2005年5月7日

惑星と断言できない根拠

『太陽系外惑星の直接撮影』 と話題になったおおかみ座GQ星 (GQ Lup) について、4月5日4月11日4月30日と3回書いてきましたが、さらに補足をしておきます。

『研究者はだれも惑星だなんて言ってませんよ?』といった根拠ですが、これを発表した研究者たち本人の論文、ヨーロッパ南天天文台ESOのプレスリリース、アストロアーツによる日本語要約、さらに、僕のまわりの研究者の皆さん(太陽系外惑星とか、惑星系形成とかの研究をされている)との個人的なやり取りが根拠です。

論文の筆頭著者、イエナ大学のノイホイザー氏は、「質量からみて、惑星である可能性が極めて高い」と共同通信に対してコメントしたようですが(産経新聞の記事)、
彼の論文では、モデルによって1木星質量から42木星質量という幅のある質量が答えとしてでてくると書かれています。つまり、13木星質量以下という惑星の条件をクリアする可能性もあるし、クリアしない(=惑星でない)可能性もあります。

現状ではどのモデルが正しいのかはわかっていないので、『惑星である可能性がきわめて高い』というのは論文から判断する限り、ちょっと言いすぎな気がします。

1. ノイホイザー氏が本当にそう(惑星である可能性が極めて高い」)言った。
2. ノイホイザー氏はそこまで言っていないのに、記事になった時点で(記者の意図かどうかはわからないが)そう表現されてしまった。

のふたつが考えられますが、どちらかはわかりません。この記事を最初に書いたと思われる、space.com の記事では

"The detection of the faint object near the bright star is certain," Neuhaeuser told SPACE.com on Friday.

といっています。そのあとの方では、彼本人が "planet" という単語も使っているように読めます。

一方でノイホイザー氏は、ESOの側に対しては
"these new models still need to be calibrated, before the mass of such companions can be determined confidently"
と言っているようです。(プレスリリースの中)

少なくともオフィシャルな論文とプレスリリースでは、研究者は『惑星である/その可能性がきわめて高い』とは言っていません。これが僕の論の根拠です。

投稿者 平松正顕 : 22:01 | 報道にコメント

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