2007年7月27日
ALMAアンテナと行く南米西遊記
僕が所属している国立天文台ALMA推進室でのホットニュースといえば、日本が製造したALMA用口径12mアンテナがチリに到着したことです。こちらのニュースをご覧下さい。(右の写真は、ALMAのアンテナではなくて、僕たちが使っている望遠鏡です。標高4800m地点にて。)
僕の故郷にほどちかい水島の工業地帯で作られて出荷されたというのも縁を感じますね。ハワイで活躍中のすばる望遠鏡の、8mの巨大な鏡を支える部分(主鏡セル)も同じ会社が作ったと聞いたことがあります。高校までは地元にいたのですが、そんな話は一度も聞いたことがなくて、それを知ったのはたぶん大学院に入ってからだったと思います。小学校の社会科見学で製鉄所や自動車工場には行ったことがあるのですが、なかなか知られないところで、凄い製品を作っていたのですね。
そして上記ニュース記事の下の写真がまた面白いです。3台のトレーラーが並んで荒野を進む様子は、まるで西遊記の三蔵法師ご一行様のようです。今月初めまでは僕もこんなところにいたわけですが、まさに地の果てという感じですね。アンテナが設置される標高5000m地点にも2年前に行ったことがありますが、そのときはホントにまだ何も無くて、ここが5年くらい後には世界最大級の電波天文台になるとはにわかには信じられない景色が広がっていました。今でもコンピュータなどが格納される建物ひとつ以外にはあまり建物が無いんですが、これからどんどんアンテナが運び込まれていくわけです。楽しみですね。
投稿者 平松正顕 : 22:30
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2007年7月8日
カンヌ国際広告祭
たっぷりの観測データと色々な経験と時差ぼけを手土産に、5週間のチリ滞在から帰ってきました。チリ滞在中に嬉しいニュースを耳にしたので、ちょっと遅くなりましたがここでご紹介。
国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクトのウェブコンテンツのひとつ、"4D2U Navigator英語版"が、2007年カンヌ国際広告祭でCyber Lions部門銅賞を受賞したそうです。おめでとうございます!
何はともあれこのコンテンツを一度見てみるのが一番です。まずは日本語版から。Flashと簡単なマウスでのナビゲーションで、気持ちよく宇宙の中を飛び回れます。スタート地点が東京都三鷹市の国立天文台の敷地内の4D2Uプロジェクトプレハブの机の上のコンピュータのディスプレイという遊び心も素敵です。画面下の+−ボタンで自由にズームイン・アウトし、"STILL"から好きな場所のよりリアルなシミュレーション画像を楽しむこともできます。今回銅賞を受賞した英語版のほうは、これらに加えて太陽系惑星のデータが表示されたりして、さらに楽しめます。日本語版もこれから英語版と同等の機能を持つようにアップデートされるそうなので、楽しみです。
サイバーライオンの受賞者一覧のpdfを見ると、コカコーラ、NIKE、フォルクスワーゲンといった世界的企業に混じって"NATIONAL ASTRONOMICAL OBSERVATORY OF JAPAN (国立天文台)"がこれでもかというくらいに異彩を放っています。
天プラや僕自身はこの4D2Uナビゲータには全然関わっていないのですが、これを製作したデザイナーの小阪淳さんは、僕たちもお手伝いした『一家に1枚宇宙図2007』の製作をされた方でもあります。宇宙図製作のときから小阪さんのパワーとコダワリには一同圧倒されまくりだったわけですが、改めて『世界の小阪さん』の凄さに脱帽です。
広告業界に詳しくないので「なんか凄い賞らしい」くらいしかわからない僕ですが、世界に名だたるクライアント企業と巨大広告代理店がしのぎを削る中で、国立の基礎科学研究機関+デザイナーのチームが小阪さん自身『広告とは言い切れない』と仰っていたこのコンテンツで賞を勝ち取ることができたことが何よりも目新しく、今後この方向の科学コンテンツの可能性を示しているのではないかと思います。もちろん4D2Uチームと小阪さんという強力なタッグの力があってこそですが、科学的な正確さを担保しつつ、『見せる/魅せる』モノをつくることが十分に可能なわけです。同じく4D2Uプロジェクトの成果物である宇宙シミュレータ"Mitaka"にしても、宇宙図にしても、まずはビジュアルで見る人をしっかりと引きつけておいて、それからその奥にある科学的真実に興味を移してもらう、という共通の方向性があると思います。生活に役立つとかお金になるとかだけではなくて、「カッコいい科学」という見せ方の方向性も、もっともっと追求されてもいいと思わせてくれる、今回の嬉しいニュースでした。
投稿者 平松正顕 : 19:16
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2007年7月3日
アタカマからこんにちは。
ごぶさたしてしまってすみません。
実は今、出張でチリに来ています(日本との時差は13時間)。5月末に日本を出たのでまるまる一ヶ月日本を留守にしていることになります。もうまもなく帰国しますが、冬の砂漠である今の滞在地と、梅雨ど真ん中の日本とでは気候がかなり違うので、いまから体調管理に気をつけねば、と思っています。
今回の出張も、右の写真に写っている電波望遠鏡ASTE(あすて)に関連するものです(この写真を撮った日はあまり天気が良くなく、雲が見えています)。大きさがわかりにくいかもしれませんが、アンテナのおわんの直径は10mあります。いまこの望遠鏡には、マサチューセッツ大学(UMass)が作った144画素(残念ながら144"万"画素ではない。これでも現在稼動している電波カメラとしては世界最大級)電波カメラAzTEC(あずてっく)が搭載されており、その搭載に関連する試験観測と、その後の本観測のための渡航です。試験観測は無事に終わり、いまは実際に天体を科学観測するフェイズに移行しています。ちなみに"Aztec"というこの名前、日本語では「アステカ」ですね。メキシコに建設中の電波望遠鏡LMTに搭載予定なので、この名がついているのでしょう。
今いる場所は、チリ北部のサンペドロ・デ・アタカマという人口2000人くらいのオアシスの町です。望遠鏡はここから60kmくらい先の標高4800mの場所(チャナントール山周辺)にあるのですが、この町の標高は2400mです。20分も歩けば端から端まで行けてしまうような小さな町ですが、砂漠や高地、近くにある塩湖などを目的とした観光の町で、実際にたくさんの観光客・バックパッカーが来ています。町のウェブサイトもしっかりしています。「地球の歩き方」を持った日本人と思しき旅行者も見かけました。僕がここに来るのは今回2年ぶり5回目なのですが、以前は未舗装だった道が舗装されていたり、きれいなアウトドアグッズ屋ができていたりと、この町自体もだんだんと観光地化されているように思います。
この町は、日米欧が協力して建設している次世代電波天文台ALMAの山麓施設(OSF)に程近い位置にあって、数十km離れてはいますが山腹に建設中のOSFがよく見えます。まだいくつかの建物が見えるだけですが、完成予想図を見ると相当大きな建物群になるようです。また、私たちのオフィスの近くには、おなじくチャナントール高地に望遠鏡を構えるCBI、ACTのオフィスもあります。ACTは、先日めでたくファーストライト(天体からの電波を初めて観測すること)を迎えたそうで、これでチャナントール周辺の望遠鏡は5基になりました。CBI、我らがASTE、ヨーロッパのAPEX,名古屋大学のNANTEN2(上の写真左下に見えるかまぼこ型のドーム)、そしてACT。チャナントール周辺はチリ政府によって「科学保護地域」に指定されていて、建設中のALMAを始め、東京大学のTAOやアメリカのCCATなど、今後も天文台建設の計画が進んでいくことになっています。ハワイのマウナケアと並ぶ「天文台銀座」になる日も近いことでしょう。
投稿者 平松正顕 : 00:56
| 海外出張日記
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