品と、それらを制御するソフトウェア。数多くのテストをクリアしてきた個々のコンポーネントはそれぞれの仕様を満たしているはずですが、それを統合してひとつの巨大な電波望遠鏡として稼働させるには、さらにいろいろな作業が必要です。この段階の作業のことを、ALMAではCSV (Commissioning and Science Verification)と呼びます。日本語にすると何でしょうね、「試験運用・科学評価活動」とかでしょうか。チリでは、このCSVに参加します。

現地には、世界中から天文学者が集まってこのCSVを進めています。ALMAのウェブサイトのニュースにあるように、現在建設地の標高5000m地点には、パラボラアンテナが7台あります。これが最終的には66台になるわけで、これからどんどんアンテナと受信機が運び込まれ、まだまだCSVは続きます。

来年、パラボラアンテナと受信機が16台そろった時点で、ALMAは観測を開始する予定です。この時点ですでに世界中にある同種の電波望遠鏡を大きく上回る性能を持っているので、全66台がそろうのを待たずに観測を始めます。来年観測が始まってからもどんどんアンテナと受信機と相関器が追加されていき、観測と並行して新しく来たコンポーネントのCSV活動が行われていく予定になっています。

個人的には、大学院時代に5回チリに行って以来、3年ぶりのチリ渡航です。最初にチリに行った2003年時点では、今アンテナが立っている標高5000m地点にあるのはコンテナハウスがいくつかと、将来ALMAのアンテナが設置される場所を示す小さな木の札でした。それがもうアンテナが7台、そしてあと2年くらいのうちにアンテナが66台に。長い出張で不安もあるのですが、楽しみであるのは間違いありません。

現地に行っても、時間を見つけてこのブログを更新していきたいと思います。よろしくお付き合いくださいませ。

投稿者 平松正顕 : 00:01 | 海外出張日記 | コメント (1) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2010_8_20_311.html

2010年3月21日

野辺山滞在中。

18日より、長野県の国立天文台野辺山宇宙電波観測所に滞在しています。45m電波望遠鏡を使った観測のためです。

18日は東京から中央線・小海線経由で野辺山に来ました。小淵沢で特急あずさを降りた時に雪がちらつき始め、小海線で甲斐小泉、甲斐大泉、清里と標高が高くなっていくにつれて雪も激しくなっていきました。幸いにも18日の夜のうちに雪はやんだようで、19日の午前中から始まった観測には影響ありませんでした。写真は、19日の朝に撮った45m電波望遠鏡。このときはまだ地面が雪におおわれていますが、昼ごろには完全に融けてしまいました。

今回の観測は、昨年末にハワイのサブミリ波干渉計SMAで実行したペルセウス座にある若い星の観測のフォローアップです。宇宙にあるガスが集まって星になるわけですが、そのガスに含まれる様々な分子が放射する電波を観測しています。特定の分子が出す電波を観測できるように、電波望遠鏡をラジオのようにチューニングすることで、密度の高いところを選択的に見ることができたり、ガスの温度や運動の様子を調べることができたりします。SMAの場合は分解能が良いので、今作られつつある星の周囲500天文単位(1天文単位は1億5000万km、冥王星軌道の直径が約80天文単位)の様子を調べましたが、今回はそれより10倍弱大きなスケールでのガスの運動の様子を調べる観測です。これを調べることで、誕生しつつある星の周囲のガスがそのまま星に落下していって星が太っていくのかそうでないのか、などということを知ることができます。実際には宇宙は複雑なのでそう簡単ではないのですが。

とはいえ、昨日から日本中で吹き荒れている春の嵐は野辺山にも届いていて、昨日今日は強風のため観測ができませんでした。写真のとおりドームなどで覆われていない45m望遠鏡は風の影響を受けます。10m/s程度ならあまり問題ないのですが、20m/sを超えるような強風の場合はアンテナを守るために、風の影響を受けにくい位置、つまり天頂に向けて停止させます。僕はこれまで自分の観測と共同研究としての観測で100時間以上この望遠鏡を使ってきましたが、20m/sを超えて観測強制停止というのは今回が初めてでした。残念ですが自然が相手なのでしかたありません。そしてもともとの観測割り当ては明日を残すのみ。予報によれば明日の天候は回復し風は収まるようなので、明日は無事観測できることを祈っています。

投稿者 平松正顕 : 21:09 | 海外出張日記 | コメント (0) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2010_3_21_304.html

2009年6月3日

at McMaster University

"OBSERVING WITH ALMA, A Workshop"のために、カナダ・トロント近郊のマクマスター大学に来ています。3日間のワークショップも今日が最終日です。写真は、会場であるMcMaster UniversityのMichael G. DeGroote Centre for Learning & Discovery。

ALMAの建設は着々と進んでいるようです。最終的にはパラボラアンテナ66台以上が並ぶ電波天文台になりますが、16台ほどそろったところで科学観測がスタートします。Early Scienceと呼ばれるこの段階、観測提案の募集が2010年の終り頃、観測実行は2011年、そしてすべてのアンテナがそろうFull Operationが2012年の終盤にスタートされるという予定。最初の観測提案募集まであと1年半、しっかり準備しましょうね、というわけで今回のワークショップがあるわけです。今回は特に、観測準備や観測で得られたデータの処理をするソフトウェアの説明と実習が主要なテーマになっています。しっかり学んでALMA時代に備えたいと思います。

投稿者 平松正顕 : 20:19 | 海外出張日記 | コメント (1) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2009_6_3_264.html

2009年5月5日

3年ぶりの観測@野辺山

先のエントリに書きましたように、5月3日から国立天文台野辺山宇宙電波観測所に滞在中です。45m望遠鏡を使うのは2006年4月以来3年ぶり。今シーズンから加わった新しい受信機も、昔から使われてる観測装置も使っています。

観測は毎日午前0時(日本時間)から5時間。でも、毎日およそ4分ずつ開始時刻が早くなります。それは、地球が太陽の周りをまわっているので、同じ天体が昇ってくる時間が1日経つごとに約4分ずつ早くなるからです。当然ながら観測天文学は天体の運行にとても深くかかわっているので、観測時間の割り当てにはこのような特殊な時間(地方恒星時:LST)を使っているわけです。

また、電波観測は昼夜関係なく、観測できることも特徴のひとつですね。昼間星が見えないのは、明るい太陽の光が大気中で散乱されて空全体が明るくなってしまうためですが、電波の場合はそのような影響はあまりありません。太陽は強力な電波を出していますが、可視光より波長の長い電波は大気中で散乱されにくいので、電波で見ると昼間でも空は光っていないのです。ただし、ミリ波・サブミリ波と言われるような波長の短い電波では大気そのものが光っているので、ちょっと状況が違います。また、電波観測は曇りの日や雨の日でもできます。悪天候の日でも衛星放送が見られるように、電波は雲を突き抜けてくるからですね。ただしこれも波長に依存していて、波長の長い電波では悪天候の影響は受けにくいのですが、波長の短い電波だと空気中の水蒸気に吸収されてしまうので悪天候時の観測は難しくなります。

今日は雨です。今朝まではさほど天気は悪くなかったので波長の短い電波の観測をしてましたが、今日は天気が悪そうなので、水蒸気の影響を受けない波長の長いほうの電波を観測することになります。

投稿者 平松正顕 : 18:19 | 海外出張日記 | コメント (0) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - http://www.tenpla.net/cgi/hlog/archives/2009_5_5_259.html