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2007年8月24日

Google Earth → Universe !?

いろんなところでもニュースになっているように、Google Earth がバージョンアップして"SKY"という機能が加わり、天体情報も表示できるようになったとのことなので、早速ダウンロードしてちょっと見てみました。

いやー、これはなかなか面白いです。ブログに貼ったのは、Google Earth で見た銀河中心方向、夏の天の川周辺です。いろいろな天体が最初から登録されているので、すぐに色々な天体にズームインしていくことが可能です。全天の写真は、DSS (Digitized Sky Survey)が元になっているようです。アメリカのパロマー山天文台とオーストラリアのUKシュミット望遠鏡で撮影された、南北両半球からみた全天写真(をデジタルスキャンしたもの)です。個人がこうやってすぐにDSSの画像を机上で見られるようになるなんて、これを撮影したご本人たちは夢にも思わなかったのではないでしょうか。

様々な「ぼやっとした」天体のカタログであるNGCに登録されている天体もプロットされています。青い点で表現されていますが、ざっとみるとこの青い点がひとつの筋になっていることがわかります。天の川ですね。NGC天体にはいろいろな種類の天体が含まれますが、銀河系内にある、星が生まれている場所も多く含まれます。生まれたての明るい星が、周囲のガスや塵を照らして光らせるために星雲となって見えるのです。銀河系を中から見たのが天の川ですから、これら星の生まれるところが銀河の中に散らばっているということは即ち、地球から見ると天の川にそって分布している、ということです。NGC天体には私たちの居る銀河とは別の銀河も含まれているので、これは天の川とは関係なく全天に分布します。でも、集まっているところもあります。かみのけ座とかおとめ座のあたりをズームアップしてくと見えてきます。名前もそのまま「銀河団」という、銀河の集団です。宇宙の中には銀河の集団がたくさんあるわけです。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像もところどころに挿入されています。これをみると、いかに望遠鏡というものが空の一部分を強拡大して見せているか、というのがよくわかります。あと、どこに天文学的に面白い天体が分布しているか。もちろんGoogleEarth上に載っているのは選ばれた一部の画像であるので、もっともっと全天に面白い天体があるわけですが、それにしても 銀河中心、オリオン大星雲、おとめ座〜かみのけ座の銀河団、かじき座周辺の大マゼラン雲などはハッブルマークの集中がよく目立ちます。

とまぁ、これだけあれば小一時間の天文講座はすぐにできちゃうでしょう。ネット回線さえあれば。そしてもっと時間があれば、いろんな天体位置を登録して世界中に配ることもできると思うのです、これまでのGoogleEarthでいろんな地点を登録できるように。こういうことってニュースになっているうちにすばやくやってしまうことも結構重要なんだと思いますが、だれか『すばる望遠鏡撮影プレスリリース画像一覧』とか『生まれたての星一覧』とかやりませんかね。アンテナを張っておいて、敏感に反応して即座に対応する、という能力は科学コミュニケーションをやっていく上でも重要だと思います。博士課程最終学年の忙しい時期じゃなきゃやるんですけど、さすがにいまはちょっと・・・。

気になったこととしては、ところどころにGoogle"Earth"に登録されている地球上の地点名がでてしまっていることと、天の南極北極のあたりの天体写真の解像度が極めて悪いことでしょうか。とくに後者のせいで、北極星は見えません。これはちょっと残念です。

天文学の研究者が使うSkyviewというNASAが管理するウェブサイトがありますが、ここでは指定した領域の指定した波長での宇宙の画像を見ることができます。主には天文学者用なので、領域の指定は数字(座標)で行うわけですが、これをもっとグラフィカルなインターフェースに変えれば、Google Earth にも統合できるんじゃないでしょうか。拡張版として、ぜひ全天赤外線図とか全天電波図とか全天エックス線図なんかも見てみたいところです。赤外線の「宇宙地図」としては、欧米のIRAS衛星による観測成果があり、日本の衛星「あかり」もIRASの数倍良い解像度の宇宙地図を今まさに撮影している途中です。波長によって全然見え方の違う宇宙の姿が、クリックひとつで見られるようになると面白そうです。人間の目が見ることのできる世界がいかに狭い範囲のものか、というのも直感的に感じられます。

もっと拡張して、ひょっとしてグーグルは Google Universe を作りたいのではないでしょうか。Universe は宇宙という意味ですが、もっと適切には『森羅万象』とでもいいましょうか。昨年の文部科学省『一家に一枚』ポスターであるゲノムマップを取り込めば、Google Gene とかできそうです。様々な図鑑を取り込んで、 生息域にあわせてGoogle Animals とか Google Fish とか。ありとあらゆる情報をコンピュータ上で。ものすごい世の中になりそうです。


そういえば、一年前の8月24日はプラハで開催された国際天文学連合の総会で惑星の定義が決まった日でした。あのニュースで普段天文に興味のない多くの方も「そこにある宇宙」を認識したことと思われます。多くの方にとっては記憶の彼方でしょうが、どれくらいの人の頭の中に「宇宙」が残っているでしょうか。今回のGoogleEarthのニュースで、また少し宇宙のことをぼんやりとでも考えて楽しむ方が増えたら嬉しいなと思います。

投稿者 平松正顕 : 00:28 | hiramatsu log

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天体写真撮影サークル : 2009年1月25日 16:28

コメント

そういえば、ご存じかと思いますが「あかり」の宇宙地図作りは終わってしまいました。この記事が書かれたちょっと後ですね。なんとなく寂しい今日この頃。
あ、でも、「人間」の宇宙地図作りのはこれからですね・・・たいへんだ・・・

投稿者 inami : 2007年9月5日 11:14

「あかり」のデータはそろったけれど、今後詳細な画像処理を膨大な量やらなくてはいけなくて大変、という話は漏れ聞いております。IRASもいろんな解析が行われていたし、観測は終わっても研究はまだまだこれからですね。

投稿者 平松正顕 : 2007年9月12日 16:11

レスありがとう。詳細はこれですd(´∀`*)グッ♂ ttp://m-s.e29.mobi/

投稿者 俺だ : 2012年1月29日 03:32

こんにちは、またブログ覗かせていただきました。また、遊びに来ま〜す。よろしくお願いします

投稿者 グッチ 通販 : 2012年11月10日 07:58

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