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2008年8月8日

ワークショップ終了

ヘルシンキ大学天文台での3日間のワークショップが終了しました。日本(+台湾)から4人、ヘルシンキ側からは教授から大学院生まで含めて10人ほど、各自の最新+昔からの研究結果を持ち寄って発表・議論する形式でしたが、非常に中身の濃い3日間でした。フィンランドは2004年にESOに加入し、ヨーロッパがひとまとまりとなって進める様々なプロジェクトに参加しているので、人数はそれほど多くなくても幅広い観測をやっています。共通の興味・共通の問題意識を抱えて研究を進めているので、とても有意義な議論ができました。

カメレオン座分子雲は南半球からしか観測できないので世界的に見ても観測者は少ないのですが、その領域の結果も今回たくさん見せてもらいました。僕が2007年に発表した論文の結果を支持する結果がでていると聞いた時はほっとするとともに嬉しく思いましたね。研究というのは白黒つけられる結果がはっきり出る場合はきっと少なくて、いろんな状況証拠を集めて「こうじゃないかなぁ」と議論していくことが多いだろうと思います。特に観測天文学の場合は、限られた時間の中での観測の結果で決定的な証拠をつかむのは難しいので、どうしても100%胸を張って言える、というほどの結論にならない場合もあるわけです。もちろんそれなりの根拠があってある結論に達するのですが、それでも「これでいいのかな?」と恐る恐る論文を書いていたりもします。そういうところに、まったく別の観測からそれを支持する(少なくとも否定はしない)結果が得られているというのを聞くのは大変心強いことです。この天体の追加観測のために、共同で某所の望遠鏡に観測提案を書こうということにもなりましたし、「国際協力の研究はこうやって進めていくんだなぁ」と今更ながらに実感する良い機会となりました。北欧のすばらしい街も堪能したことだし、暑い台湾に戻ってもがんばらなくては。

投稿者 平松正顕 : 00:29 | 海外出張日記

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コメント

平松先生、今日は。
ヘルシンキは涼しそうで良いですね。

宇宙図のことでお尋ねしたいんですが・・・
2003年のNASAの発表以来、宇宙の年齢は137億歳と認識されました。でも、宇宙図には、470億光年の広がりがありますね。
空間が広がったとありますが、光速以上で広がったんでしょうか。

投稿者 sopuranovoce : 2008年8月10日 13:33

先ほどメールの調子が悪く、長すぎるのではとあちこち省略しました。質問ばかりで失礼しました。
今度は大丈夫みたいです・・・

先日は、お忙しい中お返事いただきましてありがとうございました。
宇宙図の制作に平松先生が関わっておられたことは、知っていましたので、尊敬する方とお話できるのはとても嬉しいです。

宇宙図を最初に見たとき、宇宙の年齢は137億歳なのになぜ470億光年の広がりがあるんだろうと不思議に思っていました。空間が広がったと言うことだけでは、良く分かりません。
もしよろしかったら、分かりやすい内容で教えていただければありがたいと思います。
・・・お忙しいときは、かまいませんので。

フィンランドは、詰め込みをしない素晴らしい教育方法で、世界で注目されていますね。フィンランドの天文学者はいかがでしたか?

暑い韓国に戻られるので、お身体に気をつけてお過ごしください。
                  

投稿者 sopuranovoce : 2008年8月10日 14:55

sopuranovoceさん、コメントありがとうございます。

ご質問の宇宙年齢137億年と宇宙の広がり470億光年の関係ですが、たぶんこの宇宙図でもっともよく出てくる質問じゃないかと思います。私たちも宇宙図作ってはじめて認識した点でもあるので、それも無理はないかな、と思います。

結論から言うと、宇宙年齢と宇宙の広がりには直接の関係がない、ということです。宇宙が広がる速さが光速を超えていても、何の問題もないからです。事実、宇宙の膨張は地球中心で考えると光速を超えているように見えるはずです。

宇宙図の470億光年というのは、今私たちが観測できる最古の宇宙の姿が、現在どこまで広がっているか、というものを示したものです。つまり、この470億光年の広がりを実際に観測することはできません。また、宇宙最初期の大膨張(インフレーション)によって宇宙が急激に引き延ばされたため、私たちが観測できる範囲から飛び出してしまって見えなくなっている部分も存在すると理論的には予測されます。この部分の広がりは宇宙図には描かれていませんので、これを入れると宇宙の現在の広がりは470億光年を大きく超える値になると思います。残念ながら僕はそれがどれくらいになるのか計算することができませんが。。

こんなところで少しでも理解が進みますでしょうか?僕も完全に理解しているとは言い難く、間違っている可能性もなくはないのですが、今のところこれが僕が持っている答えです。まだ腑に落ちないところがありましたらご指摘ください。

投稿者 平松正顕 : 2008年8月11日 22:24

平松先生

お忙しい所、丁寧にお答えいただきましてありがとうございます。

少し分かったような気がします。
私は宇宙年齢が137億歳と分かってきたので、宇宙は137億年分だけ膨張した丸い球のようなものだと思っていました。
先生のお話から、だいたいの所を想像することができました。
宇宙開闢から137億年経って、広がりが470億光年分あると(ようやく)考えることができます。

初期のインフレーションやその後の広がる力、そしてそれが一定ではなく最近また広がるスピードを加速してきているんですね。もしかすると局所的な加速もあり得るんでしょうか。

また、仰るように、インフレーションにより観測できる範囲から飛び出してしまった部分も入れると、いったいどれくらい大きなものなんでしょう?
新しいことが分かれば分かるほど不思議な世界ですね。

私は、WMAPの観測結果やNASAの発表を見て、宇宙開闢やインフレーションを経て拡大してきた宇宙、素粒子から物質への変化や宇宙の構成成分などにとても興味を持っています。
まだ解明されていないことがたくさんある中で、先生方の観測や研究によって、次第に宇宙の姿が明らかになってきていることは素晴らしいと思います。
現代に生まれて良かったです。

投稿者 sopuranovoce : 2008年8月12日 11:17

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