< 2009年7月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >

2009年7月4日

懐かしの地球照

読売新聞の宇宙コーナーに、地球照から探る太陽系外惑星の話が掲載されていました。記事にもありますが、地球照というのは三日月の暗い部分がぼんやり光って見えることを指し、地球で反射された太陽光が月を照らしているのでこの名があります。なので、地球照の光を詳しく分析すると地球の表面の情報が得られるわけです。地球の表面なら人工衛星使えばわかるのですが、地球照観測のキモはこの方法を応用して太陽系外惑星の表面の情報を得られないか、ということなのです。例えば地球上の植物は可視光線よりも赤外線を強く反射するので、系外惑星においてこの反射率の違いを観測できれば、その惑星には地球型植物が存在する可能性があると言えるかもしれないわけです。詳しくは読売の記事をご覧くださいませ。実際、5年くらい前には僕も当時理研にいらっしゃった研究員さんのお手伝いとして、三鷹でこの地球照の観測をしていました。その研究員さんが作った当時のプレゼンファイルはこちら。そして読売のページの写真3枚目、2人写っているうち望遠鏡に近い方が僕です。まだコンタクトレンズをしている頃ですねぇ、懐かしい。この写真、望遠鏡をのぞいてるんじゃなくて望遠鏡の向いている方向を月に合わせようとしてます。望遠鏡の上に載ってる分光装置とカメラで撮影をします。

明るく光る三日月のすぐ隣にある暗い地球照を観測する、しかも空気の住んでいない東京で、ということで、なかなか思うような観測結果は得られませんでした。だんだんと自分の研究も忙しくなってきて2004年あたりまでしか地球照の観測は続けられず、そのあとしばらく離れていたのですが、今回の読売新聞の記事をきっかけに三鷹周辺で活躍中のさかさパンダさんからお問い合わせをいただいて、ちょっと最近の研究動向なんかを調べてみました。

2003,4年くらいにはいくつか観測結果の論文も出ていたのですが、それ以降はほとんどこの地球照観測の論文は出ていないようでした。フランスで開催されたウインタースクールのテキストが、現状での良いまとめになっているようです。

新しい観測論文はないものの、シミュレーションや理論的な研究は進んでいるようです。面白いなと思った点もいくつかあって、ひとつは、太陽(に相当する星)の温度が低ければ、植物の反射光はより波長の長い赤外線で強くなるだろう、というもの。温度が低ければそれだけ中心星からの光も全体として長い波長にシフトするので、そのまわりの惑星にある植物もより長い波長までムダなく吸収するのではないか、と。太陽の場合、波長700〜800nmくらいより長い波長は反射しますが、この境目が例えば1000nm以上になるというわけです。言われてみれば確かに当然のような気がしますね。反射率の違いから植物の証拠を探す時には、中心星の温度も考慮して観測波長を考える必要があるようです。

また、地球のような惑星の自転を検出する手段として、雲の反射光を上手く利用することができるだろうとも言われています。もちろん雲はできたり消えたり動いたりするわけですが、おおざっぱには雲の分布は暖流とか大陸の構造の分布とかに依存するので、あまり細かいところまで気にしなくていいと。実際地球照の光に含まれているはずの植物からの赤外線反射光を検出しようとすると、この雲はとても邪魔(衛星写真を見ると、植物のあるところは湿潤なので雲がある!)なのですが、逆に言うとその雲はある程度局在してるということですね。

あるいは、夕方海にいくと水面に反射した太陽光がまぶしく目に入ってきますが、これと同じように浅い角度で太陽光が当たると反射光が強くなります。太陽と月と地球がちょうどいい位置関係にあるとき、この反射光が月に当たって地球照もわずかに明るくなるでしょうね。系外惑星と中心星がそのような位置関係にあるときに惑星からの反射光が強く観測されるなんてことがあれば、その系外惑星にはとても滑らかな表面、つまり水面があることになるだろう、ということになります。海(水)の存在は地球型生命にとってとても重要ですから、間接的に生命存在の可能性を示すこともできそうです。

さかさパンダさんに皆既日食中の地球照はどうなるのだろう?というご指摘もいただきました。7月22日の皆既日食まで一カ月を切り、とてもタイムリーな話です。皆既日食中、太陽と月と地球が一直線に並ぶ位置関係を考えると皆既帯周辺の部分は月の陰になっているので、その部分から反射されて月に届く光は弱くなるでしょうね。月の影以外の部分も角度的にあまり強い反射光は月まで届きそうにない。となると、普段の地球照よりは暗いのでしょうか。

地球照の観測をしていた5年ほど前に比べて、発見された太陽系外惑星の数は3倍(100個→300個)になりましたし、地球の1.9倍という比較的小さな惑星も発見されています。地球照の観測方法を太陽系外惑星に応用できる機会も、案外早く訪れるかもしれません。

投稿者 平松正顕 : 23:19 | hiramatsu log

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.tenpla.net/cgi/hlog/tt-cgi/tt_tb.cgi/272

コメント

今日は よろしくお願いしますね^^すごいですね^^

投稿者 グッチ バッグ メンズ : 2012年11月10日 07:37

コメントしてください




保存しますか? はいいいえ