2005年10月11日

サイエンスカフェ札幌

天文学会で札幌に行ってきましたが、そこでサイエンスカフェを行いました。
このイベントは、北海道大学に新しくできた『科学技術コミュニケーター養成ユニット (CoSTEP)』が主催するもので、今回(10/8)が初回、今後毎月一回、札幌駅となりの紀伊國屋書店札幌本店の1階で行われるものです。初回は、札幌での天文学会開催期間中ということもあってテーマは「宇宙の香りのコーヒータイム」となりました。天プラは「共催」という形で色々とお手伝いをしました。

遠隔地、それも書店での開催、さらに初回、という未体験要素たっぷりのカフェということもあって、準備は結構大変でした。会場レイアウトは?、イベントの組み立ては?、来場者はどれくらい?、サイエンスカフェの主題である『来場者との密接なコミュニケーション』はどこまで可能? CoSTEP の皆さんと天プラ側でメールや電話会議を重ねてなんとかイメージを作り上げていきました。

通りすがりの、天文にも興味のない方にも目を向けてもらおうと、色々と趣向も凝らしました。プロジェクターを持ち込んで天井に天体写真を投影したり、会場横では天体写真を展示したり、国立天文台4D2Uプロジェクトによるシミュレーション画像や シミュレーションソフト Mitaka のデモ、さらには最近話題の家庭用プラネタリウム HOMESTAR に簡易スクリーンを取り付けて設置してみたりもしました。さらに"サイエンスカフェ"らしくなるように、45分ほどの渡部潤一さん(国立天文台)の講演のあとにはたっぷりと質問の時間を取り、そのあとは最前線で研究を行っている大学院生の短いトークとフリーディスカッションを繰り返す、という構成にしました。

ばたばたと準備を終え、ふたを開けてみると、、講演者が見えなくなるくらいのたくさんのお客さんに来ていただきました。準備中から「何時になれば座れますか?」と声をかけてくださった方は最前列を狙う勢いで、40ほど用意した椅子も早々に埋まってしまいました。北海道新聞と朝日新聞にも記事が掲載されていたのが効いたのでしょう。

実を言うと、人はそんなに集まらないんじゃないか、講演を聴いてもそんなに質問は出ないんじゃないか、議論もあまり盛り上がらないんじゃないか、とかなり控えめな心配をしていたのですが、実際はまったく反対でした。質問もたくさん出るし、お客さんと大学院生との会話も盛り上がりました。僕も天体写真を2枚持って会場に飛び込み、10人くらいのお客さんのお相手をしましたが、最初に僕から仕掛けた簡単なクイズをきっかけにして、たくさんの質問が飛んできました。ひとしきり質問が出終わると定番の『ブラックホール』『ビッグバン』に関する質問も。人が多すぎて講演が聞こえなかったり、自分の質問をぶつけて大学院生と話せなかったりした方もいらっしゃるかもしれませんが、たくさんの人が普段あまり話す機会がないであろう大学院生と天文学の話をすることができた、という点で、初回のイベントとしては成功だったと思います。

今回のイベントは、腰を落ち着けてじっくりと科学の話題について議論する本家イギリススタイルの「サイエンスカフェ」とは別のものでしょう。参加者各人の中にある程度の知識と意見がある遺伝子組み換えや環境問題などと比べて、天文学はそういう『議論』になりにくいこと。そして会場が書店入り口1階という必ずしも落ち着ける場所ではなかったこと。さらに予想以上にたくさんのお客さんがいらっしゃったこと。この3点が今回のイベントを『別のもの』にしてしまった要因だと思います。しかし『新しい形の、あるいは別形態のサイエンスカフェ』として、とてもよい実験だったと感じています。今後天プラとしてもいろいろなところでサイエンスカフェをやっていきたいと思っています。興味のある方、いかがですか?

投稿者 平松正顕 : 20:38 | hiramatsu log

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週が明けて大学に来ると、急に紅葉が進んでいた。 冬に追い立てられるように秋が深まっていく。 3連休だったので、サイエンス・カフェの翌日日曜日もCoSTEPは 授業が行われた。 週明け第一日目の今日は、午前中、サイエンス・カフェの反省会。 会場で集めたアンケートのコメントや、各持ち場の視点からの 反省を書き出し、次回以降に生かしていく。 今回のサイエンス・カフェで一番苦情が多かったのは音響についてだった。 あまりに多くの人が訪れたので、話が聞こえにくかったようだ。 延べ何人の人が訪れたのか、主催者と ...

莉頑律繧CoSTEP : 2005年10月12日 21:26

コメント

いろいろお世話になりました。
前半と後半で2度おいしい、楽しいイベントになったと思います。サイエンス・カフェの数だけ、スタイルがあればいいと思います。
サイエンス・カフェかくあるべしなんて、野暮なことは考えたくありません。
その時々の「話題」、参加する「人」、物理的な「場所」その組み合わせが思いもよらない、コミュニケーションの場を作り出すことが、人が集まって話をする楽しみですよね。
あの場所で、あの時、天プラのみなさんと宇宙に思いをはせたこと、参加した多くの人にとって、最高に有意義な時間であったと、回収したアンケートから伝わってきました。

投稿者 Namba : 2005年10月12日 21:34

サイエンスカフェお疲れ様でした。あのような新しい試みをお手伝いできて大変勉強になりました。ありがとうございました。

私も確固とした「サイエンスカフェ像」を持っているわけではありませんので、いろんなところでいろんな形で行われていけばいいと考えています。今回はこちらの勝手な予想を大きく上回る来場者数だったので、ちょっと面食らってしまったというのが正直なところです。

次回以降のカフェのご報告も楽しみにしています。CoSTEPのラジオやブログでも、メディアミックスな科学コミュニケーションをぜひ開拓していってください。

投稿者 平松正顕 : 2005年10月20日 22:24

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