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2008年5月22日

研究者になるには

募集:天文学者
辺鄙な山の頂上での深夜に及ぶ仕事あり。
冒険的で遊牧民のような生活が送れます。
不安定な生活が長期にわたる割に給料は
平均レベルですが、勤務時間規定、服装
規定なしだから大丈夫。
有能な方には、真の科学的発見に遭遇する機会が与えられます。
今すぐご応募ください。


こんな書き出しの文章(英語pdf)が、天文学の論文(正しくは、正規の論文になる一歩前の段階:プレプリント)が掲載されるサイト astro-ph に投稿されていました。著者はオーストラリアの天文学者、太平洋天文学会 (ASP)の機関紙 Mercury に掲載される予定の文章のようです。この書き出し、確かにその通りの一面もあって、笑えるような笑えないような・・・。

観望会でスタッフをしていたり講演会をやったりすると必ずと言っていいほど「天文学者になるにはどうしたらいいですか?」という質問を受けます。何かの調査でも『小学生が将来就きたい職業』で『研究者・博士』が上位に来るそうです。(ランクインしている中で唯一、博士だけが「食えない(職業じゃない)」のも興味深いところ。) なかなか難しいのですが、この Mercury 掲載予定の文章をベースにすこしご紹介。まぁ僕もまだ道半ばですが。

まず最初は大学院で博士号を取ること。天文学の名のつく学科/専攻はそう多くないですが、物理学科/物理学専攻の中で天文学をやってる研究室に行くってのもアリです。詳しくは、愛知教育大学の「宇宙を学べる大学・天文学者のいる大学」をどうぞ。このMercuryの文章では、環境を変えて視野と人脈を広げるという意味で学部と大学院で大学を変えることがお勧めされています。僕の場合は、卒業してからこれを実現するべく海外に来たわけです。まあほかにも理由はいくつかありますが。指導教官をちゃんと選べとか、年に1本は論文書けとか、いっぱい観測するだけして結果をちゃんとまとめないのはダメだとか、いろいろ具体的なアドバイスがあります。いくつか胸に突き刺さる指摘が無きにしも非ず。

無事に博士号を取得したら、任期が限定されたポスドク研究員になるのが一般的。中国語では直訳して博士後研究員と呼ぶようです。Mercury の文章によると、天文学の分野では世界中で1年に(わずかに)200のポスドクポジションの募集が国際的に行われます。国内限定の職はカウントされていないので、実際はもう少し多いでしょう。博士号を取ってそのあとも天文学を続けていきたい学生の数とポスドクポジションの数の比較をすると、Mercuryの文章によると、だいたい同じくらい、だそうです。僕の周りを見渡してもまあそんなもんかな、という感じです。いろんなところに応募して落選しながらどこかに引っかかることも多いので、ポスドクになるのも簡単ではないですが、全体として極端にアンバランスにはなっていないように思います。もちろん分野にもよります。理論天文学は大変らしいです。

で、このポスドク期間中に思いっきり研究することが求められます。Mercuryの文章によると、イギリスの平均的な天文学者は年に4.4本の論文を書くとのこと。筆頭著者として4.4本なんでしょうか。それって結構すごい量な気がします。前述のastro-phに掲載される論文の数は年々増え、2007年に年間1万本を超えたそうです。大学院に入って astro-ph を初めてチェックした時に、「毎日こんなに論文が出てるのか!」と驚嘆したわけですが、その時に比べるとさらに2割増しです。もちろん天文学の中の分野によって数の大小はあります。流行りの分野はやはり多くなるでしょうし。

ポスドク期間中にしっかりした研究成果を作り上げて、常勤研究者(助教とか准教授とか教授とか)の公募に応募するわけですが、『40歳になるまでにそういう職に就けるのは大学院同期卒業者のうち20%』というレポートがイギリスの王立天文学会から出ているそうです。日本でもそんなに状況は変わらないでしょうね。いやはや、厳しい世界が待っています。『それでも研究者を目指しますか?』 という問いに、きちんと答えなければなりません。

Mercuryの文章は、NikeのCMにひっかけて
『Research it. Publish it. Talk about it. これを年に複数回繰り返せ』
で締められています。いやー、がんばらねば。

こういう研究者キャリアパスの本当の姿を見ることができる機会というのは限られているように思います。気軽なサイエンスを広めることも重要ですがそれと同時に、真の姿を知る場(あるいは文章)ももっとあっていいかもしれません。必要以上に夢を打ち砕かないように工夫が必要かもしれませんが。以前研究者人生ゲームのことを書きましたがそういうのでもいいし、あるいはサイエンスカフェでもいいし。最近はこういうことを書いた本も増えてきているのでしょうかね?

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投稿者 平松正顕 : 00:42 | hiramatsu log

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コメント

いろいろ胸に突き刺さりますね。
がんばらねば...

投稿者 ゆん : 2008年5月22日 01:30

今日は〜^^またブログ覗かせていただきました。よろしくお願いします。

投稿者 グッチ アウトレット 通販 : 2012年11月10日 05:43

匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_^;)ありがとう。。。

投稿者 グッチ 時計 レディース : 2012年11月10日 12:52

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