<< 2008年8月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

2008年8月27日

宇宙開発基本法施行

お久しぶりの更新になってしまいました。先週は台北で開催された第2回アジア電波夏の学校に参加してました。日台中韓から90名ほどの生徒が集まって、講義と実習で電波天文学とくに電波干渉計の原理と解析手法を学ぶ、というものです。僕が雇われている中央研究院天文及天文物理研究所Paul Ho所長のアツい開会あいさつ(30分!)に始まり、3回目の受講なのにまだ得るものが増える鹿児島大の亀野さんの講義、休憩時間にウェブ中継で盛り上がる五輪野球韓国台湾戦、台湾茶を楽しみながらの国際交流など盛りだくさんでした。

さてタイトルの宇宙開発基本法、軍事利用にも道を開くとの危惧をよそに成立し今日施行だそうです。今日から何かすぐ変わるわけではないですが、宇宙開発戦略本部なるものができたと報道されています。担当大臣は野田聖子さん。たくさんの役職を兼ねる特命大臣ですが、果たして宇宙開発にどれだけ力を割いていただけるのか。産経MSNの記事では、

「研究開発の枠組みだけでなく、広く一般国民の幸せにつながるような視線で、頑張っていただきたい」と話した。
だそうです。研究開発はそもそも国民あるいは人類全体の幸せにつながるから実行されているんだと思っていたわけですが。研究開発には含まれない安全保障も含めて、という意味でしょうかね。しかし一国の"国民"の幸せだけ考えていると世界のその他の部分で破綻をきたす可能性もありますし、ここはひとつ「地球上のみんなの幸せにつながるような視線」で頑張っていただきたいものです。幸せには宇宙科学の進展による人類の知の増大も含まれると考えます。それから、以前も取り上げましたが日本の気象衛星はアジア太平洋地域の多くの国々で利用されているのだから、気象庁単独では予算が足りないとか言ってないで政府がしっかりサポートすべき。そういうことを出来るようにするのが今回の基本法のはず。そしてその行く末を研究者も研究者でない人もしっかり見つめていくべき。政治家も官僚もJAXA職員もそれ以外の人もみんなひっくるめた科学コミュニケーションをしっかりと実行していかなくてはいけません。

投稿者 平松正顕 : 20:34 | 科学コミュニケーション | コメント (3) | トラックバック (2) | このエントリーを含むはてなブックマーク

2008年8月13日

宇宙の大規模構造扇子発売!

月刊星ナビのコラム連載やアストロノミカルトイレットペーパーの販売、研究にも役立っているステラナビゲータなどで何かとお世話になっているアストロアーツさんから、天プラプロデュースによる新商品、LSS扇子が発売されました。オンラインショップはこちら

LSS (Large Scale Structure) とは、宇宙の大規模構造のことです。直訳ですね。宇宙にはたくさんの銀河が存在しているわけですが、一様に散らばっているのではありません。銀河が集まっているところが網の目のように広がっていることが、様々な観測からわかってきました。古くは1977年のCfA Redshift Survey、最近では日本のグループも貢献しているSloan Digital Sky Survey: SDSS(このプロジェクトを支援しているスローン財団のスローンさんはGeneral Motorsの会長)まで。この世の中を知るには地図が必要、という極めてストレートな目標に対して天文学者は長年努力してきました。結果、SDSSでは数十億光年にわたる範囲での銀河の分布が描き出されているわけです。

で、上記CfA SurveyやSDSSのページにあるような図を見て、扇子にしたい!と思った天プラメンバーが仲間を集めて作ったのがこのLSS扇子です。本当は実際の観測データを扇子にしたかったのですが、許可を取るのが大変そうなのと、観測範囲が狭くて扇の角度に足りないことから、宇宙の大規模構造のシミュレーションを専門とする方からシミュレーションデータを提供していただいて、今回の製品となりました。暑いさなかのオリンピック・高校野球観戦や花火大会のお供に、銀河の風をおひとつどうぞ。

投稿者 平松正顕 : 19:38 | 科学コミュニケーション | コメント (2) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク

2008年8月11日

魅力的な(電波)天文画像を!

2週間のヨーロッパ出張から帰ってきました。時差ボケは取れていませんが、台湾も思ったほど暑くないのでほっと一安心です。これからまた暑くなるのか、あるいはもうピークは過ぎたのかわかりませんが。

いくつかエントリを書いてきましたが、本当に得る物の多い出張でした。自分一人あるいは小さな研究グループだけではなかなかカバーしきれない広い視点から自分の研究を見つめ直せる機会だったとも言えるでしょう。ミュンヘン郊外での研究会で発表されていた研究発表のいくつかは、ある特定の天体の観測に対して天文学の中のいろいろな分野での研究が非常によくコーディネートされていて、力強い研究だなぁと思いました。僕たちの観測領域も、これからいろいろなデータがそろってきて面白くなっていくはず。がんばらねば。

ところで、こういう研究発表や一般向けニュースリリースなどで気になるのが、電波で観測した結果の画像が魅力に欠けることです。右の画像は僕の2007年の論文に張り付けた図です。はい、画像というよりは「図」ですね。まったくもって魅力がありません(笑)。一応説明しておくと、右上のIRS4という名前のついた天体から、高速のガスが噴き出していますよ、という図です。電波天文学も面白い分野だし光の天文学に劣らない結果を出していると思うのですが、多くの方になじみがないのは「図」でのアピールが足りないというのも一因かもしれません。これは別に電波天文学者の画像作りが下手なわけじゃなくて、観測装置的にそもそもきれいな絵を作りにくいという面もあります。

きれいな絵を作るには、画素数が一定以上は必要でしょう。例に挙げた僕の画像、小さな十字マークが実際に観測した(電波の強度を測った)点です。合わせても100点くらいしかありません。100画素の画像なんて粗いモザイクがかかったも同然。これではきれいな絵も作れませんし、そもそも研究用途にしたって細かい部分が見えないので困ります。画素数を増やすには、同じ範囲を細かい点に区切って観測するか、各点の大きさは同じでもものすごく広い範囲を観測するかすれば、画像内の画素数が増えて見栄えがするようになります。前者に相当するのが、電波干渉計と呼ばれる、複数の小さな電波望遠鏡を組み合わせて観測する手法、後者はひとつの望遠鏡で非常に広い範囲を観測する、今僕が取り組んでいるような観測手法です。この画像はできたらまた紹介したいと思います。

で、電波天文画像のそんな現状を打開するためかどうか知りませんが、アメリカの国立電波天文台NRAO電波画像コンテストやっています。優勝賞金1000ドル。過去3回の受賞作品には、純粋な観測結果の画像からいろいろコラージュした画像までなかなか魅力的な作品が並んでます。天文学の人気の一つは間違いなくきれいな画像にあると思うので、電波天文学でもそういう恩恵に預かれるように工夫していきたいものです。

投稿者 平松正顕 : 23:23 | 科学コミュニケーション | コメント (2) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク

2008年8月8日

ワークショップ終了

ヘルシンキ大学天文台での3日間のワークショップが終了しました。日本(+台湾)から4人、ヘルシンキ側からは教授から大学院生まで含めて10人ほど、各自の最新+昔からの研究結果を持ち寄って発表・議論する形式でしたが、非常に中身の濃い3日間でした。フィンランドは2004年にESOに加入し、ヨーロッパがひとまとまりとなって進める様々なプロジェクトに参加しているので、人数はそれほど多くなくても幅広い観測をやっています。共通の興味・共通の問題意識を抱えて研究を進めているので、とても有意義な議論ができました。

カメレオン座分子雲は南半球からしか観測できないので世界的に見ても観測者は少ないのですが、その領域の結果も今回たくさん見せてもらいました。僕が2007年に発表した論文の結果を支持する結果がでていると聞いた時はほっとするとともに嬉しく思いましたね。研究というのは白黒つけられる結果がはっきり出る場合はきっと少なくて、いろんな状況証拠を集めて「こうじゃないかなぁ」と議論していくことが多いだろうと思います。特に観測天文学の場合は、限られた時間の中での観測の結果で決定的な証拠をつかむのは難しいので、どうしても100%胸を張って言える、というほどの結論にならない場合もあるわけです。もちろんそれなりの根拠があってある結論に達するのですが、それでも「これでいいのかな?」と恐る恐る論文を書いていたりもします。そういうところに、まったく別の観測からそれを支持する(少なくとも否定はしない)結果が得られているというのを聞くのは大変心強いことです。この天体の追加観測のために、共同で某所の望遠鏡に観測提案を書こうということにもなりましたし、「国際協力の研究はこうやって進めていくんだなぁ」と今更ながらに実感する良い機会となりました。北欧のすばらしい街も堪能したことだし、暑い台湾に戻ってもがんばらなくては。

投稿者 平松正顕 : 00:29 | 海外出張日記 | コメント (4) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク

2008年8月6日

競争と協力

ミュンヘン郊外での研究会を終え、ヘルシンキ大学天文台でワークショップに参加しています。写真はヘルシンキ市街中心部の大聖堂。時計が10時を指してますが、夜10時です。なのにこの明るさ。そして8月というのに最高気温が20度に届かないという、涼しいを通り越して寒い気温。北欧恐るべし。

ミュンヘンの研究会では時差ボケもあってブログ更新できませんでしたが、非常に有意義なミーティングでした。この前も書きましたが、我らがASTEの最大のライバルであるヨーロッパ陣営のAPEXの研究者とも情報交換でき、アクティブに結果を出し続けている各国の研究者とも話ができ、研究のトレンドも見て取ることができました。面と向かってのディープなディスカッションに参加すると、日常的に論文に目を通しているだけではわからない最先端が見えてきます。研究所で認められている予算的にそんなに頻繁には出かけることができませんが、年1回でもこういう研究会に参加して世界のトレンドを感じとっておくことが重要だなと思いました。あとはやはりこういう場で自分の研究をちゃんと宣伝することも重要です。毎日大量に生産される論文では見過ごすことがあっても、研究会で会って話をした人の論文なら目にも止まりやすいですしね。

ここヘルシンキ大学では、僕のメイン観測ターゲットであるカメレオン座分子雲の観測的研究をやっている研究者が数人います。この領域は南半球からしか観測できませんが、フィンランドもヨーロッパの天文学研究連合体であるESOに参加しているので、チリにある望遠鏡にアクセスすることができるわけです。こちらのワークショップはミュンヘンでの研究会とは違って比較的「身内」のコラボレーションを探る類のものなので、和やかな雰囲気の中ディスカッションができます。発表相手がライバルである場合は自分の持ってる(論文にする前の)データを全部明らかにしないことが多いわけですが、こういう場では「まだよくわからないんだけどこういうデータもあって、、」みたいな話も可能です。競争と協力があってこそ有限の資源(お金とか頭脳とか)を最大限に引き出した研究ができるわけで、こういう場をしっかり活用して次の段階に進んでいきたいものです。

投稿者 平松正顕 : 05:34 | 海外出張日記 | コメント (0) | トラックバック (0) | このエントリーを含むはてなブックマーク

| Top