2008年10月11日
天文学の役割
先のエントリで「なんで科学をやるのか」ということをもっと考えんとなぁ、と思ったのですが、そんなときに教えてもらった国際シンポジウム。
IAU Symposium 260 "The Role of Astronomy in Society and Culture"
なんともタイムリーなテーマです。うーん、行きたいぞこれ。当ブログにもバナー貼ってありますが、来年は国連・ユネスコ・国際天文学連合(IAU)が定めた世界天文年。ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を空に向けて400年です。オープニングイベントがパリのユネスコ本部で開催されるのですが、それが終わった後同じくユネスコ本部で開かれるのが上にあげたシンポジウムです。同時に開催される Art Exhibition も面白そう。天文学は芸術にも影響を与えてきていますしね。「科学は役に立つ」以外の何か、という意味ではこういう側面、つまり文化そのものを作っていくという面もあるだろうなぁと思うので。
海外出張として認められるかどうかは微妙なので、休み取って行かないとだめかなぁ。来年の有給休暇は5.5日っぽいので、そのうち5日をここに突っ込む計算に。。有給休暇もう少し多くてもいいと思うんですけどねぇ。
投稿者 平松正顕 : 19:39
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2008年10月10日
ノーベル賞とネットと。
2000年から2002年にかけての日本人のノーベル賞連続受賞のときと今回とで決定的に違うのは、とてもたくさんの人がブログという道具を持って自分の感想を世界に発信していること。Googleのブログ検索でこの1週間に書かれた「ノーベル賞」を含むブログを検索してみると、その数16,000。自動生成のスパム的ブログも含まれているのかもしれないけど、まあとにかくたくさんの人が記事を書いています。サイエンスカフェなり講演会なりで参加された皆さんの話を聞くことはあっても、そういう場に来ないたくさんの人たちの考えを見ることができる機会はあまりないので興味深いですね。とくに、単に喜んでいるだけではない意見。これら全部真に受けてると身がもたないのでそんなことしませんが、参考にはするということで。
個人的には科学は面白いし役に立つこともあるし、少なくとも興味を持っておいて損はないと思っていますが、すべての人が科学を好きになるべきと思っているわけではありません。天文学に興味を持たない人にも天文学を伝えたいと僕が思っているのは、食わず嫌いするんじゃなくて、せめて好き嫌いあるいは興味のあるなしを判断できるところまではお互いに歩み寄りたいと思っているからで。天文学や科学を押し売りしたいわけじゃないんです。
というわけでノーベル賞が話題になっている今この時、少なくない数の人の意識が科学に向いているはずです。やはり科学をやっているもの、科学コミュニケーションと呼ばれる事柄に関心があるものとしては、このニーズを逃す手はないでしょう。未来館ではさっそく化学賞ネタの緑色蛍光タンパクの展示が人気を集めてるようですし、僕が日本にいる間に関わっていたところでも対応が検討されています。
素粒子論と宇宙がどう関係しているのか、タンパク質が緑色に光るのはなぜか、そういう研究の中身自体もこの機会にたくさんの人に知ってほしいしその面白さを感じてほしいです。が、やっぱり「なんで科学をやるのか」というとっても根源的なことについて研究者が話をしたり、異分野の研究者あるいは研究者でない人と意見交換したりすることが、中身の説明以上に重要なんだろうなと思いました。緑色蛍光タンパクは、下村さんは最初は実用性がないとお考えであったとはいえ今では広く応用されていて、たとえば癌の研究に使われているそうです。一方、ある意味で「目に見える」成果ではない物理学賞。しかも、稼働したばかりで止まってしまったLHC・あんまりニュースにならない気がする日本の新加速器JPARC・官房長官談話に突然出てきたリニアコライダーと、大きなお金をかけて装置を大型化しないと検証できなくなってきた部分も大きいわけです。これは大望遠鏡を欲する観測天文学にも言えることですし、先日のプラネタリウム廃止問題とも通じるものがあります。説明責任という言葉でくくるのが適切かどうかわかりませんが、このご時世にその研究をやる意義をちゃんと考えたり話したり意見交換したりしないといかんだろうなぁ、というのがいくつかのブログを読んだ僕の感想でした。
たとえば 基礎科学の実が結ぶとは - Intersecting Voice Cafe とか 理論研究って - なぎのねどこ とか。「批判は許さない」と言いたいわけじゃないんですが、『別にそんなことしてくれなくてもいいんだけどね。』とか言われてしまうのはとても残念なので。
そういうわけで、この点について真正面から議論するサイエンスカフェがこの機会に登場することを他人事のように期待したりして。対称性の破れを説明するより難しくて大変だろうと思いますけどね。
投稿者 平松正顕 : 16:01
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2008年10月4日
Large Hadron Rap に負けるな(?)
木曜日、イリノイ大学からいらっしゃったLaird A. Thompson教授と天文研究所の数人で、新竹市街にある「新橋」という日本風焼き肉屋さんに夕飯に行く機会がありました。台湾には「日式」という看板を掲げる飲食店がたくさんあるんですが、本当に日本風かというと???な店もたくさんあります。今回行ったところは"日本度"かなり高めでした。
店内のBGMも日本の音楽でした。ちょうど Bump of Chicken の「天体観測」がかかっていたので、この曲のタイトルは Astronomy Observation で歌詞でも望遠鏡で星を見ようとするのだ、と教えてあげました。すると教授さん、「そうそう、Large Hadron Rap は知ってるか?」と。このLHR、先日稼働していまはトラブルからの復旧作業中のLarge Hadron Collider (LHC)をネタにしたラップで、LHCの仕組みとか働きとか狙いをうまく表現していると日本でもちょっと話題になったシロモノ。教授によるとCNNにも取り上げられたとか。「天体観測」はそういう歌ではないですが、こういう方面で天文学の面白さを表現してみるというのもアリですね。
というわけで(?)、我らがAstronomical Toilet Paperが世界中を旅した様子を動画にしてみました。合成写真は1枚もありません、念のため。全部現地で撮ったものです。
今年最強の台風に閉ざされていた先週末に作ってみたものです。VAIO Movie Storyというソフトに集めた写真を突っ込んでキャプションを入れるだけの簡単操作。ご覧いただいた方はご感想などいただければと。
投稿者 平松正顕 : 19:02
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2008年9月28日
理系白書に天プラ登場!
毎日新聞の連載記事「理系白書」で、天プラを取り上げていただきました。タイトルは『第2部 かけ橋として/1 若手研究者らユニーク活動』。2008年の第2部は『「科学と社会をつなぐかけ橋」となっている人々を紹介する』そうで、その第一段ということですね。
今回の記事は、先日開催された三鷹市周辺在住の外国人向けお月見会がきっかけになっています。記事にもありますが、天プラとして地域密着型の科学コミュニケーションを試行する中でさらに「言葉の壁がある皆さん」にターゲットを絞ったイベントでした。もちろん僕自身は日本にいなかったので参加できていませんが、アンケートの結果も大変良かったと聞いていますし、これからも対象言語を変えつつ続いていくことでしょう。
広く一般向けの講演会やイベントは国立天文台とかその他にある程度お任せして、小回りのきく我々は隙間市場をカバーするというわけです。開催場所と開催時間と告知メディアを選ぶことで、ある程度ターゲットを絞ることが可能です。場合によっては「そんな時間じゃ参加できないよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方には「今回はごめんなさい。また次の機会に。」と言うしかありません。ターゲットを変えて複数回やる、あるいは別団体のイベントでカバーしてもらうということで。
以前どこかのプラネタリウムで、「幼児を抱えたお父さんお母さん向け投影」というのが行われていました。プラネタリウムの暗闇を怖がって泣き出してしまう子供もいるので、なかなか普通の投影には行きづらい。でもそういう方をターゲットにした投影では、みんなお互い様なので気兼ねなくプラネに行ける。そういうコンセプトだったと思います。身近に小さい子どもがいない僕にとっては斬新に感じた企画だったのですが、言われてみれば確かにそのとおり、という感じ。先日来話題にしている岡山県立児童会館のような「児童館+科学館」という施設がその真価を発揮するのはこういう企画かもしれません。
ターゲットを絞るというのは何も参加者向けだけではなくて、メディア対応にも言えます。思い返せば、天プラの活動が初めてメディアに出たのは2004年12月の毎日新聞で、今回の記事をお書きになった西川さんが天文トイレットペーパーを取材してくださったものでした。それ以来いろんなメディアに取材を受けていますが、天プラでは何かイベントを企画するとそれまでにお知り合いになった記者の皆さんにプレスリリースを出しています。こうして取り上げていただくことで次なる面白いコラボレーションが生まれることもありますので、泳ぎ続けないと死んでしまうサメのように新しいことを続けている天プラにとっては、このメディア対応も極めて重要なポイントなのです。
投稿者 平松正顕 : 16:11
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2008年9月27日
科学の入り口としてのプラネタリウム
先に取り上げた岡山県立児童会館の閉鎖問題について、パブリックコメントが金曜日に締め切られました。僕も天プラMLや天文教育普及研究会MLでの議論を参考にしながら、コメントを送ってみました。
先のエントリに「大阪のわたなべ」さんがコメントしてくださっている通り、科学館機能を持つ児童会館を廃止するということは、科学教育の拠点を失うということです。なので、市町村立の児童館が周りにあるからと言って児童会館の代替にはなりません。30km離れたところに倉敷科学センターがあると言っても、岡山市中心部にお住まいの方々が気軽に行ける場所から科学館が失われてしまうのは大変に大きな損失です。児童館と科学館が併設されているからこそ生まれる効果もあるはずです。天プラはこれまで、小さなお子さんを抱えてなかなか科学に触れる場に行けない方向けに「託児付き天文教室」とかやってきました。児童館+科学館という場こそこういう形のイベントにうってつけの存在ですから、何とか残ってほしい。
とはいっても築45年の建物が古くなっているのは確かなので、仙台市天文台のように民間資金を使ったリニューアルができればいいのですが。ベネッセや林原が地元貢献の一部として、岡山県民の科学教育のために協力してくれたら、本当に岡山県にとって大きな財産になると思うのです。
というような内容のパブリックコメントです。最後の段は企業側の事情もあるので大変だとはおもいますが、なんとか難局を切り抜けて欲しいものです。
ところで岡山県、10月末に知事選があります。4期目を目指す現職知事と新人の2人が立候補しているそうで、この選挙の結果次第で今回の財政構造改革プランも見直される可能性があります。今回集められたパブリックコメントが、そういう場でも力を発揮してくれたらと思います。
投稿者 平松正顕 : 23:44
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2008年9月24日
科学は人を幸せにする
と断言できたら簡単なんだけどそうもいかない。
今回はどうも自分の中で意見がまとまってないので普段と違う文体でお届けしますがご容赦のほど。
各地の自治体の財政状況が厳しい折、故郷岡山県も財政構造改革プランを発表して経費削減に努めるとのこと。その中に、プラネタリウムを擁する岡山県立児童会館の廃止が提案された。そしてこの改革プランについてのパブリックコメントも募集されている。締切は9月26日(金)。
この問題を考える上での基礎資料は、
- ・岡山県人口約200万人、岡山市人口約70万人(まもなく政令指定都市)。
・財政難により岡山県は6月に財政危機宣言を発表。
・岡山市内のプラネタリウムは児童会館だけ。
・岡山県内には倉敷科学センターと浅口市の岡山天文博物館にプラネがあり、岡山市中心部から倉敷科学センターまでは約30km、車で1時間ちょっと。
・児童会館全体としての年間来場者数は約10万人。
・児童会館の年間維持費は3000万円。
・児童会館のプラネは僕が初めて行ったプラネである。
オンラインリソースとしては、天プラML内でMさんがまとめてくれたのを拝借して
- ・岡山県立児童会館
・岡山県立児童会館/プラネタリウムの廃止案について
・岡山県財政構造改革プラン(素案)に対する意見募集について
・岡山県財政構造改革プラン(素案) 児童会館は55ページ
・公の施設の見直し案
・公の施設の見直しシート
政令市になろうという都市から、天文学に触れる場であるプラネタリウムがなくなってしまうのは非常に惜しい。もちろん上記最後の点から個人的思い入れも強い。だけど、財政の厳しい現状と、補修の可能性が少なからずある昭和38年設置の古いプラネタリウムと建物を見るに(って実際に見たのはもう何年も前だけど)、単純に「惜しい」ってだけで存続の方向でパブリックコメントを送るのは天文関係者としてのエゴでしかないような気がする。
これはたぶん天文学全般にもいえること。現代天文学のほとんどの部分は、暦の算出という面で生活必需品だった天文学とは大きく離れてしまった。一方で、独裁的な君主が贅の限りをつくすその一部として天文学が行われていた時代でもない。ごく一部民間資金を活用したプロジェクトはあっても、ほとんどは民主主義国家の国民から集めた税金でまかなわれているのが現状。教育や福祉やその他諸々の事業のためにお金が必要な中、どうやって天文学にお金を割いてもらえるか? 「天文学は人類を幸せにする、あるいは価値があるから、必要である」と政治家も官僚も含めたみんなが考えて進めていくしかない。
少なくとも僕個人としては「天文学は幸せをもたらす」と思ってる。これは単にそう「信じている」わけではなくて、それなりの数のアウトリーチ/科学コミュニケーション活動を国立天文台観望会や駅前でのゲリラ的観望会や天プラの諸活動でやってきたことがその根拠。講演会やサイエンスカフェでの老若男女問わないキラキラした眼、街角で思いがけず接した土星の環に対する歓喜の声、長期入院を余儀なくされている子供がディスプレイの中に広がる太陽系を見た時の笑顔。あとは天体の誕生と死を扱ったプラネタリウム番組を観終わった後にお客さんが言ってた「いやー、人生観とか世界観変わったわ〜」という一言。これらは僕がそういった活動をする大きなモチベーションとなっているし、天文学の研究をすること自体のモチベーションの一部になっていることも間違いない。
多くの方が指摘されるように科学の良い面を見ているだけではもちろんダメで、科学がもたらす(かもしれない)直接的な不幸だけじゃなくて、科学(天文学)にお金をつぎ込むことで失われる他の可能性にも思いをめぐらせるべき。そしてその失われた可能性を補って余りある価値が科学(天文学)にあるかどうか、あるいはどの程度なら科学や天文学にリソースを割いてもいいかを考えて、それを専門外の人とも議論する必要があるんじゃなかろうか。もちろん価値観とか幸せの基準は人それぞれだから全会一致にはならないだろうけど、少なくともほとんどの人が納得できる材料はあったほうがいい。科学の重要性をエコとか学力低下とか理科離れとか流行りの「あおり文句」に絡ませるのは簡単だけど、そうじゃなくてもっと根本的なところから示してみたい。
というようなことを、プラネタリウムの廃止提案だとか天文台にお金出さないぜみたいな状況が発生してから慌てて考えるんじゃなくて、やっぱり日頃から意識しておかないとね。プラネタリウム業界では渋谷の五島プラネタリウム、池袋のサンシャインプラネタリウムと2度の閉館ショックがあって、長年読んでいた天文雑誌SKY WATCHERの休刊があって、それらも僕の活動のきっかけの一部ではある。
とずっとこういうことを考えていると研究が進まなくて本末転倒なんだけど(だって僕は天文学の成果を示すことでその必要性を訴えたいと思っているから)、頭の片隅にはこの問題を置いておいて、たまにじっくり考えたり議論したりする、というのが良いバランスなんだと思う。
とにかくパブリックコメントを考えてみよう。
投稿者 平松正顕 : 17:47
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2008年8月27日
宇宙開発基本法施行
お久しぶりの更新になってしまいました。先週は台北で開催された第2回アジア電波夏の学校に参加してました。日台中韓から90名ほどの生徒が集まって、講義と実習で電波天文学とくに電波干渉計の原理と解析手法を学ぶ、というものです。僕が雇われている中央研究院天文及天文物理研究所のPaul Ho所長のアツい開会あいさつ(30分!)に始まり、3回目の受講なのにまだ得るものが増える鹿児島大の亀野さんの講義、休憩時間にウェブ中継で盛り上がる五輪野球韓国台湾戦、台湾茶を楽しみながらの国際交流など盛りだくさんでした。
さてタイトルの宇宙開発基本法、軍事利用にも道を開くとの危惧をよそに成立し今日施行だそうです。今日から何かすぐ変わるわけではないですが、宇宙開発戦略本部なるものができたと報道されています。担当大臣は野田聖子さん。たくさんの役職を兼ねる特命大臣ですが、果たして宇宙開発にどれだけ力を割いていただけるのか。産経MSNの記事では、
「研究開発の枠組みだけでなく、広く一般国民の幸せにつながるような視線で、頑張っていただきたい」と話した。だそうです。研究開発はそもそも国民あるいは人類全体の幸せにつながるから実行されているんだと思っていたわけですが。研究開発には含まれない安全保障も含めて、という意味でしょうかね。しかし一国の"国民"の幸せだけ考えていると世界のその他の部分で破綻をきたす可能性もありますし、ここはひとつ「地球上のみんなの幸せにつながるような視線」で頑張っていただきたいものです。幸せには宇宙科学の進展による人類の知の増大も含まれると考えます。それから、以前も取り上げましたが日本の気象衛星はアジア太平洋地域の多くの国々で利用されているのだから、気象庁単独では予算が足りないとか言ってないで政府がしっかりサポートすべき。そういうことを出来るようにするのが今回の基本法のはず。そしてその行く末を研究者も研究者でない人もしっかり見つめていくべき。政治家も官僚もJAXA職員もそれ以外の人もみんなひっくるめた科学コミュニケーションをしっかりと実行していかなくてはいけません。
投稿者 平松正顕 : 20:34
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2008年8月13日
宇宙の大規模構造扇子発売!
月刊星ナビのコラム連載やアストロノミカルトイレットペーパーの販売、研究にも役立っているステラナビゲータなどで何かとお世話になっているアストロアーツさんから、天プラプロデュースによる新商品、LSS扇子が発売されました。オンラインショップはこちら。
LSS (Large Scale Structure) とは、宇宙の大規模構造のことです。直訳ですね。宇宙にはたくさんの銀河が存在しているわけですが、一様に散らばっているのではありません。銀河が集まっているところが網の目のように広がっていることが、様々な観測からわかってきました。古くは1977年のCfA Redshift Survey、最近では日本のグループも貢献しているSloan Digital Sky Survey: SDSS(このプロジェクトを支援しているスローン財団のスローンさんはGeneral Motorsの会長)まで。この世の中を知るには地図が必要、という極めてストレートな目標に対して天文学者は長年努力してきました。結果、SDSSでは数十億光年にわたる範囲での銀河の分布が描き出されているわけです。
で、上記CfA SurveyやSDSSのページにあるような図を見て、扇子にしたい!と思った天プラメンバーが仲間を集めて作ったのがこのLSS扇子です。本当は実際の観測データを扇子にしたかったのですが、許可を取るのが大変そうなのと、観測範囲が狭くて扇の角度に足りないことから、宇宙の大規模構造のシミュレーションを専門とする方からシミュレーションデータを提供していただいて、今回の製品となりました。暑いさなかのオリンピック・高校野球観戦や花火大会のお供に、銀河の風をおひとつどうぞ。
投稿者 平松正顕 : 19:38
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2008年8月11日
魅力的な(電波)天文画像を!
2週間のヨーロッパ出張から帰ってきました。時差ボケは取れていませんが、台湾も思ったほど暑くないのでほっと一安心です。これからまた暑くなるのか、あるいはもうピークは過ぎたのかわかりませんが。
いくつかエントリを書いてきましたが、本当に得る物の多い出張でした。自分一人あるいは小さな研究グループだけではなかなかカバーしきれない広い視点から自分の研究を見つめ直せる機会だったとも言えるでしょう。ミュンヘン郊外での研究会で発表されていた研究発表のいくつかは、ある特定の天体の観測に対して天文学の中のいろいろな分野での研究が非常によくコーディネートされていて、力強い研究だなぁと思いました。僕たちの観測領域も、これからいろいろなデータがそろってきて面白くなっていくはず。がんばらねば。
ところで、こういう研究発表や一般向けニュースリリースなどで気になるのが、電波で観測した結果の画像が魅力に欠けることです。右の画像は僕の2007年の論文に張り付けた図です。はい、画像というよりは「図」ですね。まったくもって魅力がありません(笑)。一応説明しておくと、右上のIRS4という名前のついた天体から、高速のガスが噴き出していますよ、という図です。電波天文学も面白い分野だし光の天文学に劣らない結果を出していると思うのですが、多くの方になじみがないのは「図」でのアピールが足りないというのも一因かもしれません。これは別に電波天文学者の画像作りが下手なわけじゃなくて、観測装置的にそもそもきれいな絵を作りにくいという面もあります。
きれいな絵を作るには、画素数が一定以上は必要でしょう。例に挙げた僕の画像、小さな十字マークが実際に観測した(電波の強度を測った)点です。合わせても100点くらいしかありません。100画素の画像なんて粗いモザイクがかかったも同然。これではきれいな絵も作れませんし、そもそも研究用途にしたって細かい部分が見えないので困ります。画素数を増やすには、同じ範囲を細かい点に区切って観測するか、各点の大きさは同じでもものすごく広い範囲を観測するかすれば、画像内の画素数が増えて見栄えがするようになります。前者に相当するのが、電波干渉計と呼ばれる、複数の小さな電波望遠鏡を組み合わせて観測する手法、後者はひとつの望遠鏡で非常に広い範囲を観測する、今僕が取り組んでいるような観測手法です。この画像はできたらまた紹介したいと思います。
で、電波天文画像のそんな現状を打開するためかどうか知りませんが、アメリカの国立電波天文台NRAOが電波画像コンテストやっています。優勝賞金1000ドル。過去3回の受賞作品には、純粋な観測結果の画像からいろいろコラージュした画像までなかなか魅力的な作品が並んでます。天文学の人気の一つは間違いなくきれいな画像にあると思うので、電波天文学でもそういう恩恵に預かれるように工夫していきたいものです。
投稿者 平松正顕 : 23:23
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2008年6月27日
蛋白質・核酸・酵素・天プラ
蛋白質 核酸 酵素 (PNE)という生命科学系の雑誌があります。生物科学業界からは遠いところにいる僕にとっては『すごくストレートな題名だな』というのが第一印象の雑誌だったのですが、ここ何号か『生命科学のコミュニケーション』という連載記事が掲載されています。先日発行された7月号では、『天文学に学ぶ科学コミュニケーション』ということで天プラの活動を紹介しています(主に高梨くん執筆 in discussion with 天プラの一部)。
天プラの活動を文章化しようという考えは前からあったのですが、これまでなかなか実現できていませんでした。過去をまとめるより次の活動を創造(妄想!?)してたほうが楽しい、というのが第一の理由ではありますが、よくある社会科学系の調査のようにアンケートを取って活動の定量的な評価を行う、などということをほとんど行っていないことも一つの原因です。活動に携わっている個人レベルでは確実に得るものがあって次の活動にフィードバックをかけることもできるのですが、この種の感覚的なものはなかなか文章にはしにくいものです。
今回は、『一家に1枚人ゲノムマップ』の加藤和人さん(京大)からのご紹介で執筆を担当することになったわけですが、題名のとおり雑誌は生命科学系なわけで、天プラの活動の紹介がどこまで受け入れられてもらえるか、理解してもらえるかは正直言ってわかりません。Science and Communication ブログでK_Tachibanaさんが『分野が全く結びつかないようにも思ったが』と書かれていますが、その通りです。なんせ冒頭からトイレットペーパーの話ですし。それでも、なるべく読む方が自分の身に引き付けて考えていただけるように、具体的な活動についてではなくて『我々が何を考えて活動しているか』を主題としてまとめています。
文章のサブタイトルは『学生が始めた本格的な科学コミュニケーション活動』ということになっていました。しかし、『科学コミュニケーション』という言葉を知る前から活動をしていた天プラとしては、何が科学コミュニケーションでどこが本格的なのか、あまり意識したことはありません。文章中にも書いてあることですが、『みんなで天文学を楽しむ』ことがターゲットであって、科学コミュニケーション活動でよく使われているサイエンスカフェや地域との協力は、その目的達成のための手段でしかありません。とはいえ、天プラの活動が文章化するに値する活動であると認識していただいていることはうれしいことですので、ぜひどなたか科学コミュニケーション論を専門にする方に天プラの活動を研究していただきたいと思います。
今回の文章化は、天プラで活動している自分たちにとってもいいまとめになりました。天プラがこれまでいろんなところで発表してきた資料は天プラのウェブサイトの「各種資料」で惜しげもなく大公開中ですが、これを見ても考え方の変遷が見て取れるはずです。走りながら考える、というのが天プラスタイルなわけですが、地域協力とか広い意味でのバリアフリーとか、我ながらなかなかいい線いってるんじゃないかと思うことも多々あります。天プラの各サブプロジェクトについてもっと詳細な文章化の計画もあるにはあるので、できれば次の機会に活動の実地に即したノウハウや考え方の紹介などもできればいいな、と思います。
が、なにせ論文執筆が佳境を迎えているのと新しい観測装置のデータ解析を昨日から習い始めたということもあって、なかなか時間がとれませんが。。気長にお待ちくださいませ。
投稿者 平松正顕 : 23:01
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