2008年9月28日
理系白書に天プラ登場!
毎日新聞の連載記事「理系白書」で、天プラを取り上げていただきました。タイトルは『第2部 かけ橋として/1 若手研究者らユニーク活動』。2008年の第2部は『「科学と社会をつなぐかけ橋」となっている人々を紹介する』そうで、その第一段ということですね。
今回の記事は、先日開催された三鷹市周辺在住の外国人向けお月見会がきっかけになっています。記事にもありますが、天プラとして地域密着型の科学コミュニケーションを試行する中でさらに「言葉の壁がある皆さん」にターゲットを絞ったイベントでした。もちろん僕自身は日本にいなかったので参加できていませんが、アンケートの結果も大変良かったと聞いていますし、これからも対象言語を変えつつ続いていくことでしょう。
広く一般向けの講演会やイベントは国立天文台とかその他にある程度お任せして、小回りのきく我々は隙間市場をカバーするというわけです。開催場所と開催時間と告知メディアを選ぶことで、ある程度ターゲットを絞ることが可能です。場合によっては「そんな時間じゃ参加できないよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方には「今回はごめんなさい。また次の機会に。」と言うしかありません。ターゲットを変えて複数回やる、あるいは別団体のイベントでカバーしてもらうということで。
以前どこかのプラネタリウムで、「幼児を抱えたお父さんお母さん向け投影」というのが行われていました。プラネタリウムの暗闇を怖がって泣き出してしまう子供もいるので、なかなか普通の投影には行きづらい。でもそういう方をターゲットにした投影では、みんなお互い様なので気兼ねなくプラネに行ける。そういうコンセプトだったと思います。身近に小さい子どもがいない僕にとっては斬新に感じた企画だったのですが、言われてみれば確かにそのとおり、という感じ。先日来話題にしている岡山県立児童会館のような「児童館+科学館」という施設がその真価を発揮するのはこういう企画かもしれません。
ターゲットを絞るというのは何も参加者向けだけではなくて、メディア対応にも言えます。思い返せば、天プラの活動が初めてメディアに出たのは2004年12月の毎日新聞で、今回の記事をお書きになった西川さんが天文トイレットペーパーを取材してくださったものでした。それ以来いろんなメディアに取材を受けていますが、天プラでは何かイベントを企画するとそれまでにお知り合いになった記者の皆さんにプレスリリースを出しています。こうして取り上げていただくことで次なる面白いコラボレーションが生まれることもありますので、泳ぎ続けないと死んでしまうサメのように新しいことを続けている天プラにとっては、このメディア対応も極めて重要なポイントなのです。
投稿者 平松正顕 : 16:11
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2008年9月27日
科学の入り口としてのプラネタリウム
先に取り上げた岡山県立児童会館の閉鎖問題について、パブリックコメントが金曜日に締め切られました。僕も天プラMLや天文教育普及研究会MLでの議論を参考にしながら、コメントを送ってみました。
先のエントリに「大阪のわたなべ」さんがコメントしてくださっている通り、科学館機能を持つ児童会館を廃止するということは、科学教育の拠点を失うということです。なので、市町村立の児童館が周りにあるからと言って児童会館の代替にはなりません。30km離れたところに倉敷科学センターがあると言っても、岡山市中心部にお住まいの方々が気軽に行ける場所から科学館が失われてしまうのは大変に大きな損失です。児童館と科学館が併設されているからこそ生まれる効果もあるはずです。天プラはこれまで、小さなお子さんを抱えてなかなか科学に触れる場に行けない方向けに「託児付き天文教室」とかやってきました。児童館+科学館という場こそこういう形のイベントにうってつけの存在ですから、何とか残ってほしい。
とはいっても築45年の建物が古くなっているのは確かなので、仙台市天文台のように民間資金を使ったリニューアルができればいいのですが。ベネッセや林原が地元貢献の一部として、岡山県民の科学教育のために協力してくれたら、本当に岡山県にとって大きな財産になると思うのです。
というような内容のパブリックコメントです。最後の段は企業側の事情もあるので大変だとはおもいますが、なんとか難局を切り抜けて欲しいものです。
ところで岡山県、10月末に知事選があります。4期目を目指す現職知事と新人の2人が立候補しているそうで、この選挙の結果次第で今回の財政構造改革プランも見直される可能性があります。今回集められたパブリックコメントが、そういう場でも力を発揮してくれたらと思います。
投稿者 平松正顕 : 23:44
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2008年9月24日
科学は人を幸せにする
と断言できたら簡単なんだけどそうもいかない。
今回はどうも自分の中で意見がまとまってないので普段と違う文体でお届けしますがご容赦のほど。
各地の自治体の財政状況が厳しい折、故郷岡山県も財政構造改革プランを発表して経費削減に努めるとのこと。その中に、プラネタリウムを擁する岡山県立児童会館の廃止が提案された。そしてこの改革プランについてのパブリックコメントも募集されている。締切は9月26日(金)。
この問題を考える上での基礎資料は、
- ・岡山県人口約200万人、岡山市人口約70万人(まもなく政令指定都市)。
・財政難により岡山県は6月に財政危機宣言を発表。
・岡山市内のプラネタリウムは児童会館だけ。
・岡山県内には倉敷科学センターと浅口市の岡山天文博物館にプラネがあり、岡山市中心部から倉敷科学センターまでは約30km、車で1時間ちょっと。
・児童会館全体としての年間来場者数は約10万人。
・児童会館の年間維持費は3000万円。
・児童会館のプラネは僕が初めて行ったプラネである。
オンラインリソースとしては、天プラML内でMさんがまとめてくれたのを拝借して
- ・岡山県立児童会館
・岡山県立児童会館/プラネタリウムの廃止案について
・岡山県財政構造改革プラン(素案)に対する意見募集について
・岡山県財政構造改革プラン(素案) 児童会館は55ページ
・公の施設の見直し案
・公の施設の見直しシート
政令市になろうという都市から、天文学に触れる場であるプラネタリウムがなくなってしまうのは非常に惜しい。もちろん上記最後の点から個人的思い入れも強い。だけど、財政の厳しい現状と、補修の可能性が少なからずある昭和38年設置の古いプラネタリウムと建物を見るに(って実際に見たのはもう何年も前だけど)、単純に「惜しい」ってだけで存続の方向でパブリックコメントを送るのは天文関係者としてのエゴでしかないような気がする。
これはたぶん天文学全般にもいえること。現代天文学のほとんどの部分は、暦の算出という面で生活必需品だった天文学とは大きく離れてしまった。一方で、独裁的な君主が贅の限りをつくすその一部として天文学が行われていた時代でもない。ごく一部民間資金を活用したプロジェクトはあっても、ほとんどは民主主義国家の国民から集めた税金でまかなわれているのが現状。教育や福祉やその他諸々の事業のためにお金が必要な中、どうやって天文学にお金を割いてもらえるか? 「天文学は人類を幸せにする、あるいは価値があるから、必要である」と政治家も官僚も含めたみんなが考えて進めていくしかない。
少なくとも僕個人としては「天文学は幸せをもたらす」と思ってる。これは単にそう「信じている」わけではなくて、それなりの数のアウトリーチ/科学コミュニケーション活動を国立天文台観望会や駅前でのゲリラ的観望会や天プラの諸活動でやってきたことがその根拠。講演会やサイエンスカフェでの老若男女問わないキラキラした眼、街角で思いがけず接した土星の環に対する歓喜の声、長期入院を余儀なくされている子供がディスプレイの中に広がる太陽系を見た時の笑顔。あとは天体の誕生と死を扱ったプラネタリウム番組を観終わった後にお客さんが言ってた「いやー、人生観とか世界観変わったわ〜」という一言。これらは僕がそういった活動をする大きなモチベーションとなっているし、天文学の研究をすること自体のモチベーションの一部になっていることも間違いない。
多くの方が指摘されるように科学の良い面を見ているだけではもちろんダメで、科学がもたらす(かもしれない)直接的な不幸だけじゃなくて、科学(天文学)にお金をつぎ込むことで失われる他の可能性にも思いをめぐらせるべき。そしてその失われた可能性を補って余りある価値が科学(天文学)にあるかどうか、あるいはどの程度なら科学や天文学にリソースを割いてもいいかを考えて、それを専門外の人とも議論する必要があるんじゃなかろうか。もちろん価値観とか幸せの基準は人それぞれだから全会一致にはならないだろうけど、少なくともほとんどの人が納得できる材料はあったほうがいい。科学の重要性をエコとか学力低下とか理科離れとか流行りの「あおり文句」に絡ませるのは簡単だけど、そうじゃなくてもっと根本的なところから示してみたい。
というようなことを、プラネタリウムの廃止提案だとか天文台にお金出さないぜみたいな状況が発生してから慌てて考えるんじゃなくて、やっぱり日頃から意識しておかないとね。プラネタリウム業界では渋谷の五島プラネタリウム、池袋のサンシャインプラネタリウムと2度の閉館ショックがあって、長年読んでいた天文雑誌SKY WATCHERの休刊があって、それらも僕の活動のきっかけの一部ではある。
とずっとこういうことを考えていると研究が進まなくて本末転倒なんだけど(だって僕は天文学の成果を示すことでその必要性を訴えたいと思っているから)、頭の片隅にはこの問題を置いておいて、たまにじっくり考えたり議論したりする、というのが良いバランスなんだと思う。
とにかくパブリックコメントを考えてみよう。
投稿者 平松正顕 : 17:47
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2008年9月23日
舞台は世界2
ちょっと調べ物をしてたら、ベネッセが高校の先生向けに出しているっぽい雑誌に掲載された福井さん@名古屋大学のインタビューを発見しました。このブログのプロフィール写真(右上)に使っているASTEのお隣にある、NANTEN2のボス。このNANTEN2が開所式を迎えた日、当時修士2年の僕は観測のためにちょうど現地アタカマにいました。ふもとの村、サンペドロ・デ・アタカマのレストランで開かれた開所記念パーティーで初めて福井さんにお会いしたわけですが、東大の大学院生であると告げたら、「うーん、東大はサイエンスが弱い気がするぞ。」と初対面で強烈な一撃。そのお言葉、当分忘れません。
で、「ベネッセこんなの作ってるんだなぁ」と思ってその号のトップを見てみるとなんと出身高校の記事。「進路指導の基本姿勢」には「世界で活躍できる有為な人材の育成」とかあるらしいです。僕が高校生だったのはもう10年も前なので当時からあったのかどうか知りませんが、やはり舞台は世界ということか。
投稿者 平松正顕 : 22:44
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2008年9月22日
舞台は世界
北米・欧州・東アジアが協力して作る電波天文台ALMA、公式サイト alma.cl に首脳部の人事が載っています。
- ALMA Director: Dr. Thijs de Graauw
- ALMA Project Manager: Dr. Richard Kurz
- ALMA Deputy Project Manager: Dr. 長谷川哲夫
長谷川さんは僕が大学院に入ったころからALMA日本グループのプロジェクト・サイエンティスト、プロジェクト・マネージャーを歴任されるお忙しい方でしたが、観測データの解釈を質問に行くと短くとも鋭い指摘をいただくことができました。昨年度末の送別会の時も、「天文学という分野では日本でトップになっても仕方がない。世界で頑張ってほしい。」と僕を送り出してくださいました。そしてその1ヶ月後には長谷川さんご自身も1000億円規模の国際協力プロジェクトを中央で引っ張る立場になられたわけです。超の字がつくほどの激務だと思います。長谷川さんたちのお仕事に報いることができるように、ALMAができた後の研究をしっかりできるように、僕も頑張っていかなければ。
投稿者 平松正顕 : 23:54
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2008年9月20日
ヒロ-ホノルル-成田-台北
Hilo - Honolulu, HA101, B717-200
Honolulu - Tokyo - Taipei, CI017, A330-300
火曜日にハワイ出張から帰ってきました。帰りの便は成田経由だったので、写真のような transit bording pass をもらって成田で乗り換え。日本に入国することもなく、成田第2ターミナル滞在90分くらいでまた離陸。なんとも残念な気分でしたねー。
出発前日の日曜日には、すばる望遠鏡にお勤めのUさんご一家と一緒に、SMAのヒロ山麓施設のお隣にあるイミロア天文学センターにも1時間半くらいだけ立ち寄ってプラネタリウム番組 "Black Holes: The Other Side of Infinity" を見ました(このサイト、予告編もおいてありますね)。この番組は Denver Museum of Nature & Science が作ったものだそうで、日本のほとんどのプラネの中央に鎮座する恒星投影機を使わない、フルデジタルの番組。天文学的にしっかり監修されたコンピュータシミュレーションで、銀河中心ブラックホールの周囲を回る星たちがでてきたり、ブラックホールに飛び込んでみたり、とても見ごたえのある番組でした。立体視投影ではないのに、カメラワークで立体に感じてしまうような場面もありました。またマウナケア山頂にある望遠鏡の成果も出てきて、ハワイで上映しても身近な印象。日本のプラネタリウムでもどこかこの番組を買って上映するところが出てくるでしょうか。
エンドクレジットにたくさん研究者の名前が出てくるのはアメリカのプラネ番組の特徴ですが、この番組は全米科学財団(NSF)とNASAのガンマ線観測衛星GLASTプロジェクトからの資金援助がなされているようでした。先に打ち上げられたガンマ線観測衛星スイフトも番組内に出てきたので、スイフト本体と後継機の宣伝という意味もあるわけですね。NASAのプロジェクトはその予算の一部を広報に振り分けるように決められていると聞いた記憶があるので、その一環なのでしょう。
この番組のあとには、デジタル投影の星空で夜空の解説。「マウスが思うように動かな〜い」と嘆きながら解説のお姉さんが案内を進めていきます。夏の夜空ということで、いて座とはくちょう座の紹介をし、番組の内容に合わせて銀河中心ブラックホールとはくちょう座X-1(最初に発見されたブラックホール)の位置も教えてくれました。はくちょう座X-1なんてマニアックな、という感じですが、ブラックホールという名前だけは超有名なモノがSFじゃなくて実際に宇宙に存在するんだ、ということを教えてくれるいい展開でした。
投稿者 平松正顕 : 14:00
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2008年9月14日
観測間もなく終了
SMAでの5日間の観測も間もなく終了です。
写真は、望遠レンズでとらえたジェミニ北望遠鏡とレーザー。
月明かりに輝く銀色のドームが美しいです。
投稿者 平松正顕 : 22:37
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2008年9月13日
マウナケアの星月夜
観測3夜目。
月が明るかったのでちょっと外に出て写真を撮ってみました(クリックすると拡大できます)。SMAはマウナケアの山の上でも少し低いところにあります。JCMT、CSOとSMAの電波望遠鏡があるので、このあたりを submillimeter valley と呼びます。少し高い峰に連なる光学望遠鏡の写真を撮るにはとてもよい立地です。
左から、すばる、KECK、IRTF、CFHT、Gemini、UH88、UKIRT、一番右端にUH24。Geminiから空に向かって一筋の光が伸びてるのがわかります。レーザーガイドスターのためのレーザーですね。写真を撮ってるときには目で見ても気づかなかったんですが、写真にはしっかり写っていました。いやはや、自分でもびっくりするくらいきれいに撮れています。
投稿者 平松正顕 : 09:32
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2008年9月12日
観測提案提出完了。
ハワイ時間9月11日午前10時締切だったSMAの観測提案、なんとか提出できました。SMAに観測提案を書くのは初めてだったのですが、やはり初めての場合は観測装置のセッティングをどうすればよいかとか慣れないところで苦労することが多いです。もちろん観測の中身、観測結果から何を読み解くかということをちゃんと考えて、必ずしもその分野の専門家とは限らない審査委員を、ある意味では楽しませて、価値ある研究と認めてもらわなくてはいけません。
SMAでの観測は3夜目になります。昨日の昼間にアンテナの移動があって、一番コンパクトな配列からもう少しアンテナが広がった配列になりました。SMAは8台のパラボラアンテナからなるわけですが、その位置を変えることでズームレンズのような働きを持たせることができます。そして今晩はeSMA testing night。SMAのお隣にある電波望遠鏡JCMTとCSOをSMAと結合させてひとつの電波望遠鏡として機能させます。2つの望遠鏡を合わせることで基線長の拡大(=分解能向上)と集光力拡大(=感度向上)が期待できます。まだ試験段階のようですが、こうして装置をうまく組み合わせていくことで新しい天文学的成果が生まれてくるわけです。
投稿者 平松正顕 : 12:22
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2008年9月11日
観測スタート
昨晩から、SMAでの観測がスタートしました。ひとつ前にも書いたように今回は観測当番としてのお仕事なので、自分の提案した観測ではありません。最近の観測天文学では、観測提案と望遠鏡オペレーションが完全に別の人が担うということも増えてきました。こういうのを「サービス観測」と呼びます。たいていは辺鄙なところにある観測所にわざわざ行かなくていいというのはいいのですが、それでもアタカマとかハワイとか、一度くらいは行ってみたいものですよね。いま建設中のALMAも、サービス観測が予定されているので、ALMAを使って観測してもALMAの望遠鏡そのものは見たことがない、ということも起きるわけです。
写真は、SMAのアンテナとすばる望遠鏡(広角レンズで撮ったのでちょっとすばるがゆがんでますが)。SMAの山頂施設はこの写真を撮ったすぐ後ろにあります。ちょうどすばるを見上げる位置にあるので、日の入りごろになると観光客の皆さんがいらっしゃいます。日本語ガイド付きマウナケア・サンセットツアーもいくつかあるみたいで、日本語が聞こえてくることもしばしば。SMAのオペレーションルームは西向きなので、いつでも美しいサンセットが楽しめます。そのあとは午前3時あたりまでコンピュータのディスプレイとにらめっこが続くので、仕事前のささやかな楽しみではあります。
投稿者 平松正顕 : 08:45
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2008年9月9日
ハワイ到着!
Taipei - Honolulu, CI002, A340-300
Honolulu - Hilo, HA382, B717-200
ついに念願の初ハワイでございます。
台湾の研究所もプロジェクトに参加している電波望遠鏡SMAの運用当番のため、1週間ほどハワイに滞在します。ハワイは初めてですが、チリの標高4800m地点で液体ヘリウム/液体窒素タンクの充填、受信機の調整、発電機の点検などを大学院時代になんとかこなしてきたので、それより600m標高の低いマウナケア山頂でもきっと大丈夫だろうと楽観的に構えています。今回はそんなに肉体労働はないはずですし。それにしても天文学者という職業(の一部)は実はガテン系かも。
右の写真は、ホノルルからハワイ島ヒロに向かう途中の飛行機で撮影したマウナケア山頂。運よく南の窓側座席に座れたのです。標準ズームをつけていてちょっと望遠が足りないかと思いましたが、予想外によく写ってます。右から、すばる、Keck1/2、ちょっと間があいてNASA IRTF、さらに間があいてUKIRTとハワイ大学の望遠鏡。左で二つ重なって見えているドームは手前がCFHT、奥の大きいのがGemini Northかな?SMAはすばる望遠鏡やKeckのある丘をすこし下ったところにあるので、この写真では見えていません。SMAの写真についてはまた今度。
投稿者 平松正顕 : 05:25
| 海外出張日記
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2008年9月5日
望遠鏡なら三菱!?
日経や朝日に、三菱電機の全面広告が載ったようです。pdfではこんな感じ。
チリに建設中の我らがALMAプロジェクト、日本担当分の16台のパラボラアンテナは三菱電機(+たくさんの協力企業)が建造を担当しています。なぜ三菱?という感じですが、昔から衛星通信用の大型アンテナを作っていて、巨大な構造物を精密に制御するノウハウを持っているんだとか。宇宙 by MITSUBISHIのページにもありますが、今も世界最大のミリ波望遠鏡である野辺山45m電波望遠鏡も、すばる望遠鏡も、国内最大口径なゆた望遠鏡@西はりま天文台も三菱製。ちなみに右のプロフィール写真に使っているASTEも三菱製。もはや日本最大の望遠鏡メーカーといってもいいのかもしれません。
投稿者 平松正顕 : 21:08
| hiramatsu log
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2008年9月4日
星の数ほど
9月11日に迫ったSMA(Submillimeter Array)の観測提案締め切りに向けて、論文を読んではいろいろ考える日々(論文読んで考えるというのは締め切り前でもそうでなくてもあまり変わらない日常風景ではありますが)です。NHK『爆笑問題のニッポンの教養』に出演されていたすばる望遠鏡の林台長もおっしゃっていましたが、研究用望遠鏡を使うためには『こんな観測するとこんな成果が得られます。だから観測させてください』という観測提案書(プロポーザル)を書いて、それが審査に合格する必要があります。倍率は望遠鏡によって違いますが、今回僕が観測したいと思っているSMAではだいたい3倍から4倍。年に2回観測提案のチャンスが回ってきますが、その審査に合格しないと半年間はデータが手に入りません。比較的小規模な望遠鏡なら大学が所有していてある程度自由に使える場合もありますが、大きな観測装置になると世界中から届く観測提案に負けない魅力的なモノを出さなくてはいけなくて、大変です。
で、これまでに書かれた研究論文を参考にしながら観測対象を選んで、今回の観測ではどんなことを解明しようとしているのか、望遠鏡やカメラはどのようなセッティングにするのか、そのセッティングで観測対象はきちんと見えるか(観測対象が暗すぎないか)などということを考えながら観測提案を書きすすめていくわけですが、なんと台北にいる研究者さんと同じ天体を同じようなセッティングで観測しようとしていることがわかりました。これは大変。あちらはSMAでの観測経験も豊富だし、過去の観測から論文も発表しているし、新参者の僕としては真っ向勝負で勝つ(=観測提案を受理してもらう)のは相当大変。というわけで、急きょ天体を変えることにしました。観測候補の一つとして考えてあった天体が別にあったので、そちらで対応しようとしています。
「星の数ほど星はあるのに観測天体が重複するのか?」と不思議に思われるかもしれませんが、重複するんですねそれが。僕が観測しようとしているのは、誕生してからせいぜい10万年しかたっていない非常に若い星です。太陽の寿命はおよそ100億年なので、その10万分の1の年齢。これを人間に直してみると、寿命を100歳としてその10万分の1は1/1000年、つまり生まれてから9時間しか経過していない本当の赤ちゃんです。人間で考えても、そんな生まれたばかりの赤ちゃんの割合は大変少ないですね。同じように生まれて10万歳の赤ちゃん星も数少ないわけです。そんな赤ちゃん星のなかでも、特に若そうな天体、あるいは最近になって発見された天体は世界中の星形成を専門にする天文学者が注目しています。そうなると、観測提案が重なってしまうわけです。
今回は観測の件でメールを交換したおかげで重複が判明したわけですが、これが全然知らない人の場合には気づかなかったでしょう。特に、似た性能の違う望遠鏡に観測提案が出される場合には、それぞれ独立に同じ天体を観測することになります。実際、僕が2007年に出した論文でも、僕が論文を投稿した1週間後に、ヨーロッパ陣営の望遠鏡を使った同じ天体の論文が発表されるということがありました。あれはさすがにショックでしたが、多少論文での議論の方向が違ったので、あとから出した僕の論文も何とか受理してもらえました。「何か思いついたら世界で3人くらいは同じことを思いついた人がいるものだ」ということを聞いたことがありますが、まさにそんな感じで進んでいくのが研究ってもんでしょうか。
投稿者 平松正顕 : 23:04
| 研究生活@台湾
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2008年9月2日
宇宙の深さ
Technobahnがまたものすごい記事を掲載していたので、いろいろ突っ込みを入れつつ世に出てくる天体写真とは何かを解説するエントリを書こうかと思っていたのですが、あっさり削除されてしまった様子。どこからか指摘があったのでしょう。Technobahnは過去にもかに星雲と"SN1006"という別の星雲を混同していたりして、ライターさんも天文に興味はあるっぽいのに調査がいまひとつ、というなんとも残念な感じになってしまってます。ぜひもっと頑張っていただきたい。
星が好きな人のための新着情報というそのものズバリな名前のサイトも僕はよく見ています。こちらはその名のとおりいろんな新着情報へのリンクがたくさん掲載されてて、研究とは関係なく天文趣味的に楽しめます。
数日前そこに見つけた気になる情報。V1647 Ori(McNeil's nebula)の増光。ご存じない方にはなんのこっちゃ?なタイトルかもしれませんが、要するにとある星雲が急に明るくなった、ということです。この星雲は2004年の初頭に明るくなっているのがアメリカのアマチュア天文家であるマクネイルさんによってとらえられ、通称として発見者の名前で呼ばれています。星座としてはオリオン座のなか、ウルトラマンの故郷として有名なM78星雲(ウルトラマンの故郷はM78じゃなくてM87だという話もありますが、その辺はWikipediaで。。)の近くに出現したので、スペシウム光線!と一部で話題になったりしました。最近暗くなっていたようなのですが、また明るくなってきたようです。
宇宙は不変だと考えられてきた期間も長く、たしかに一般的には天文学的時間スケールは人間の時間スケールと大きく違います。僕が研究している星の誕生だって百万年スケールだし、銀河の進化を研究している人たちの研究対象のタイムスケールは1億年かそれ以上に及ぶでしょう。人間やってる以上その過程を全部見るのは到底無理なので、たくさんの天体を観測したりコンピュータシミュレーションを駆使したりして仮想的に時間軸上を移動してそれらの天体の進化を調べるわけです。一方で、人間にフレンドリーなタイムスケールでの天体現象もたくさんあることが分かってきています。太陽黒点や星の明るさの周期的変動などは結構古くから観測されてきましたが、エックス線やガンマ線や電波などを天文観測に使えるようになり、また大望遠鏡や宇宙望遠鏡が活躍するようになり、人間が知る宇宙の姿は極めてダイナミックなものへと変わってきました。マクネイル星雲の増光は、そんな宇宙の変化が比較的わかりやすい(見やすい)形で現われたものといえますね。夜空の星座から季節の移り変わりを知ることもなかなか趣深いことですが、その星の間の真っ暗な部分で実はいろんなことが起きていると想像すると、夜空もまた違った味わいがありますね。
投稿者 平松正顕 : 22:55
| hiramatsu log
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